木次線

▲私はこの写真を撮るためだけに木次線に乗って木次駅まで行ってきました〔笑〕

 バレンタインデーに合わせて、JR木次線木次駅(雲南市木次町)のホームに写真のような看板が登場しています。ホワイトデー前日の3月13日までの期間限定の看板です。駅名の「き❤(好き)」と表す看板に、ハートに向かって矢を射る天使の姿が描かれています。「き❤」の看板は、大分県臼杵市(うすき)のJR臼杵駅が「すき」をハートマークで表した「う❤」の看板を掲げたことを受けて、2018年4月に、木次駅でも設置していました。今回は臼杵市の提案で、両駅の看板に天使がお目見えしたものです。鉄道ファンには堪らない看板ですね。

 どうしてこのような看板が登場したのかに関しては、「天使の登場で閑散期の冬季の利用客増と雲南エリアのPRにつなげたい」目論みに加えて、深刻なお家の事情があります。2018年3月末で「JR三江線」(三次―江津)の運行が終わりましたね。現地は、「お名残乗車」の人々で大賑わいを見せました。日頃からいつもあれぐらい乗ってくれていたら廃線になることもなかったでしょうにね。また、沿線地域では廃線跡地の活用に向けた動きも始まっているようです。その一方で、「明日は我が身」とざわついているのが、三江線の隣にあるこのJR木次線」の沿線なんです。JR西日本が自社サイトで公開した「区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2016年度)」によると、三江線の平均通過人員は1日あたり83人で最下位でした。その次に平均通過人員が少ない路線が大糸線の1日あたり100人。その次が、木次線の1日あたり204人です。間違いなく大きな危機に瀕しているのです。今日私が乗った木次線の列車は、宍道駅発の備後落合行きは学生らで満員でしたが、帰りの木次発宍道行きの列車は2両編成で乗客はたったの4人でした。これは実にやばい!ということで、この看板でのPRなんですね。

 木次線には近年、大きな外的活性化の要因はありません。島根県では「トワイライトエクスプレス瑞風」宍道駅に停車し、バスで雲南市を観光してくれますが、木次線とは直接の関係はありません。同じ島根県を通る三江線が廃止された今、平均通過人員の少ない路線として、木次線が大きくクローズアップされることになってきます。沿線の危機感は大きいものがあります。

 木次線は、三江線の東側で、山陰本線の宍道駅(島根県松江市)と中国山地の山中にある備後落合駅(広島県庄原市)を結ぶ全長81.9kmの路線です。鉄道ファンには、出雲坂根駅「三段式スイッチバック」でよく知られています。春から秋までは、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が走りますね。途中駅の亀嵩駅は、松本清張の小説『砂の器』に重要地点として登場します。地域輸送だけではなく、観光客も訪れる路線です。2016年は木次線の前身、簸上(ひかみ)鉄道が開業して100周年。2017年は国鉄による木次線全通から80周年。2018年は「おろち号」の運行開始から20周年になる。この3年連続の記念周年を活かして、沿線の人々に木次線の価値を再認識してもらういろいろな試みが行われているところです。おろち号」の運行開始20周年はおめでたいことです。とはいえ、使用車両の老朽化が懸念され、2016年の全般検査こそクリアできましたが、機関車・客車とも3年後の検査に合格できる可能性は低いといいます。安全と走行に必要な部品が壊れた場合、交換用部品の入手が難しくなっているのです。もし、致命的な故障が発生したら、3年を待たずに運行不能になるかもしれません。つまり、木次線「路線存続の危機」と、集客の頼みの綱「トロッコ列車の危機」を同時期に抱えてしまったわけです。

 そんな中で、大好きな西村京太郎先生は、昨年1月十津川警部シリーズとして、『出雲伝説と木次線』(ジョイノベルス)を刊行されました。神話の里を走るJR木次線の列車がトレインジャックされるという大胆な物語です。出雲大東駅を管理する市民団体「つむぎ」の南波由美子代表らは、木次線を題材にした作品を執筆した西村先生に感謝しようと3月下旬に、神奈川県湯河原町の自宅を訪ねました。予想もしなかった訪問に喜んだ西村先生は、木次線のトロッコ列車「奥出雲おろち号」三段スイッチバックを有効活用し、乗客を呼び込む方策を提案し、路線の活性化と存続を目指す南波さんたちを勇気づけました。3月末の三江線廃止に伴い、木次線を守ろうとする機運も高まっています。雲南市議会は「人ごとではない」と危機感を強め、超党派の市議22人全員で、利用増を図る「木次線活性化促進議員連盟」を立ち上げました。さらに、三刀屋高校掛合分校では、山陽方面行きの遠足を見直し、全校生徒70人が「おろち号」に乗車しました。大半が初めてで、生徒たちは「車窓から眺める田んぼや斐伊川の景色が新鮮」と笑顔だったとのこと。見直しのきっかけは「地元の魅力再発見」でした。「ローカル線はどこも大変だけれど、木次線は頑張って。応援している」西村京太郎先生もエールを送っています。西村先生は、経営改善のために地方で奮闘している、こうした小鉄道へも愛情あふれた優しい視線を注いでおられます。2018年以降でも『広島電鉄殺人事件』『西から来た死体 錦川鉄道殺人事件』『ステーブ列車殺人事件』『能都花嫁列車殺人事件』『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』『十津川警部 長崎路面電車と坂本龍馬』『知覧と指宿枕崎線』『十津川警部 怒りと悲しみのしなの鉄道』『富山鉄道殺人事件』『えちごトキめき鉄道殺人事件』などがあります。作品の中でも、優しい目でこれを取り上げておられるのです。

▲松江「今井書店」センター店にて

 本作品は2018年1月にジョイ・ノベルスから刊行されたもので、文芸WEBマガジン「Webジェイ・ノベル」で2017年4月~10月まで連載されたものです。私も知らなかった出雲神話の歴史が数々登場しました。

 旅行作家の高木英介は、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治したという出雲神話に彩られた木次線の取材にやって来ていた。木次線は、最初は木炭運搬のために開通された路線だが、木炭需要の減少に伴い、日本海と瀬戸内海を繋ぐ陰陽連絡線として利用された。その後、伯備線の開通によって廃線に追い込まれたが、観光路線として復活。連結されたトロッコ車両と、急峻な斜面を登る三段スイッチバックが有名だ。高木は途中で降りた出雲横田駅に置かれていた「旅のノート」の最後のページに書かれていた「奥出雲で盛大な花火を打ち上げる」という意味深な文章を見つけた。その後、休暇を利用してやって来た亀井刑事親子が乗る木次線の列車がジャックされた。犯人の要求は、「大和朝廷によって歪められた出雲の歴史を正せ」というものだった。まずその手始めに、出雲にあるオオクニヌシノミコトを祀る神社よりも多いスサノオを祀る神社60社を潰せ、さもなくば人質は全員死ぬ、という耳を疑う要求をしてきた。本来ならば島根県警か鉄道警察隊が担当するが、亀井刑事が同乗しているということで急遽現場に駆けつけた。人質60人の運命は?出雲の深遠な古代歴史が絡んだ今回の事件はどのような決着をみせるのか?

 それにしても、鉄道マニアの息子と亀井刑事が電車に乗るとよく事件に巻き込まれますね。これではのんびりと旅行にも行けない、と西村先生に愚痴っていることかもしれません〔笑〕。❤❤❤

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