nape

 懐かしい話を。もう今から20年以上も前のことです。napeという単語に興味を持っていました。辞書を引くと「えり首、うなじ」と訳語が出ています。問題はこの語につけられた当時の辞典類の語法注記です。通例the nape of the neckとして用いられる」(『サンライズ』)、「通例the nape of the neckで用いる」(『プログレッシブラーナーズ』)、「普通、the nape of the neck として用いる」(『ニューセンチュリー』)何故これだけ同一の記述が見られるのか?理由は簡単です。自分で確かめもせずに、よその辞典の記述を孫引きしているからに他なりません。私は当時、自分で小説や雑誌・新聞を読むときにチョット気をつけていました。すると判で押したように、次のような形でばかり使われていました。

 (1) In that instant, Bond felt the hair on the nape of his neck prickle with the sensed danger. ―J. Gardner, Icebreaker.

(2) She pulled her long blond hair into a tight knot at the nape of her neck…―D. Steel, Palomino.

(3) She washed and pulled her golden hair into a knot at the nape of her neck, and then concealed it beneath another dark cotten scarf. ―D. Steel. Remembrance.  

(4) Her hand caressed the nape of his neck.―Anonymous, Woman.

(5) He was bald save for a frieze of hair that started over each ear and dipped down to meet in a wiry bush at the nape of his neck. ―R.Cook, Brain.

(6) She knew that she looked as good as she could, and the whole effect pleased her as the soft Nile breeze caressed the nape of her neck. ―R. Cook, Sphinx.

(7) Her black hair was tied back at the nape of her neck with a gray ribbon.―C. Keene, Sisters in Crime.

(8) Josie said, and lifted her hair and touched the nape of her neck. ―Ed McBain, Eight Black Horses.

(9)Her black hair was pulled back and away from her face, fastened at the nape of her neck with a silver barette. ―Ed McBain, Mary, Mary.

 ちょっと見ただけでもこの単語がthe nape of one’s neckという形で使われることが明らかですね。今でも依然として、the nape of the neckの形で収録している辞典も多く見られます(one’sを併記するものも現れてはいますが)。今ならコーパスを利用すれば、この単語の実態などはすぐに分かりそうなものです。最近英米で出ている学習辞典の用例を見ると(すべて独自のコーパスの裏付けから作られている)そのことははっきりしますね。一部を見ておきましょう。

the way that his hair grew at the nape of his neck  [CAAED]
Her hair was cut short at the nape of her neck.  [OALD]
She kissed the nape of his neck.  [CALD]
He kissed the nape of her neck.  [MED]
the soft warm nape of her neck  [LDOCE]

 私は今から20年以上も前に、コツコツと用例を集めながらこのことに気がつきました。そして、関係する英和辞典にいち早く[the nape of one’s neckで]という注記を入れたのです。私の集めた上のような用例100枚近くが実証してくれていました。ライトハウス英和辞典』(研究社)の中にある「語法注記」は、当時の主幹故・竹林 滋先生の命で全て私が書いたものですが、全部に渡ってこのような実証作業を行っています。そしてボリンジャー博士イルソン博士アルジオ博士の確認を取りながら裏付けを行っています。まだまだ完全というわけにはいきませんが、他の学習辞典とひと味違うところがあるとすれば、当初からこうやって用例カードを使っての地道な裏付け作業の産物であることかもしれませんね。

広告
カテゴリー: 英語語法 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中