画期的な英文法参考書エイブル

 画期的な英文法の参考書が出ました。赤野一郎(監修)『総合英語エイブル』(第一学習社、1500円)がそれです。執筆者のお一人土屋知洋先生(防衛大学)から送ってDSCN2931ableいただいて、すみずみまで目を通しました。土屋先生、いつもありがとうございます。

     現場で英文法の参考書は山のようにありますが、どれも大同小異、読んでいて面白いと感ずるものは正直言ってあまりありません。が、この本は先生方が読まれて、いたるところに新しい発見があります。新言語学の知見を活かした記述がびっしりと詰まっています。私見では、この種の参考書は、安藤貞雄『新英文法』(数研出版)以来ではないかと思います。単なる規則の集まりで面白味のない英文法ではなく、言葉の持つ面白み、深さを教えてくれる文法書といった感じです。「学習者にとって英語力の基盤作りができるだけでなく、教授者も英語に関する新たな知見を得ることのできる1冊」(土屋先生)という言葉通りの参考書です。

 各章の冒頭には、中学校から高校への橋渡しとなる解説が添えられていて重宝します。「見出し」をつけて、一例文一解説に徹しており小ステップで確実に学習を進められるような配慮がなされています。音声データも無料でダウンロードできるようになっています。先生方には本文データも配信される予定とか。そして何よりも本書の大きな特徴が、類書にはない種々のコラムです。 「CORE」は文法事項の中核・基本原理がまとめてあります。WHY?」には生徒達が「なぜ?」と疑問に思う問いに対する分かりやすい回答が見られます。不定詞の意味上の主語で人の性格を表す際にIt is~of 人to Vのようにofを使うことは英文法の基本ですが、はたしてなぜofを使うのか?ということを考えたことがありますか。現場の教員でもなかなかすっきりした解答をできる人は少ないと思いますが、ちゃんとp.211に書いてあります。どう違う?」は、形がよく似ているという理由で混同しがちな語の識別が書かれています。たとえば、高校生入門期に出てくる副詞節と名詞節の区別は丁寧にわかりやすく書いてあります「まとめ」は各章で学んだ形が整理してあります。実際の使用頻度はコーパス(BNC)を分析して、視覚的にすぐ分かる円グラフで示してあります。たとえば、相手に「どうかしたのですか」と聞く、What’s wrong with you?と、What’s the matter with you? では、前者のほうが5倍も多く使われていることが示されます(私の意見を言わせていただけば、日常ではwith youはつけないのが普通。つけると意味が変わってくる)。理由を表すbecause節を日本人は前に置く傾向が強いが、実際には圧倒的に主節+because節が多く、こちらが英語らしい表現です。All you have to do is (to) V「~しさえすればよい」ではtoのないのが9割以上で普通です。be of 名詞=形容詞の用法がありますが、間にgreat, particular, limited, some, liettle, noと修飾語を置くのが7割近くになります。このような情報「コーパスで知る」は、コーパス分析ならではの貴重な知見で、類書には見られない本書の画期的な特徴です。+プラス」では一段階進んだ追加情報が明示されています。「unlessには仮定法の用法はない」とあります(これについては私の意見は⇒コチラ)。辞書を引こう」では、辞書を積極的に授業で活用するためのポイントとなる箇所に添えられています。単に語彙の学習だけでなく、文法事項の重要なポイントにも課題が提示してあるのに惹かれました(例えば「前置詞のイメージ」)。その他「リスト」Communicationの扉」といったコラムも見られます。こうしたすべてのコラムは「コラム一覧」pp.18-23で所在が明らかにされていますので、暇なときに拾い読みしてみるといいでしょう。

 監修者の赤野一郎先生(京都外国語大学教授、コーパス研究の日本での先駆者でもあり第一人者)ご本人が、こんな使い方をしてね、と呼びかけておられます。まさに文法参考書の使い方の極意をついている、味わいたい言葉です。

 本書の使い方についてオススメの方法を紹介します。出題範囲を決めて定期試験に使うことは避けてください。このようにして生徒に文法書を無理矢理読ませても、文法知識を身に付けさせることはできません。英和辞典と同じように、授業に必ず持ってこさせるようにしてください。英語を読んでいる時や英作文の授業時に、生徒が犯した誤りが文法の知識不足から来ていると判断したとき、該当ページを開かせその場で読ませてください。これを繰り返すことで、文法は単なる知識の習得ではなく、英語を使うための欠かせない道具であることをわからせることができます。(赤野一郎)

 いい参考書です。みなさんに一度手にとってみてもらいたく、広くお薦めします。

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