「働く」というのは、「傍(はた)」の人を「楽(らく)」にするためにするものだ、というのは有名な喩えです。周りの人を楽にすることが仕事なんです。そのために、どのような働き方で毎日を過ごすのかということが問われますね。「私の生き方の哲学はGive and Giveです」と、先日の講演会(東京・仙台・名古屋・大阪・博多)で申し上げたところ、数多くの先生方からアンケートやメールで、「感銘を受けた」と共感が寄せられました。退職金をはたいて、生徒たちのために自主教材を作っているのも、作った教材を先生方に惜しみなく提供しているのもその一つです。
●素晴らしいお話で感動しました。Give and Giveですばらしい成果をあげられている先生のすばらしいものを生徒にも伝えていきたいと思います。
●大変参考になる内容ばかりで、勉強になりました。長年のご経験で作られた様々な教材をgive and giveの精神で提供されておりありがたく思います。
●先生のおっしゃる“Give and Give” 感銘いたしました。
●“Give and Give”有り難うございます。先生の講演に毎年勇気を頂いています。
他の人との関わり方は、次の4つ(①~④)が考えられます。
①「Take and Take」
自己中心的な生き方で、自分さえよければそれでよい、相手からはもらうことしか考えていません。この生き方ではだれからも相手にされることはないでしょう。厚かましく、相手のことは眼中にありません。
②「Take and Give」
基本は相手からもらうこと、に視点がある生き方で、ちょっとだけお返しもするけれど、やはり①と同じでいけません。まず自分のことを常に考えています。
③「Give and Take」
自分から相手に与える、そして相手に与える分は、相手からもいただこうとする考え方。ほとんどの人はこの生き方でしょう。①②に比べて少し進歩はしていますが、常にもらうことが心の隅に渦巻いている気がします。TAKEを目指してGIVEしているのであれば、あさましくちょっと嫌な気がします。人様にGIVEをして、もしご縁があれば自分もTAKEする機会があるかもしれない、くらいの考えでいたいですね。
④「Give and Give」
見返りを求めない生き方。自分で役に立つことは何でも相手にしてあげよう。相手を喜ばすことに力点を置く「利他」の生き方です。周りの人の幸せや社会への貢献を考えるならば、TAKEなどはなくても構いません。
私も若い頃は、①②③で生きていた時代もありましたが、もう一時からは徹底して④の生き方を実践しています。不思議なもので、「利他」の生き方で相手に喜んでもらっていると、思いもかけないところから返ってくるみたいですよ。自分にできる範囲で、④の生き方を心がけたいですね。人様にGIVEする気持ちがあれば、幸せな気持ちを感じることができますよ。自分自身のことだけを考えるのではなく、他の人や組織や社会の人たちの幸せを願うと、不思議と自らが幸せになれるのです。「利他」の精神が自分の幸福度を高めてくれるのです。私がこのような考えを実践するきっかけになったのは、稲盛和夫(いなもりかずお)さんの著書を読むようになってからです。(⇒コチラ)よ~く考えてみるに、「親の愛」は間違いなく④の生き方ですね。子どもを慈しんで、あれもしてやりたい、これもしてやりたい、決して見返りを求めません。子どもの幸せだけを願っています。こうやって優しさの中で育った子ども達は、何も言われなくても親に恩返しをするようになりますね。
「Give and Give」で生きていると、もちろんだまされることもあります。私もずいぶん人にだまされて辛い思いをしたことが何度もあります。でも「だます」より「だまされる」方が人間的に魅力的だ、とおっしゃっておられたのが、尊敬する故・ジャイアント馬場さんでした。
たとえば、オレの場合は、自分でできる約束しかしない。できる約束かどうかを見極めて、できない約束はしないことにしてるね。できない約束なんて約束じゃないと思うな。だから、変な話かもしれないが、人と待ち合わせの約束をしたら、絶対に相手を待たせないとかね。お金に関しても同じで、払えない金額をいくらいってもしょうがない。相手を裏切ることだし、結果的には信用をなくしてしまうからね。
やっぱりね、人生で一番大事なのは人間関係だろうな。自分で決めたルールではないが、自分から他人をだましたことはない。だますよりだまされた方がいいよ。だますヤツには魅力はないけど、だまされるヤツには魅力がある。オレが思うには、絶対に他人にだまされないヤツって、よっぽど警戒心が強く、猜疑心が強いヤツでね。そんな人間に魅力は感じないね、オレは。これはオレの性格なんだろうね。裏切られたらオレは、その人間を許さない。性格上そんな人間とは二度と付き合いたくないからね。別に潔癖症ではないけど(笑)。さっき言ったように約束したらきちんと守るといったようにね。できない約束ならしない方が楽だとオレは思うしね。 (馬場さんインタビュー、下線は八幡)