「方針」とは?

 現場では、トップが部下に仕事を指示する際に、その仕事に取り組むための『方針』というものが必要です。この『方針』とは具体的にどのようなものなのか?が、いまいち不明瞭ですね。私は、尊敬する松下幸之助(まつしたこうのすけ)さんに習って、(1)「基本理念」、(2)「具体的目標」、(3)「最終目標」、の三つを挙げることにしています。この三点セットを明確に示すことによって、努力の方向をしっかりと提示し、仕事を進めていくための羅針盤とすることができます。そして最後には、きちんと結果を検証・評価することができます。トップがこの三要素を明確に打ち出さなければ、部下はやる気を起こさず、不平ばかり言って、ろくに結果を残すことができません。部下の士気が上がらない場所に、結果はついて来ませんものね。

 「なぜこの仕事をしなければならないか、どのような仕事の仕方をしたらよいのか」(=基本理念)、そして「どのようなペースで進めればよいのか、何に注意を払いながら三ヶ月後に、六ヶ月後に、一年後にこどまでやればよいのか」(=具体的目標)、さらに「自分の仕事はどこにたどり着くのか、終着点はどこなのか?」(=最終目標)が分かれば、多少苦しい仕事であっても、やりがいを持って仕事に当たることができるのです。理念ばかり語って、具体的目標を示さないとか、具体的な数値目標ばかりが一人歩きして、何のためにこの仕事をするのか?という基本理念が示されなければ、いい仕事はできないでしょう。学校現場でよく見られるのは、『今年の教育目標は○○○○だ!』と声高に叫ぶのですが、そのための具体的方策最終目標が示されないことが多いように思われます(従って検証もできないことが多い)。一応、年度末反省」と称して、ABCDの評価をつけはしますが、抽象的なお題目に対してシビアな評価は生まれないでしょう。やったことにしている(逃げ道を作っている)というのが実態でしょう。

 尊敬する松下幸之助さんは、まず「この仕事は何のためにするのか」「どのような取り組み方をするのか」を教え、それから具体的目標と最終目標を示されました。松下幸之助さんの一番弟子・継承者の江口克彦さんが、このことをマラソン選手に喩えて述べておられます(例えば、『猿は猿、魚は魚、人は人』(講談社、2010年)『松下幸之助に学ぶ部下がついてくる叱り方』(方丈社、2017年))。マラソン選手はなぜあれだけ過酷な練習に耐えられるのか?それは「何のための練習か?」(基本理念=オリンピックで走るため、メダルを獲るため、ライバルよりも早く走るため、私が一番感心した基本理念はクロネコヤマトの「サービスが先、利益は後」等々)、「そのために何を練習するのか?」(具体的目標=途中の5キロ、10キロ、20キロ、30キロのラップタイムをどう刻むか、どんな走り方をするのか、等々)、「最後に何を目指すのか?」(最終目標=42.195キロのゴールに何時間何分でたどり着くか)、といった全体方針がはっきりしているので、激しいトレーニングに打ち込めるのです。ところが、「何のため」もなければ「最終ゴール」も分からないとなれば、過酷な練習に耐えられるはずもありません。ああ、そうか。この仕事はこういうことのためにやっていて、こういうやり方をとって、最後はこうなるんだ」と全体の流れが分かっていれば、イライラすることもありませんし、辛いと感じることもないでしょう。仮に結果として達成できなくても、中途半端なできあがりになって厳しい叱責を受けたとしても、納得がいきます。

 昨年11月に、都立日比谷高等学校校長の武内 彰先生の『日比谷高校の奇跡~墜ちた名門校はなぜ復活し、何を教えているのか』(祥伝社新書、2017年11月)を発売と同時にむさぼるように読みました。この本の中には、上で述べたような「基本理念」「具体的目標」「最終目標」が明確に書き込まれていました。「日本一の進学校」と謳われた日比谷高校は、かつて東大に200人近くを合格させていましたが、1993年にはそれがわずか1名にまで落ち込むという衝撃的な落ち込みを経験しています。その日比谷高校の近年の復活劇の背景・理由が詳しく具体的に語られています。方針』を明確に打ち出し、それに向けて全職員が取り組んだことが克明に描かれています。ここには、日比谷高校の授業内容や使用教科書、補助教材、特別講座内容まで全部公開されているところがすごいですね。ぜひ先生方に読んでいただきたい本です。生徒が飛躍的に伸びるのにはちゃんとした理由(わけ)があるんです。ちなみに日比谷高校のホームページには、教育目標」(これはどこの学校も似たり寄ったり)、武内校長の「学校経営計画」そしてその反省「学校経営報告、今年度の「学校経営シート」が公開されています。やりっ放し」にしないように、最後には検証可能なように「数値目標」も掲げられています。コレ、すごいです!これらを先生方ご自分の学校のものとぜひ見比べてみてください。⇒例えば日比谷高校「学校経営計画」コチラです。 V字回復を都教委に指示された手前、難関国立4学(東大・京大・一橋大・東京工業大)と国公立大医学部医学科や難関私立大学の合格者数の数値目標は公開されていますが、それが最終ゴールではないことを、武内先生は、はっきりとおっしゃっておられます。

 校長がこの目標を達成するためだけの学校経営をすると、教員も生徒も受験至上主義に変わってしまいます。私は、上級学校に入るためだけの学びをして来た人が将来のグローバルリーダーとして相応しいとは考えていませんし、数値目標を達成するためだけの学校経営はしたくありません。すると教員たちは、この校長は「東大合格者を何人出そう」ではなく「生徒の希望を叶えるために教員全員が力を合わせよう」「将来のリーダーとして活躍する生徒を育てよう」というメッセージを発しているのだと反応し、結果的に高い進学実績につながりました。

 やはり最後は、上に立つリーダーの姿勢ですね。組織はリーダーの力量以上には伸びない野村克也)のです。これは、現場を長く勤めての実感です。私は、松江北高が最後の現場になりましたが、自己目標」には、「世界の人たれ そのために英語の力をつける」(基本理念)、「希望進路実現のためにふさわしい教材を作る」(具体的目標=私が長年作り続ける「センター対策本」もその一つ)、「センター試験平均〇〇〇点 希望進路実現」(最終目標)と書き込んで、自己検証・評価を続けてきました。決して大学に入れることが目標ではありませんでした。授業の中で、英語学習の面白さ、楽しさ、深さ、難しさ、辛さ、喜びを伝える中で、生徒の心に火をつけて、「力をつける」ために毎日奮闘していました。すると結果的に希望大学に合格していた、というのが実感です。❤❤❤

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