マサ斉藤死す!

 アントニオ猪木との抗争などで一時代を築いた昭和の名プロレスラー、マサ斎藤さん(本名・斎藤昌典)が、7月14日未明に死去したことが発表されました(享年75歳)。1999年頃にパーキンソン病を患い、以来不屈の闘志でリハビリに励んできました。日米マットを沸かせたレジェンドが、長期に渡った闘病の末にまた一人天国へと旅立ちました。妻の倫子さんは、17年にも渡る闘病生活は、“Go For Broke!”(当たって砕けろ)をモットーに掲げる彼にしても、想像を絶するほど辛く厳しいものでした」と振り返り、最後の瞬間を「穏やかながらも、新たなチャレンジへ向かう様な、マサ斎藤らしい力強い旅立ちでした」と綴りました。

 東京都中野区生まれのマサ斎藤(本名:斎藤昌典)さんは、明治大学時代の1963年に、レスリング全日本選手権でフリースタイル、グレコローマンの両ヘビー級で優勝し、1964年「東京五輪」に出場しました。大学卒業後にプロレス入り。一匹狼を貫き、主にフリーランスで海外を渡り歩き、1980年代から新日本プロレスを主戦場にしました。1990年には、ラリー・ズビスコを破ってAWA世界ヘビー級王座を獲得しています。得意技の「バックドロップ」は、ルーテーズばりの反りの効いた美しい必殺技でした。刑務所時代(警官への暴力事件で服役⇒コチラに私の解説)に開発した(?)という「監獄固め」も説得力のある拷問技でしたね。実力を備えた悪役レスラー(ヒール)で、私は好きでした。引退後も、新日本プロレスのテレビ中継の解説者として、味のある解説をなさっておられました。

 でもやはりなんと言っても、マサ斎藤さんを語るときにハイライトとなるのは、1987年10月に行われたアントニオ猪木との「巌流島の決闘」でしょうね。ブラジルでの事業失敗による多額の借金問題や、倍賞美津子との離婚問題の苦悩から、離婚2日後に猪木が死に場所に選んだのがこの巌流島の決闘でした(小佐野景浩『プロレス秘史1972―1999』)。「どうせ死ぬなら、自分らしく戦って死にたい」 時間無制限、ノーレフェリー、無観客で行われた2時間5分14秒の大死闘、両者の規格外の闘いは、今なおファンの間で語り草になっています。1612年に宮本武蔵佐々木小次郎が決闘した巌流島に設置した特設リングで一騎打ちをした試合です。この島は山口県下関市、関門海峡に浮かぶ無人島で、正式な島の名称は「船島」と言います。時間無制限、「お互いのプライドのみがルール」、前代未聞の観客のいないノーピープル戦で行われました。見守るのは報道陣のみ。立会人を務めた坂口征二山本小鉄の両氏が、午後4時半に試合開始を宣言しても、猪木は用意されたテントから出てこず、じれた斎藤が先にリングに上がります。にらみ合いから猪木は予告通りに絞め技で攻撃。大技は猪木のバックドロップのみという静かな攻防が繰り広げられました。日没後、照明と周囲4カ所にかがり火がたかれる中、リング外の攻防へ移っていきます。互いに「まだだ…」と呻きながら、長丁場の試合に突入します。猪木の頭突き4連発で斎藤の頭が割れ、流血。斎藤もかがり火のまきで猪木の額を殴り、両雄とも血をしたたらせながらの戦いです。再びリングに舞台を戻すと、猪木はブレーンバスター、斎藤は延髄斬り、バックドロップと決め技をたたみかける。最後は野戦となり、猪木が「裸絞め」(魔性のスリーパー)で絞め落として、マサ斎藤が崩れ落ちました。血みどろの殴り合いの末、猪木が2時間5分14秒、KO勝ちを収めました。死闘の後は両者とも無言で決戦の地を後にしています。マサさんは、この夜、缶ビール54本を開けたそうですよ。「興奮してるのと身体が痛むので眠れないんだよ。それでビール飲んで、痛みをごまかしてね」(玉袋筋太郎『痛快無比!!プロレス取調室』)

 厳しいリハビリ治療の続く中、2016年12月2日には、リング復帰を果たし、武藤敬司が扮した海賊男をパンチとキックで蹴散らしました。⇒私の記事はコチラ  近年は、モハメド・アリのように、2020年の「東京五輪」で聖火ランナーになることを目標にしてリハビリを続けていたそうです。妻の倫子さんによれば「来年、再びカムバックのチャンスも出てきました。その為にリハビリに意欲を燃やしていた矢先」の急逝だったといいます。ファンに愛された昭和の名レスラーがまた一人、惜しまれながらこの世を去りました。愛読する週刊プロレス』の最新号は、マサさんの追悼号、獄門鬼永遠に…「砕けない心」となりました。♠♠♠

カテゴリー: 日々の日記 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中