営業の極意

 私のいる部屋には、たくさんの出版社、模試会社、印刷関係の営業の方がお見えになります。新しい商品の宣伝を、本社から指示されたマニュアル通りにいくら事細かくやっても、なかなか採用はしてもらえません。若い営業の方たちに口を酸っぱくして言っていることは、商品の採用をしてもらいたければ、(良質の喜ばれる教材を作った上で)まず先生と人間関係を築くことですよ、と。そのためにはどうしたらよいか?先生方の欲しい情報を届けてあげることです。教員の世界はなかなか閉鎖的なところがあって、他県の先生や学校で行われていることは知らないことが多いんです。私のところには、「〇〇高校でこんなすごい取り組みをやっておられますよ」「〇〇先生というすごい先生がおられますよ」「〇〇の学校でこんな資料を作っておられますよ」「今日は〇〇県のこんな実践報告をお持ちしました」といった、学校にいては日頃知ることのできない情報が、たくさん届けられます。こういう情報をIMG_1523持ってきてくださる営業の方は、心待ちにするようになるんです。もちろん、私も手持ちの情報を提供します。こうやって親しくなっていくと、不思議なことに、自動的に採用も増えていくんですよ。まずは「人間関係を築くこと」これが重要です。そのためにはどんな情報を届けると喜ばれるか、これをしっかり考えて足で稼ぐことです。某出版社島根県担当のAさんは、ラーメン好きな八幡のために、広島の名店の地図(「つばめ」「すずめ」)まで描いて持ってきてくださいましたよ(笑)。これをたらいの法則」と呼びます。

 おまえ、ここに水が入った盥(たらい)があるだろう。両手でその水を自分の方へ左右から送ってごらん。水は初め、自分のところに集まるけれど、すぐに自分の手元から離れていく。反対に、水を左右に送ってみなさい。水はおのずと自分の方へ集まってくるだろう。自分の幸せばかり考えているとな、その人の幸せはどこかへ行ってしまうのだよ。だから人が喜ぶようなことを、無理せず、少しずつ積み重ねていくことがとても大切なんだな。これを「損して得取れ」と言います。

 たらいに大きな水を張る。手前から人差し指一本で水を向こうに押しやる。水の波紋は途中で消えてしまう。それでも、ただひたすら押し続ける。やがて、波紋は大きくなり反対側の壁にぶつかって自分に返ってくる。与えて、与えて、それでも与え続けること。それはすべて自分のためになる…。そんな生き方をしなさい。

 これにつけて、私にはお一人忘れられない方がおられます。今から二十年以上も前、(株)ベネッセの島根県担当で延原範昭(のぶはらのりあき)さんという方がおられました(現在進研アド中四国支社)。どんな無理難題をお願いしても、すぐに対応していただき、調べて詳しい資料を持参していただける熱血漢の営業マンでした。当時はまだネット環境も何もなかった時代ですから、「情報」を足で稼いで、届けていただいていたように思います。説明会でも分かりやすく、先生方の喜ばれる情報をたくさん届けていただいていました。その延原さんが東京へご栄転になることが決まったとき、松江市内の進路部長(当時の故鞁嶋弘明先生など)が呼びかけて「送別会」を計画されたんです。松江の最高級料亭「みな美」でした。私たち進路指導部の下っ端もお手伝いしましたから、よ~く覚えているんです。こんな異例のことは、私の長い教員人生の中でも無かったことです。それだけ多くの先生方に愛された営業マンだったということですね。この伝説を話してあげては、先生方に愛される営業になりなさいよ、と若い方たちにアドバイスを贈っています。時は流れて、今全国でたくさんお使いいただいている『重要問題演習英語(筆記)』(ラーンズ)は、私が心臓の手術をした病み上がりの時、そんな延原さんがラーンズの社長時代に、ご一緒した、私にとっても思い出深い一冊です(新しい来年度版は2月末に出来上がりますよ!)。不思議な人の縁を感じますね。

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中