attempt V-ing~竹林先生の見識

▲右から竹林先生、中尾啓介教授(島根県津和野町出身です)、八幡

 かつての『ライトハウス英和辞典』(研究社)に、こんな用例が挙がっていました。私はこの辞典の編集委員を務めております。問題は(c)の語法です。

(a) The prisoners attempted an escape. = (b) The prisoners attempted to escape. = (c) The prisoners attempted escaping.  囚人たちは逃亡しようと企てた。

 ところが、改訂作業の中で、編集委員のアルトハウス先生(津田塾大学)は、(c)のようには言わない、と指摘されました。編者の故・竹林 滋先生から、この語法に関して確認を取るようにとの指示が回ってきました。それもそのはず、当時、   Quirk et al.(1985)Longman Dictionary of American Dictionaryに容認されていた語法です。そこで、私は知り合いの辞書編集者たちに、この語法の実態に関して尋ねてみることにしました。まもなく、以下のような回答が届けられました(当時は「メール」などという便利なものはありませんから、書面で質問をして、2・3週間後に返事が届くといった時代でした)。

Della Summers(ロングマン辞書部編集長) I agree that (c) is a good deal more unusual than (b), certainly in British English as well as American English. I am not sure whether it merits a usage note , however, as I do not know what the rationale behind your usage notes is.

J.B.Sykes (オックスフォードCOD編者) (b) is normal, (c) very unusual.

Robert Copeland (メリアムウェブスター編集部) We find no evidence in our citations of the verb attempt followed by a participle. Our only examples are for attempt with a “to infinitive” and attempt with a noun phrase(“we have attempted an analysis…”)

Robert K. Barnhart (WBD編者) Item (b) may be the more frequent usage in American English and perhaps in British English as well. As the citations under definition 1 in Oxford English Dictionary show, attempt can take the infinitive or the noun of action. While use of the gerund occurs, it can in some circumstances sound forced

P.Y.Su (ランダムハウス辞書部編者) As you say, (b) is more common than (c).

Dwight Bolinger (言語学者) Yes.

 これらのことより、圧倒的に(b)型が(c)型よりも普通であることが判明しました。当時最新刊であった、イルソン博士たちのThe BBI Combinatory Dictionary of English(1986)初版も、この動名詞の用法に「(rare)」(まれ)というレーベルを付していたことからも、動名詞構文に《まれ》と注記を付けてください、と編集部に回答しておいたんです。すると故・竹林 滋先生から「このようなときには《まれ》として載せるのではなく、収録しないのが学習辞典としての態度。他の場合もこのprincipleでお願いします。つまり現実の言語活動で極めて頻度が低ければ[絶対使わないというのではなく]載せない。」とのご指導をいただきました。以来、その姿勢で辞典の改訂作業にあたってきています。今でもこの語法を掲載している学習辞典(オーレックス英和(「まれ」)、ウィズダム英和(「比較的まれ」とはどういうことか?)、アドバンスドフェイバリット(注記一切なし!))や、Michael Swan, Practical English Usage(4th edition, 2016)『ジーニアス総合英語』(大修館、2017年)のように、不定詞・動名詞のどちらも取ると平気で書いている文法書を見るたびに、この竹林先生の見識を思い起こしています。学校現場では無視すべき語法です。❤❤❤

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