渡部昇一先生のエピソード(5)

◎落ち込んだ時にはどうするか??

 人間どうしようもなく憂鬱で落ち込んでしまうことがあります。しかしいつまでも落ち込んでいるわけにはいきません。いかにしてそこから自分をいい状態に持って行くかという、その方法を知っておくことが重要でしょう。

 渡部昇一先生も、大学時代に極端に落ち込んだことがありました。そんな時に、郷里(山形)渡部先生の安らぎになったそうです。育った温かい家庭、父母兄弟が疲れた神経を癒やしてくれたそうです。帰るだけでホッとしたと言います。夏・正月・春と、年3回休暇ごとに必ず帰省(転地療養?)していたそうです。もっとも帰っても、何かを親兄弟に話すわけではありません。大学で何をしているか、どう悩もうと全然噛み合わない世界ですから、何も喋らない。ただぶらぶらとして、好きな本を読んだり、親の仕事をちょっと手伝ったり、そんなことをやっているだけでした。とにかく温かく迎えてくれるのが嬉しかったと言います。そういう生活に浸っていると、自分が大学とか何とかでいろいろと心配して悩んでいるのは贅沢病だな、と思えてきたそうです。それなら田舎に帰って田んぼでも耕していればいい。やっぱり自分の悩みは贅沢病だと、人生が別に見えてきたと言います。落ち込んだ時には、そういう場所へ戻ってみることを、渡部先生は勧めておられました。

 渡部先生も田舎の山形から上智大学に入学した五月頃には、新しい環境に入って精神的にがっくりくることを経験したと言います。当時の上智大学は私塾みたいなところで、そこを出たところで未来が開けるような職業に就く可能性はゼロに近い。やっぱり自分は第一志望だった教育大学(高等師範学校)を受け直すべきだったろうか、なんていうことをアレコレと考える。そうすると本当に人に会うのが嫌になってきたと言います。そこで渡部先生は、田舎に帰って恩師の佐藤順太先生の所へ出かけたそうです。そこで学問の話をたっぷり聞かされる。「伊勢物語」というのはやっぱり藤井高尚の版で読まなければいかん、とおっしゃって持ち出して来られる。田舎で自分の商売に関係なく、「伊勢物語」の話をされる佐藤先生を見ていると、自分の恵まれた環境を有り難く思わないとバチが当たるような気がしてきたと言います。落ち込んだ状態から脱する方法を相談しようと身構えていると、自分よりもはるかに落ち込んだ男の話を先生がされる、あの男は自殺しそうですな、と。そうすると、もう自分の話なんか出来なくなってくるわけです。若い時というのは、実に物事を知らない、あきれかえるほど無知なものです。人生を深く見てきた人と話をすることは、無限の慰めとなり、立ち直るきっかけを与えてくれた、と渡部先生は回想しておられます。

     落ち込んでいる時というのは、自分が世界の誰よりも不幸な人間だと思い込んでいます。昔の偉人の話を読ことが、渡部先生はずいぶんと救いになったと言います。よく引かれるのが、日露戦争のときの乃木希典(のぎまれすけ)大将の話です。乃木家には、子どもは男の子が二人しかいませんでした。長男の勝典は南山の戦いですでに死んでいます。そして旅順を攻撃している時に、保典という次男も戦死することになります。その夜、乃木大将は司令部のテントの中でランプを灯して地図を見ながら攻撃の作戦を練っていました。そこへ参謀がおそるおそる入ってきて、ただいま前線からの連絡によれば、保典少尉殿が戦死されました」と報告をします。すると乃木大将は「そうか」と言って、ランプをひねって薄暗くした、といいます。そして、しばらくしてまたランプをつけて、あとは何事もなかったかのように明日の作戦を考えた、といいます。参謀には分かりました。乃木大将も涙が出たんだ、その涙が乾く間、ランプをそっと消したんだ。そこに乃木大将の親心と心得を見た思いがしたそうです。息子を失った悲しみは大きいけれど、大将としてはいつまでもグズグズしているわけにはいかない。ランプをちょっと薄暗くして瞑目した。この話を読んで、渡部先生は本当に胸が熱くなったといいます。なんと自分の悩みはちっぽけなんだ、と。昔の偉人伝を読と、必ず何か生きる手がかりがつかめてくると、渡部先生は勧めておられました。

 最後に渡部先生が強調されるのは、志を大きく持つ」ということです。『キング』(講談社)という雑誌に載っていた話ですが、日露戦争以前に、冬のシベリアをたった一人で馬で横断した福島中佐というすごい人がいたそうです。当時日本はロシアと戦争になることが予想されていましたから、何が何でもロシアの地形を知ろう、そのためには死んだって構わないという意気込みだったといいます。福島中佐はなぜそんな壮挙ができたのかというと、ただ今日一日を歩こうと思っただけだといいます。あと何日歩かなければならない、などと考えていたら出来なかっただろう。とにかく今日一日きっちりと歩いて、そしてまた明日になったら一日歩く。今日一日だけ馬が倒れないように、吹雪に巻き込まれないようにと思って歩いたそうです。シベリアを横断するという大目的を立てる、そして目的に向かって歩き始めたら、とにかくその日一日前進することだけに集中する。不安や疑問の材料になることは一切考えない。そうやって歩いたからこそ成功できたといいます。その目的だけを念頭に置き、それ以外のことには目もくれない、クヨクヨしない。志を立てたら、そのプロセスの進捗後退には気にとめない、これこそが悩みを一掃する精神安定法だと、渡部先生は説いておられました。今日は、落ち込んでいるあなたを救ってくれる「渡部流4つの方法」を述べました。次の4つです。❤❤❤

①郷里に戻って温かく迎えてもらう。

②人生の達人の深い話を聞く。

③スケールの大きい偉人の話を読む。

④自らの志を大きく持つ。

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