be familiar with~を考える

  We are familiar with the song. 私たちはその歌をよく知っています

 ある参考書に出ている用例です。be familiar with~=「~をよく知っている」といった、不用意な理解をしておられる先生方がかなりおられます。私も高校時代は先生からそう習い、そのような理解をしていました。いつもは信頼のおける『ロングマン現代英語辞典』(LDCE)も(他の辞典同様)そのように書いてありますから、仕方のないところかもしれません。このことは、今でも生徒たちが使うほとんどの単語集や熟語集や参考書にも、そのように書いてあるから当然かもしれません(ユメタン』(「~に精通している」など、とんでもない理解です)しかり、システム英熟語』しかり)。しかし、これは正確な理解ではありません。この表現は、”I have heard it before and remember it”くらいの意味で、「私たちはその歌を何回か聞いたことがあります」と訳すべきものです。必ずしも「よく知っている」という意味ではありません(=a person has some knowledge about something, not necessarily that he knows it well) ネイティブの語感を捉えた正確な定義は、次のようなものです。

having some knowledge about (something) : We are familiar with the situation.(=we know about the situation)   [Merriam-Webster’s Advanced Learner’s English Dictionary]

 私たちの『ライトハウス英和辞典』(研究社)では、「必ずしも詳しく知っていることは意味しない」と注記をしていますね。私たちの最新の『コンパスローズ英和辞典』(研究社、2018年)では「この意味では1と違って必ずしも詳しく知っていることは意味しない。疑問文・否定文で使われることが多い」と記述しています。この中で、私たちが必ずしも」と断っている意味は、後に挙げる編集顧問・故・D.ボリンジャー博士のコメントの後半をお読みいただけると、お分かりになると思います。普通の理解は「~をよく知っている」ではありません。

 ところが厄介なことに、It was a familiar song.は「それはよく知っている歌だった」(=It was a song I knew very well)という意味になります。この意味をそのまま上に当てはめてしまったために起こった誤解だと思われます。英語も一筋縄ではいきませんね。念のために故・ボリンジャー博士の見解を紹介しておきます。いつもながらに、博士らしい言語観察の鋭い指摘が見られます。1つ1つの項目に関して、こうやって博士の裏付けをとって、私たちの記述を正確なものにしていきました。

    I can say that I am familiar with something if I have barely more than an indexical knowledge of it―enough to know where to turn to find out more. I believe that most Americans would agree that it does not imply intimate knowledge.  Oddly, however, when intensified with quite it does imply intimate knowledge : I’m quite familiar with that. And it does not exclude intimate knowledge : Are you familiar with that ?―Yes.―How familiar―really familiar?

    On the other hand, a familiar song is a song that is known well, just as a familiar fact is one that practically everyone knows.

 ここまでお読みいただければ、ウィズダム英和辞典』(三省堂、第4版、2018年)に見られる、次のような書き換えがナンセンスであることは自明ですね。

I’m familiar with his work. ≒ His work is familiar to me.   彼の仕事はよく知っているよ。

 さらに、be familiar with~の後に人が続く場合、単なる親しさではなく、馴れ馴れしく度を超した不快な親しさを表すこともあり(文脈に依存するところが大きいが)、tooの修飾を受けることが多い、という赤野(1985)のコーパスからの指摘も心に留めておいてよいでしょう。このように理解が不十分な表現が、現場には数多く見られるんです(In fact/ After all/ Indeed/ Actually/be willing to V/on good terms with~などをすぐに挙げることができます)。いつまでたっても負の連鎖は消えません。♠♠♠

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