私は鉄道大好き人間でしてね(乗り鉄、撮り鉄)、「全国の特急列車を制覇する」という途方もない夢を抱いています。各地で特急列車に乗るたびに、路線一覧表に×印をつけていっているんです。果たして夢の達成はいつのことになりますやら〔笑〕。
今日はかつての「エル特急」について考えてみたいと思います。「L特急」というのは、在来線の一部の昼行特急の呼称でした。時刻表や方向幕などに、列車名と共に、「L」の字を図案化したマークが冠せられていましたね。イラスト入りマークが使用された列車の場合、イラスト内にマークが添えられていました。1972年(昭和47年)10月のダイヤ改正時に新しく導入されたものです。 当時の国鉄はすでに赤字経営でその財政状況が一段と深刻化する危機を迎えていました。収入確保への要請に、営業部門の総力をあげて開発されたのが「L特急」という商品でした。特徴としては、導入当時のキャッチフレーズから取ると「数自慢、カッリキ発車、自由席」でした。
●「数自慢」:本数が多い。よほどの大幹線以外は1日1~2往復程度の設定だったのが、1~2時間に1本レベルまで増発された。
●「カッキリ発車」:発車時間(と間隔)を揃え、覚えやすい時刻にする。複線化・電化等の輸送改善の進行で交換・追い越しの制約が減っていく中で実現可能となった。
●「自由席」:文字通り。それまでは全車指定席が原則であったが座席指定の手間なしに、やって来た列車にそのまま乗れる。自由席特急券付の回数券を発売するなどの売り込み戦略も取られた。
などの、いつでも気軽に利用しやすい条件を備えた特急、端的に言えば「在来線における新幹線的な運行をされる列車」を示す呼称として用いられていたんです。1970~80年代にはダイヤ改正の度に、増発や急行からの格上げ、新幹線接続路線での列車体系見直し等で、「L特急」に指定される列車は増え続けました。
商品特性としては、およそ次のようなものです。
①等時隔(120分間隔以内)ネットダイヤ方式の特急列車群であること。
②自由席車が用意されていること。
③発車時分を極力統一、始発駅では0分、30分のようなわかりやすい発車時分とすること。
④途中停車駅も統一もしくは何パターンかに揃えること。
しかし、Lの付かない特急列車と実質的な差はなく(料金体系も基本的に同じ。また、1982年11月ダイヤ改正までに殆ど全ての昼行特急に自由席が設けられ、その意味でも違いはなくなった)、ほとんどの幹線で有料の優等列車が特急に統一されていったことや、新幹線延伸による並行在来線からの移行が進んだこと、そして分割民営化後のJR各社における運用が次第に異なっていったために、その呼称自体が形骸化していきました。2000年代に入るとJR東日本(2002年)、JR九州(2008年)、JR西日本(2010年)、JR四国(2011年)で順次、「L特急」の呼称は廃止あるいは使用中止されていきました。JR北海道は「自由席が多く、運行区間が短い」列車を「L特急」として使い分けていました(実質札幌近郊の電車特急を気動車特急群と区別する扱い)が、2017年3月改正で「特急」に変更し、「L特急」の呼称を廃止しました。この時点で「L特急」を名乗る列車はJR東海の在来線区間を走る「しなの」「ひだ」「しらさぎ」の3列車のみとなりましたが、この3列車も2018年3月改正で「L特急」の呼称を廃止することがJR東海より発表され、同改正をもって、「L特急」の呼称は時刻表からすべて消滅したわけです。
◎どうして「L」だったのか?
現在、伯備線を走っている特急「やくも」号(気動車で指定された最初のL特急)のヘッドマークには、どういうわけか、いまだに廃止されたはずの「L」の文字が残っていますね(写真上)。「エル特急」の「エル」は、新しい感覚で『快適な列車』のイメージを、これから作り出してゆこうという狙いをもって名付けたブランドネームです。新幹線の代表車両0系をイメージした「L」(0系のシルエットを描く、下写真参照)が適当ということになり、ここからLとなりました。またLは「Lovely」(愛らしい)、 「Little」(かわいい)、 英語名「Limited Express」にもつながる名称で、この列車の利用促進にふさわしいと考えられました。「L特急」の名付け親であるJR東海相談役・須田 寛さんの話です。『旅と鉄道』の2018年増刊5月号「ありがとうエル特急~45年の軌跡のすべて」という特集に出ていました。❤❤❤
