大阪桐蔭の「人間力」

 夏の高校野球、甲子園決勝戦の前日のテレビはもう異常でした。どこのチャンネルをつけても金足農業高校の報道ばかり、これでもかというぐらいに持ち上げていました(もちろん同校が素晴らしいことは言うまでもありませんが)。「秋田」「農業」「公立」「秋田出身者のみ」「第1回以来決勝進出」「一人で全部投げきる吉田投手」などを大々的に取り上げて、ワイドショーらしくもてはやしていました。一方、史上初の2回目の春夏2連覇がかかる大阪桐蔭はまるで「悪者(ヒール)」扱いです。ほとんど掘り下げられることはありませんでした。完全にアウェイの中行われた試合となりました。いかにも日本のマスコミらしいな、と思ってテレビを付けっぱなしにしていました。

 金足農業をボコボコにやっつけて、史上初となる2度目の春夏連覇を達成し、自身の甲子園優勝回数も春夏合わせて7度目で、PL学園中村順司監督を抜き単独トップに立った西谷浩一監督(48歳)は、「1年間の目標として、最高のチームを作ろう。そして本物のチームを作ろう。最後に最強のチームになろうと言いましたが、今日、最強のチームになったことを本当にうれしく思います」と語りました。昨年の夏3回戦での敗れ方が衝撃的だっただけに(最後のアウトとなるショートゴロを1塁手がベースを踏みそこねて、その後サヨナラ負け)、今回の優勝の喜びはひとしおだったことと思います。全国から有名選手ばかりを集めているのだから勝って当然だ、と陰口・批判する声が聞こえますが、とんでもない思い違いです。強い選手を集めてもそれだけでは勝てないことは、近年の巨人軍を見たら一目瞭然ですね。では何が必要なのか。西谷監督はハッキリ断言します。野球は体でやるもんじゃない。心でやるスポーツだ!」 「心」のチーム作りに取り組んだ結果です。

 ド派手なガッツポーズが話題になった今大会でしたが、大阪桐蔭の選手はホームランを打った時でも一喜一憂せずに淡々とベースを回っています。一切のガッツポーズはありません。⇒私の意見はコチラ  聞くところによると、キャプテンが中心となって口酸っぱく注意していたと言います。あのイチローがガッツポーズなどしたところを見たことがありませんね。三冠王を三度取った落合博光もそうです。あれだけホームランを打った世界のホームラン王・王 貞治さんも、ホームランの世界記録を樹立した瞬間に、両手を天に広げたことぐらいしか記憶にありません。お互いが持てる力を全部ぶつけて、真剣勝負を挑んで出た結果です。派手なガッツポーズは、相手に対する冒涜だと感じます。大リーグなら間違いなく報復されるところです。米国の大リーグでホームランを打った選手がガッツポーズなどしないのは、1)真剣勝負の結果、たまたま自分が勝っただけで、相手に対する敬意は揺るぎないから2)自分の力からすれば打ったのはごく当たり前のことと思っているという自信から、と聞いたことがあります。やはり日本とは、ハードルの高さが違うようですね。ちょっとしたことでガッツポーズが出てくるのは、本人のレベルがいかに低いかの証明でもあります。高校野球で、こうしたことを指導できる指導者がいかに少ないことか!野球部のレベルの低さを目の当たりにするところです。

 寮生活でも、携帯電話は禁止、時間厳守、下級生の部屋にはなるべく入らないなどの規則があり、「日本一の寮生活にしよう!」との号令がかけられると言います。遠征帰りのバスの中でも勉強している選手もいるそうです。バスを降りたら3年生が一番に走り、1年生よりも先にグランドにトンボをかけ、道具も出す。挨拶、掃除も一生懸命。朝早く起きて勉強する選手も。

 野球の強さだけでなく、こうした徹底した「人間教育」が本物の強さを作り上げていることを、もっとマスコミは報道すべきだと思います。ちなみに私の大好きな巨人軍が、V9(9年連続日本一!)というとてつもない記録を樹立したときの川上哲治監督は、常日頃から、野球の話はせずに「人間としての教育」に励んだと言います。スリッパの脱ぎ方まで口うるさく注意したと言いますから。最近の巨人軍の不祥事続きを見るに、こうした伝統が全く失われてしまったことが明らかです。今の巨人の指導者の顔ぶれを見るに、川上さんのような「人間指導」ができる人がいるとは、およそ思われません。私は高校教育でもそうした「人間力」を指導することこそ、「本物の学力」をつける近道だと信じています。最近の松江北高の低迷を見るにつけ、そうしたことを感じています。♠♠♠

【追記】 大阪桐蔭高校のゴルフ部で、賭けゴルフや下級生への暴力行為で、部を一時活動停止処分にしていたことが、最近明らかになりました。ゴルフ部は毎年のように全国大会に出場する強豪校のようですが、「人間力」の指導が学校全体に行き渡っていたわけではないようです。要は指導者の問題でしょう。

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