787系特急電車

 1992(平成4)年夏、鹿児島本線博多~西鹿児島間に、日本中をアッと言わせた列車が登場しました。それが、外側をグレーメタリックで装ったこの787系特急「つばめ」です。かつて東海道・山陽線で華形とも言える特急列車名だったものです。17年ぶりに復活させたもので(4代目「つばめ」です)、JR初の特急型車両783系の登場や、赤一色に塗られた485系など、人々の度肝を抜いてきたJR九州でしたが、この列車は、それを遙かに凌駕するものに仕上がっていました。デザインは、ドーンデザイン研究所」水戸岡鋭治(みとおかえいじ)先生が担当。「動くホテル」を目指して設計され、より快適で楽しめる車両を目指しました。列車に乗っているときも旅なんだ、単なる移動の手段としての乗り物ではなく、車内で楽しく過ごせる列車があるといい」という水戸岡先生の思いが、デザインにはっきり表れた電車でした。ステンレス鋼製の783系とは異なり、普通鋼製です(屋根上のような腐食しやすい箇所にはステンレス鋼を使っています)。 外装・内装共にメタリック調であり、高級感と近未来感を我々に与えますね。外観は、精悍な顔つきの先頭部とメタリックなダークグレーの塗装が採用されました。ファミリーのために6人用、4人用の個室も用意。これらの席には、木製の大型テーブルを備えました。さらに、当時は在来線からほとんど消えていたビュッフェ(食堂車)も連結していましたが、新幹線開業後の運転区間短縮を見越して、普通座席車に改造されてしまいました。その他、客室乗務員「つばめレディ」が乗り込み、お客様に快適なサービスを提供し(制服のデザインも水戸岡先生が全部やっておられます)、車両性能の方も最高時速130km/hを誇りました。

 その後、門司港・博多~熊本間の特急「有明」にも投入され増発。他に特急「かいおう」「きらめき」などで運用を開始しました。一時的に長崎本線の特急「かもめ」に投入されたこともあります。また、九州新幹線(八代~鹿児島中央)開業に伴い、「つばめ」の名前は新幹線に譲り、旧「つばめ」は博多~新八代を走る特急「リレーつばめ」に運用されました。塗装をツートングレーからダークグレーに変更し、レタリングも控えめに変更しました。なお、有明」用車両もベース色のダークグレー化が行われました。ちなみに、2005年10月からグリーン車を越える快適さの、DXグリーン席の連結を開始。1列3席という広々とした空間を備え、新幹線「つばめ」と共に、当面はJR九州の看板列車として活躍を続けそうです。2011(平成23)年3月12日の九州新幹線開業以後は、リレーつばめ」の廃止に伴い運用に大幅な余裕ができたために、特急「有明」「かもめ」「にちりん」「きりしま」「ひゅうが」など九州全土で使用され(AROUND THE KYUSHU)、各地に本格的に進出しました。斬新なフォルムは、登場後20年以上が経過した今でも色あせることはありません。ブルネル賞大賞ブルーリボン賞を受賞しています。

 JR九州の特急列車といえば、デッキ設備に対する比重を大きく取るイメージを持っています。この系列もご他聞に漏れず、デッキはかなりのスペースとなっており、青や赤、緑等原色を多用したメタリックな空間が広がります。この頃はJR九州のバブルだったと言えますね。とてもお金がかかっていそうです。私が初めてこの787系列車に乗ったのは、鹿児島中央駅から宮崎駅に向かう、特急「きりしま」でした。その後、長崎への特急「かもめ」でも何回か乗っています。私の夢は全国津々浦々の特急列車を制覇することなんです。

     上の写真からも分かるように、荷物棚は、ちょうど飛行機の荷物を入れる棚のような、ふた付きのハットラック方式を採用しています。その頃はまだハットラック方式の車両は少なかったので、「利用者がとまどうのではないか?」との心配が、JR九州からも、車両メーカーからも上がりました。水戸岡先生「視覚のうえでの静けさ」を主張して、この方式が採用されました。⇒水戸岡先生の主張はコチラ  また、トイレに臭気対策に効果のある「真空吸引方式」を初めて取り入れたのもこの電車でした。ボタンを押すとシュポッという音とともに、排泄物が一気に消え去ります。あれは、圧縮空気が排泄物を一気に汚水タンクへと吸引してくれているのです。1回の使用で使われる水の量はわずか200ミリリットル程度で、コップ一杯の水よりも少ない量で、排泄物を見事に流し去ってくれるのです。こうした鉄道のトイレ事情」については、最近私がまとめていますので、コチラをご覧ください。

 水戸岡鋭治先生『ぼくはつばめのデザイナー』(講談社青い鳥文庫、2014年)には、この787系電車誕生の裏話が載っていました。JR九州から787系電車をデザインして欲しい、と依頼があったときに、不安を抱えた水戸岡先生は、師匠と尊敬するデザイナーさんに相談に出かけます。そこでいただいたアドバイスが、段取りをちゃんとおやりなさい。みんなが気持ちのうえで、ひとつの家族のようになれる場をもちましょう。最初に社長にキックオフ会議を招集してもらうんです。JR九州の車両、運転、営業の担当者はもとより、車両メーカーから織物メーカーから何から何まで、関係する会社の担当者の全員に、1か所に集まってもらって、顔合わせの会議をするんですよ」 そして半月後、70人ほどが、ホテル海の中道」に結集し、水戸岡先生は、たどたどしくも己の思いを一生懸命説明しました。大勢の人々が力を合わせて、新しい大きな仕事に取り組むときに、「プロジェクト」に参加する人たち全員の心と心が通じ合っているかどうか、一つになって燃えているかどうか、それが成功の鍵を握っている、ということを実感したと水戸岡先生は言います。例えば、車両メーカーでは、787系の製造にあたって、車内の工事をするとき、作業員はヘルメットを頭からとって、腰の金物類も全部はずして車内に入ってくれたそうです。ヘルメットでいろいろなところに頭をぶつけて、車内のあちこちを傷めたりすることのないようにとの配慮からです。それだけすごい車両が出来上がりつつあることを、みんなが感じていたんですね。❤❤❤

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