特急「丹後の海」

 京都府の北部を走る京都丹後鉄道で、2015年11月より運行を開始した新しい特急車両「丹後の海」「特急はしだて5号」に乗ってきました。天橋立駅から、島根県津和野町出身の安野光雅(あんのみつまさ)さんの美術館が6月にオープンしたばかりの久美浜駅までの乗車です。この列車は、丹後の美しい海を想起するような「海の京都」をイメージした車両を導入したいという願いから、工業デザイナーの水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生に設計・デザインを依頼して誕生しました。以前は、JR京都駅~京都府北部エリアを結ぶ特急「はしだて・まいづる」号の一部などに使用されていた「タンゴディスカバリー」(車両KTR8000形)をリニューアルした車両です。車体色を藍色のメタリックとして、利用者をはじめ多くの観光客に、丹後の美しい海を想起してもらうことができる列車です。ニューアルにあたっては、京都北部エリアは日本海に面していることから、「海の京都」をテーマとしており、外観は丹後の海をイメージした「藍色メタリック」となったほか、車内は温もりある空間に”変身”しました。地元の人たちの新しい足として、そして旅行者にとって丹後への足として、愛される列車として運行しています。水戸岡列車」の全制覇を目論む私は、一度是非乗ってみたいと思っていましたが、ようやく実現しました。

 車体色は、旧「タンゴ・ディスカバリー」で採用されていた緑と白のカラーリングから一変し、海の京都をイメージした藍色のメタリックカラーとなり、海原のように日差しを受けてキラキラと光る調色になっています。外観について水戸岡先生は「元々の車両は、大きなおでこ、丸い形で不細工に見えた。逆にそのおでこを活かすデザインをし、藍色のメタリックカラーにすることで空が映り込み、なかなか高級感を出せた」と、デザインのポイントを語りました。ボディカラーに映えるアクセントとして、車体の各所に「ななつ星in九州」「或る列車」と同じように、金色のシンボルマークやロゴが配置されています。シンボルマークのモチーフは、すでに京都丹後鉄道で運行されている観光列車「あかまつ」「あおまつ」「くろまつ」で使われている“松”と、丹後の海をイメージした“水(海)”を組み合わせて考案されました。ボディのあらゆる場所にマークがあるのは、列車のどこを記念写真で撮っても「丹後の海」であることが分かるように、という水戸岡先生の配慮・哲学からです。前面上部の曲面にも、シンボルマークが配置されています。前面に取り付けられたシンボルマークのエンブレム。標識灯まわりもブラック塗装で引き締まりました。金属製のアクセントもあしらわれています。側面の窓ガラスにも、松と水(海)が描かれています。乗車口の脇には、ひときわ大きなロゴが描かれていますね。

 車内は、外観のクールなイメージとはうってかわり、床、天井、窓枠、座席の背面、テーブル、肘掛けなど、ありとあらゆる部分に素材としてを採用した温かみのある空間となっています。木に囲まれ、森の中にいる感じを演出していますね。これは、リビングルームや書斎、レストランをイメージしたものだとのことです。天井に採用したのは、自然の木目や木肌を活かし、特殊塗装仕上げを施した特殊積層シートで、アルミ材に0.2mmの薄い木(ツキ板)を貼った不燃材。天井表面のドット柄は、パターンや色を数種類使うことで、広い面積の中に変化を付けていました。また、各窓の周りも木枠でまるで額縁のようになっていました。照明も温かみのある電球色で落ち着いた空間を演出しています。運転室後ろには「のれん」を発見しました。のれんをくぐると、そこはフリースペースになっています。運転室横は隣の車両へ通り抜けられるようになっていました。フリースペースにはソファが並び、列車の中であることを忘れてしまいそうです。座席は車両・場所によってオリジナルのモケット(パイル織物)は色を変えています。芸が細かいですね。⇒詳しくはコチラです  生地も厚く高級感が漂っていました。窓枠と窓枠の間にはちょっとした飾り絵も。ここら辺が水戸岡先生のこだわりなんでしょう。木製のセンター肘掛けは、形とサイズが違う2種類が存在します。これは、当初大きめの肘掛けを作ったが、体の大きな人が使いにくいということで、小さいサイズも作ったとのこと。2種類の肘掛けがあるため、自分の体型から席を選んで座って欲しいとのことです。隣の車両へ移動します。出入口デッキ周りはシックなデザインです。

