外国人教授が、新入生最初のレポートの提出を求めたところ、次のようなカバー・レターとともに、送ってきました。このカバー・レターにはさまざまな問題点があります。どれくらい気がつきますか?ご興味のある方は、『CNN English』1月号(朝日出版)の特集「知らないと大ケガ!誰も教えてくれなかった英語の“リアル”丁寧表現」で、ティモシィ・ミントン教授(Timothy D.Minton, 慶應義塾大学医学部教授)が解説しておられますので、ぜひお読み下さい。この記事はとても勉強になりました。
Dear Mr. Minton,
Hello.
I am sending you my assignment.
Please check it.
命令文にplease をつければなんでも丁寧になると思っている教師・生徒が非常に多いようです。中学校の英語の授業を思い出してみると、「お願いごとをするときは命令形に “Please” をつける」と習いませんでしたか?そのように学校で習ったものですから、当然と言えば当然のことかもしれません。ミントン先生は、「命令そのものが不適切な状況や相手に使われている場合には、pleaseを付けても丁寧表現にはならないのです」と述べておられます。上の”Please check it.”で考えてみましょう。命令する人(学生)とこれを受け取る人(教授)の関係を考えれば、そもそもこうした命令自体が不適切ですから、いくらpleaseを付けたからといって、失礼さは変わらないのです。さて、上の英文には、この他にどんな問題点があるのでしょうか?
日本で最もよく使われている『ジーニアス英和辞典』の著者たちによる高校英語総合参考書『ジーニアス総合英語』(大修館、2017年)には、参考になるコラム記事がたくさんあって勉強になるのですが、そこには次のような注意書きが挙がっています。
pleaseはどんな命令文にもつけられるわけではありません。相手がその行動をすることで話し手が利益を受ける場合に使うのがpleaseの基本です。
Please bring me a cup of coffee. コーヒーを持ってきてください。
しかし、話し手でなく聞き手の利益になる場合でも、話し手が心を込めて相手に行動を促す時には、pleaseを文頭で使うことができます。
Please make yourself at home. どうぞお楽にしてください。
話し手の利益にならず、話し手が心を込めて行動を促すのでもない、指示や忠告を表す命令文にはpleaseをつけません。たとえば道案内のようなケースです。
Go straight and turn left at that corner.
×Please go straight and turn left at that corner.
まっすぐ行ってあの角を左に曲がってください。
日本語の「~してください」は丁寧な言い方としてさまざまな場面で使えますが、pleaseには使える条件があります。やみくもにpleaseを使わないように注意しましょう。(p.41)