ソニー(もともとは東京通信工業、1955年のトランジスタの輸出を機に「sonic=音」と「sonny=小さい坊や」を組み合わせた造語)が元気がありません。ウォークマン、トリニトロン、プレイステーションなど夢のある製品を次から次へと届けてくれたのはもうずいぶん前になってしまいましたね。成功に酔いしれて、新たな技術への目配りや執念を欠いたために、創業当初の技術屋の「志」が薄れてしまったのが原因かな、と勝手に思っています。ソニーは「失敗の積み重ね」で、数々の「世界初」を成し遂げた会社です。誰もやったことのないことに挑戦すれば失敗はつきものです。たとえば、テープレコーダーの開発では、テープ部分に磁気成分を塗るテストでは、1万種類以上の方法が試されたと言います。高いハードルを何としてでも超えて夢を実現したいという技術者の執念が感じられます。このような志の高い失敗は、一生の財産になるわけです。これを経験として共有して急成長した会社がソニーだったわけです。「誰もやっていないことをやる」、それが創業者盛田昭夫・井深 大さんの信条でした。あくまでもパイオニアの道にこだわったのです。
そのソニー社内で、密かに受け継がれる「逆接のビジネス金言集」があるよ、と教えてもらって取り寄せて読みました。「ウォークマン」を開発したソニー伝説のアイデアマン大曽根幸三元副社長の実体験から生まれた、ヒット作を生み出す秘訣、リーダーの心構えをまとめたものです。元日本経済新聞社論説委員の石田修大『急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め ソニー副社長・大曽根幸三の成功金言53』(角川SSC新書)がその本です。面白い。実に面白い!一見すると厳しそうに見えるものや皮肉の利いたものもありますが、大曽根さんには「腹を据えて自分が責任を取る」という前向きの覚悟が感じられます。思わずニヤリとさせられるものもたくさんありました。
◎「新しいアイデアは上司に内緒で作れ」
◎「失敗は闇から闇へ葬れ」
◎「市場は調査するものではなく創造するもの」
◎「プロは乾いたタオルからでも水を絞る」
◎「急ぎの仕事は忙しいヤツに頼め」
◎上司がファジーだと部下はビジーになる
◎何でも半分にできると信じろ