以前にこのブログで、lead a dog’s lifeという成句の意味について、書いたことがあります。再録してみます。
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lead a dog’s life「みじめな生活を送る、苦労の多い生活をする」という成句に新しい意味があることに気付いたのはもうずいぶん前のことで、Gyles Brandreth, Everyman’s Modern Phrase & Fable (1990)を拾い読みしていたときでした。そこには「興味深いことに、最近ペットの犬が過保護になっていることから、この句は時に皮肉あるいは不正確に、贅沢で心配一つない生活を送るの意味で使われる」と、書いてあったのです。「ペット犬のように贅沢な暮らしをする」という意味で使われることがあるということです。イルソン博士に実情をお伺いすると、そのような意味の可能性は認められたものの、まだ辞書への収録は必要ないとのことでした。今度はアメリカ英語での実態をアルジオ博士に調査してもらいました(1991年ジョージア大学での調査)。それによると、52%が悪い意味に、47%が良い意味に、2%が文脈により両義が可能としました。さらには、年配の人は悪い意味に、若い人は良い意味に取る傾向が観察されました。明らかに犬の生活の向上と共に、この成句の持つ意味合いに変化が生まれようとしていることだけは間違いありません。Brandreth(1990)が観察した、”ironically or inaccurately”という但し書きは、良い意味に取ると答えた学生たちには全く無縁のものでした。以来、20年間注意して見ていますが、辞書の扱いには変更はなさそうです。さらに今後の変化に注意が必要な成句です。
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