 内装について水戸岡先生「心地よい、贅沢な空間が移動している……というのが楽しいのではないだろうか。工業製品ではなく、人の手間暇が見える仕上がりが重要。今は、利便性と経済性を追求する時代で、今回はいかに手間暇をかけるかという逆方向のやり方をした。しかし、これが、これからの日本を支えていくもっとも大事な考え方だと思っている。手間暇を惜しんでは楽しいことも、豊かなことも、うれしいことも感じさせられない。まずは、来て乗って、車内で話をして、食べて飲んで、豊かな時間を過ごすなかで、この手触り感、本物感を知って欲しい」と語っています。

 水戸岡先生「今回、席数をあまり減らせないという条件があり厳しかった。4席減らして、共有空間を広げた」と語っています。入口にはのれんが掛けられ、運転席や大きく広がる展望窓には格子がはめられた“和”を感じさせる空間に仕上がっている。リニューアルにあたり、どのような部分に苦労があったのかを水戸岡氏に尋ねると、今まで使っていた車両をいかに蘇らせるか、形を何も変えられない中、デザイナーとして以前とは全然違う車両にしたい。そのために、何をしたらよいのか。たくさんの職人さんたちを説得して、予算もスケジュールもない中で技術を発揮して欲しい。最高のものにして欲しい……という説得が一番難しく苦労した」と語っています。実際に出来上がった車両を見ての感想を聞くと、結構、贅沢で豊かな車両ができた。日本の特急のなかで、一番とは言わないがトップクラス。世界でもトップクラスの車両かもしれない」と、職人たちの働きによって完成した車両に満足した様子です。WILLER TRAINS 代表取締役の村瀬茂高氏は「パース図で見たものより、実際の車両を見ると、とても乗りたくなるできあがり。特に、藍色のメタリックカラーが印象的。日に照らされるときれいに光るので、天気がよい日に乗ってもらいたい。今までの車両と比べ見た目のインパクトが強いが、実際に乗ると、優しく包んでくれてリラックスして乗れる。目的地に着くまで、和気藹々と気持ちが明るくなる」と、新車両に期待を寄せました。

  1号車の車内。内装には木がふんだんに使われています。優先席には、車イスのスペースと、固定する器具がありました。棚や天井も木が使われていて、照明は暖かみのある電灯色です。リニューアル前はカーテンだったそうですが、ブラインドとしてすだれが設置されました。座席は肌触りのよいモケットと芯のしっかりしたクッションで快適です。床にはナラ材を使用。座席に張られたモケットはオリジナルで、複数の色や柄がありました。座席の背面も、木目や木肌を活かした特殊積層シートで化粧されています。テーブルも木製。さらに、座席背面にドリンクホルダーが追加されました。贅沢な空間が演出され、リラックスしながら旅を満喫できそうです。ちょっとしたスペースにも、木製の棚が設置されています。厚さ0.2mmの白樺が貼られた天井。天井の柄は数種類あり、微妙に色も違うマークが配置されています。形とサイズが違う2種類が存在するセンター肘掛け。1号車の運転席周辺のガラスには格子をあしらったデザインが施されている。のれんをくぐって共有空間に入っていきます。共有スペースは、広い空間で、ひときわ大きな展望窓が特徴。運転席の窓にも格子があしらわれています。木製でない箇所は、黒を基調とした落ち着いたカラーになっています。1号車の乗車口付近は、トイレや洗面所などが設置されています。多目的トイレも、床材や額縁など、車内の雰囲気を踏襲している。すだれで仕切られた洗面所。側面のガラスにも格子のデザインが施されています。内装も、木を使っていますが、木製床の耐久性についても、あおまつ」で実証済みとのことです。⇒私のこの列車の乗車レポートはコチラです

 代表取締役の村瀬茂高氏は「『丹後の海』は、地元の人が“私たちの地元にはこういう鉄道が走っている”と、誇りを持てるシンボルになる。多くの方が京都丹後鉄道を利用し、天橋立やコウノトリの郷といったたくさんの観光地を見てまわれる、とてもよい車両が完成した」と、新車両への自信を表明しています。❤❤❤

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