新幹線掃除はおもてなし

 テッセイこと、株式会社「JR東日本テクノハートTESSEI」は、主に、東北・上越新幹線の車両清掃を行っているJR東日本グループの鉄道整備会社

▲「駅が明るくなっていいですね」と皇太子さまの感想
▲「駅が明るくなっていいですね」と皇太子さまの感想

です。新幹線の停車時間はわずか12分しかありません。乗客の乗降時間を差し引くと、わずか7分弱、その間に彼らは新幹線の車両内を完璧に清掃します(座席、通路、トイレ、忘れ物の拾得)。新幹線がホームに到着する前に、チーム全員がプラットホームに一列に並び、丁寧にお辞儀をするところから仕事が始まります。私も、新幹線を利用するたびにいつも目にする光景です。窓越しに見ていても、本当に素早く手際よくやっておられます。その「お掃除の天使たち」の姿が、CNNなどに取り上げられ、海外からもわざわざ彼らを見学に来られるほどまでになりました。テッセイが注目される理由は、その「おもてなし」にあります。彼らは、自分たちの「清掃」も、おもてなしの一つだと考えているのです。これから新幹線に乗るお客さまに、快適に過ごしていただきたい。清掃時間の1分1秒の遅れが、発車時間の遅延に繋がり、不便どころか安全な運行が妨げられてしまう。お客さまに、安全かつ快適に、新幹線での移動を心から楽しんでいただく。そのような気持ちで作業に臨むため、ホームに入ってくる新幹線、そして見送る際にも、一礼を欠かさない、と聞きました。この会社の「新幹線劇場」に私が注目するようになったのは、2012年秋にに遠藤 功『新幹線お掃除の天使たち』(あさ出版)を読んでからです。

 「普通の清掃会社」を「おもてなしの会社」に変身させたのは、専務取締役の矢部輝夫さんです。矢部さんの本『奇跡の職場』(あさ出版、2013年)を読むとわかるんですが(この本とても面白いです)、彼は、まず従業員のスタッフの心の在り方を変えていきました。一番大きな変化は、現場スタッフの存在価値の意識を変えたこと。テッセイの従業員数は820名。正社員は440名、約半数がパートタイムでの勤務ですが、パート歴が1年以上あれば正社員採用試験を受けられます(が、新入社員の半分は1ヶ月以内でやめていく、と聞きました)。それにより、清掃スタッフ自らが主体的に動くことできるようになりました。そうして、現場からさまざまな意見が現場から上がってくるようになりました。ナレッジ共有のためのわかりやすいマニュアル、DSCN3962社員を褒め合うレポートなど、社内体制だけでなく、清掃現場で気付いたことなども提案されています。たとえば、コンコース内のベビー休憩室を設置する働きかけ、ホームで走り回る子供たちに手造りの新幹線のイラスト入りポストカードを配るなど、「お客さまに心地よく過ごしていただく」ための提案が現場から上がってくるようになったのです。上揭書を読むとそこらへんの意識改革の様子がよく分かります。

 このようにして、テッセイが生み出すものは、「清掃」という機能だけではなく、「おもてなし」という情緒的価値を生み出して、自分たちの仕事を再定義したからです。自分たちの仕事は「清掃」ではなく「お客様に快適な空間を提供すること」と再認識したのです。徹底した現場主義に徹することで、自分たちがお客さまのおもてなしをするのだ、という意識がスタッフに浸透することになりました。仕事の価値を再定義することで、新たな価値を構築することに成功します。「ノリ」のいい会社に生まれ変わります。「おもてなし」は、どれだけ相手のことを考えられるかから生まれます。それができれば、どのような職種でも、おもてなしをすることができるようになるのではないでしょうか。以前、TESSEIを訪れたフランスの国鉄総裁が、「これをフランスに輸出してほしい」と溜め息を漏らしたと言います。日本の先端技術や運行システムには驚かなかった彼が一番着目したのが、きめ細かい日本のサービス力とそれを実現する日本の現場の自律性、自発性なのです。

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