「文法はやらなくてよい」か?!

 新しく始まろうとしている「共通テスト」の英語においては、従来のような「発音・アクセント問題」も出なければ、「文法・語法問題」も一切出題されません。これを受けて現場では、従来やっていた文法指導はいっさいいらなくなるのでは?などというぶっそうな意見を吐く先生が(出版社も)います。文法はやらなくてもいい!」「文法軽視!」 とんでもない話です。今までに2回行われた「試行テスト」問題をよ~く分析してみると、このような考えが全く当たらないということが分かってきます。私が、8月31日(土)のーンズ講演会(東京・仙台・名古屋・大阪・博多)でも取り上げた例を出してみましょうか。

★この1年でalmostが4回も出題された!!

 まず今年度の「センター本試験」の第2問Aの問3に、次のような問題が出題されていましたね。「基本語almostの使い方は分かっていますか?」という問いかけです。かなりの受験生が間違えた問題です。よく見る単語でも、その正確な意味が案外分かっていないことが判明しました。

After (    10    ) dropping the expensive glass vase, James decided not to touch any other objects in the store.

    ① almost                    ② at most                    ③ most                ④ mostly

 「もうちょっとのところで高価なガラスの花瓶を落としそうになって、ジェームズは、店にあるその他の物に一切ふれずにおこうと決めた」という文章で、almostを埋める問題です。almostが「もう少しで~」という意味であることをきちんと把握していて初めて解ける問題でした。「ある動作をもう少しの所でやりそうになるが、結局はやらない」「ある状態にもう少しの所で達しそうになるが結局は達しない」という意味を持った単語がalmostです。ところが受験生のほとんどは日本語で「ほとんど」と覚えているので、この単語の意味するところを正確に掴むのが難しいのです。実際に、今年のセンター試験で、この問題の正答率は、ベネッセ調査で44.9%、河合塾の調べでも43.9%と低い結果が出ています。「基本語の理解」を問う良問です。

 実は、そのちょっと前の2018年11月に行われた第2回目の「試行テスト」の「リーディング」においても、第4問において、Surprisingly, we almost won, which was amazing as there were 20 entries in the competition.(驚いたことに、私たちはもう少しのところで優勝でした。カラオケ大会には20組が出場していたので、そのことは素晴らしいことでした)という英文を読んで、表彰台のイラストを参照しつつ、正解の「2位」となったことを選ぶ問題が出題されています(正答率64.5%)。さらには、第6問Bでは、By the 1940s, however, wolves had almost disappeared from Yellowstone National Park.「オオカミはもうちょっとのところで絶滅するところだった(→完全には絶滅しなかった)」とalmost用法が出題されています。また2018年2月第1回の「試行テスト」の「リスニング」においてもalmostの用法が問われていました。The boy is almost as tall as his father.の英文の内容に最も近い絵を選ぶ問題です。単語集などに出ているようなalmost「ほとんど」と覚えていると、正しい選択に苦労します(正答率9.9%とほぼ全滅状態)。「ちょっと足りない」というイメージで押さえておかないといけない単語です。

 これほど短期間の間に、4度も立て続けにalmostの用法が問われる、ということの意味を真剣に考えてみなくてはいけないと思います。間違いなくそこには、大学入試センター」の、現場に対するメッセージが込められていると私は見ています。基本語は実際に使えるレベルにまで習熟しておきなさいよということです。

 もういくつか類例を見てみましょう。「試行テスト」の「リスニング」で文法が問われています。The man is going to have his house painted.という英文を聞いて、その内容を表す選択肢のイラストを選ぶ問題も「男性は自分の家を塗装してもらうつもりだ」という「have+目的語+V-ed」が分かっていないと間違えてしまいます(正答率A:13.3% B:14.5%)。また、When the boy entered the classroom, the teacher had already started the lesson.(少年が教室に入った時、先生はすでに授業を始めていた)の内容を表すイラストを選ぶ問題も、 過去よりも前の過去完了」を正しく理解していないと、外してしまいますね。

 要するに、従来のような「文法のための文法」といった出題はなくなるものの、英文をきちんと読み解くための文法」は絶対に必要です。文法に対する視点が変わるということなんです。❤❤❤

 

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