「宝島事件」の顛末

▲オカシナ記述に付箋だらけになった同書

 1989年10月『朝日新聞』朝刊の広告に、とてもショッキングな写真が掲載されたんです(私の母はこの広告を見て倒れました)。私たちの『ライトハウス英和辞典』(研究社)の表紙と中身がズタズタに破られたものでした。宝島社『欠陥英和辞典の研究』という本の広告でした。私たちの辞典の内容を「日本でいちばん売れている辞書はダメ辞書だ!」「欠陥だらけのダメ辞書」とこきおろし、「恥も外聞もないマヌケ集団」と罵倒し、沢山のマスコミがこれに便乗して、面白おかしく報道しました。いわゆる「宝島事件」と呼ばれるものです。研究社は、著者の副島隆彦(当時、代々木ゼミナール講師)氏と宝島社を名誉毀損で告訴しました。英語教育界が大揺れし、一大論争の末に、1996年2月28日東京地方裁判所は、宝島社に賠償支払いを命じたのでした。宝島側は控訴しましたが、東京高等裁判所は、宝島社の控訴を全面棄却し、損害賠償を命じる一審より厳しい判決が下されました。その判決文です。

 「学術上の論争と言えども相当の節度及び公正さが要求されることは論を待たない。(中略)特に辞書においては本両辞典(ライトハウス英和と英和中辞典の2冊を指す)を含めて、通常の場合相当の業績を有する学者が編者となり、多数の執筆者及び校閲者が関与し、何万語の見出し語とそれに対する語義、用法指示、例文など、他の辞書や文献等を参照しながら選別記述した学術的労作である。このような対象を批判するにあたってはその表現方法や表現内容についてもそれなりの節度を要求してしかるべきである。以上のような諸事情を総合考慮すると、編集方針など批判する右部分における本主張の記載は、権威の批判の挑戦として許される過激さ、誇張の域をはるかに超え、前提として指摘する事実の一部に真実であると認められるものはあっても、全体として公正な論評としての域を逸脱するものであると言わざるを得ない。」

事件に便乗して、面白おかしくデタラメ記事を捏造した新聞・週刊誌などは、この裁判結果を伝えることはありませんでした。マスコミというものの姿勢が見えてきますね。裁判結果をご存じない先生方も多くいらっしゃいます。ある先生からご質問を受けましたので、ここに記しておきます。事の顛末はこういうことです。今その副島氏は‥? 

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