トレーニングパンツ/training pants

 先日、このブログで、英語のpantsをめぐる興味深い英米差について考えてみました。⇒コチラです  今日は、そのとき宿題としていた「トレーニングパンツ」について考えてみたいと思います。私たちの『ライトハウス英和辞典』(第6版)は、トイレのしつけ用パンツ(おむつが取れたばかりの幼児にはかせる《日英》日本語の「(運動用の)トレーニングパンツ」に相当するのはsweatpants」と記述しているものです。

 昔、英字紙The Daily Yomiuritraining pantsが「トレーパン」の意味で使われており、違和感を持った英語の先生が編集部に問い合わせをなさいました。回答は「編集部内で再検討致しました所、“training pants”には確かにご指摘通りの「幼児用パンツ」という意味もありますが、一般的に、口語ではいわゆる「トレパン」の意味で使われることもあり、特に英国では、“sweat pants”より“training pants”の方を多用するようですというものでした。私たちの主幹の竹林 滋先生から、この回答の信憑性について確認を取るようにとの指示が回ってきました。当時、私たちの『ライトハウス英和辞典』は、英米の問題となりそうな語法については、イルソン博士と故・ボリンジャー博士に確認を取って裏付けをしていました。イルソン博士は英国の事情について、「training pantsを使わない親もいるので、全員が知っているわけではないが、ライトハウスの記述する通りである」とおっしゃいました。イギリス人インフォーマントのバーナード先生もライトハウスの記述を支持され、ヨミウリの記事は「和製英語」だと断定されました。それでも、同僚の若いイギリス人ALTが「トレパンの意味で使うよ」と言うもので、念のために英国の辞書編集者・言語学者に尋ねてみることにしました。

【Christopher Steward  オックスフォード出版Assistant Editor】

「トレーパン」の意味で使うことはない。「幼児用しつけパンツ」のことはtrainer pantsと言うように思われる。

【George W.Davidson チェンバーズの辞書編集者】

「トレーパン」の意味で使うことはない。赤ちゃん用品店に聞いてみると「幼児用しつけパンツ」はtrainer pantsと呼んでいるとのこと。training pantsは、イギリスでは浸透しておらずアメリカ英語と思われる。

【M.Janes ハラップ社辞書編集長】

「幼児用しつけパンツ」の語義はアメリカ用法。イギリス英語でもアメリカ英語でも「トレーパン」の意味で使うことはない。

【Michael Swan  文法学者】

育児経験者に聞くとtraining pantsは「幼児用しつけパンツ」のこと。「トレーパン」の意味はない。

 上述のイルソン博士、バーナード先生の反応を加えても、結論的には、イギリス英語では、「トレーパン」の意味はなく、「幼児用しつけパンツ」の意味と考えられますが、一般的にはtrainer pantsと呼ぶことの方が多い、ということになりそうです。

 アメリカ英語における実態を、アルジオ博士にも伺いましたが、やはり「幼児用しつけパンツ」の意味で、これはアメリカ英語ではないかと思うとの回答でした。「トレーパン」の意味で使うことはアメリカでもイギリスでもない。老舗辞書出版社のメリアム・ウェブスターにも確認を取りました。

【Robert Copeland  メリアムウェブスター社辞書編集者】

training pantsのイギリス英語からの用例は一例もない。英国系の辞書にも記載がない。アメリカ英語における用例は全て「幼児用しつけパンツ」(absorbent briefs worn by children during toilet training months)の意味。

 以上のことより、やはりtraining pantsは「幼児用しつけパンツ」のことであって、「トレーパン」を指すことはない、「和製英語」と断定してよさそうです。亀田尚己・青柳由紀江・J.M.クリスチャンセン『和製英語事典』(丸善出版、2014年)が×(和製英語)と断定し、「一方、英語のtrainは、動詞で一般に「訓練する、しつける、仕込む」ことで、子供や子犬などを「粗相しないようしつけること」も意味します。そこで英語のtraining pantsは、幼児がおむつを外す訓練に履く厚手の「訓練用パンツ」になります。トレーニングパンツというと、英語では「用便訓練用パンツ」のことになりますので、いわれた相手はびっくりするでしょう」と述べていることに尽きると思います。もう一つの宿題、underpantsについては次回に考察します。

 このように疑問と思われる語法項目を一つ一つ調べて確認をしていく。そうやって『ライトハウス英和辞典』(研究社)【語法】【類義語】は、私が苦労して書き上げたものです。故・竹林 滋先生(東京外国語大学)から、夜電話がかかってきて「八幡さん、○○について調べてくれませんか?」と言われる度に、気合いが入っていた時代が懐かしく思い起こされます。当時はそれこそ夜中の2時、3時まで根を詰めて作業をしていました。自分の勉強にもなるし、若かったので、辛いと思ったことは一度もありません。それで朝から晩まで授業、校務、ソフトテニス部の監督を務めていたのですから、元気でしたね。❤❤❤

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