渡部昇一先生のエピソード(7)~大嫌いな先生

 尊敬する偉大な故・渡部昇一先生の、あまり世間には知られていない思い出を、1回1回取り上げてきました。過去のブログと、先生の「全著作目録」については、最近も書きました。⇒コチラです  今回は先生の幼い頃の嫌な思い出です。

◎大嫌いな先生

 数多くの先生にかわいがられた渡部昇一先生も、人生でたった2人だけ大嫌いな先生がおられました。小学校と中学校のことです。

 渡部家の家族はみんな字が上手でした。特にお父さんはかなりの達筆でしたし、お姉さんは習字はいつも金賞で、学校以外に地区でも金賞をもらい家には賞状の入った額がいっぱいありました。ところが渡部先生だけが字が下手くそだったんです。その原因は、小学校で初めて習字の清書を出せと言われたときに、「清書」という言葉を聞き落としてしまったことにあります。当時は紙はまだ貴重品でした。習字も同じ紙に何度も何度も書いたものでした。それを渡部先生はそのまま提出してしまったのです。一目見れば清書でないことは明らかなのに、渡部君、これはもう一回書き直しなさい」という一言も言ってくれない意地の悪い先生でした。最悪の評価を受けます。子供ながらに、ひどい恥をかいた、という傷がトラウマのように先生には残ったのです。このことがあって以来、その女性の先生は嫌な先生(~小学校三年生)になりましたし、ずっと習字が下手になってしまったのです。小学校の先生のたった一言がなかったばかりにつまずいた経験でした。

 渡部先生は、後年、エジンバラから研究を終えて帰国した時に、なにがなんでも字をうまくなりたいと決意されます。自分が書道の先生のところに通うやり方だと、忙しい先生は挫折してしまいかねないので、先生に自宅に教えに来てもらうことにしました。月謝制ですから、たとえこちらの都合が悪くて休んで、月に一回も習わなくても月謝だけは払わなければいけません。この取り決めが良かった、と回想しておられます。30年以上もプロの先生について月に三回ほど習ったので、上手になられました。いつも先生からいただくお手紙の最後には達筆で「渡部昇一」と名前が書いてありました。私が退職した時には、あの達筆でねぎらいのことばが綴ってありました。私の「家宝」です。

 嫌いな先生のもう一人は、旧制鶴岡中学校の英語の先生です。英語の授業がつまらなかったので、授業中に先生が大好きだった『名作主水捕物帖』を、机の下で読んでいました(当時の先生は『右門捕物帖』『銭形平次捕物控』といった捕物帳を読みふけっておられました)。これが見つかって「何やってんだ!」とガンと殴られました。これは授業ですから仕方がないでしょう。ところが、昼休み時間中、弁当の時間に『少年講談』「三好清海入道」を読んでいたら、するとあの教師が目ざとく見つけて、「その本を持って来い」と怒られます。教室の前に正座させられて、ぶん殴られ、学校を辞めろ、とまで言われました。これはもう注意や怒りではなく憎しみ以外の何者でもありませんでした。生意気に見えたのでしょうか、この先生には目の敵にされて憎まれていたようです。持ち物の全校一斉検査では、先生が自分で持っていた本から友人に貸してあった本まで全部取り上げられました。それらは職員室の前に山のように積み上げられました。これは昭和18年の出来事ですから、新刊書などは出なくなった時代です。中には先生たちが読みたい本もいっぱいあったことでしょう。いつの間にか職員室の前からその本の山が消えたと言います。みんな先生たちが自分の家に持ち帰ってしまったのです。戦後その本のうちの一部が古本屋に出て、渡部先生は買い戻しておられます〔笑〕。この中学校の先生は「本を読むこと」を憎んでいました。教科書以外は本を読むこと自体を憎んでいました。きっと読書をしない、読書の価値も分からない先生だったのでしょう。本を読むことじたいが悪い、などと考える人がいるなんてことは、小学校卒業まで渡部先生は想像だにしていませんでした。小学校よりも中学校は自由になるはずだったのに、実際は逆だったのでした。この先生だけは合わなかったようで、おかげで学校は嫌いになるわ、英語は嫌いになるわで、一学期の中間試験では英語は赤座布団(落第点の課目には赤線が引かれ「赤座布団」として怖れられました)でした。期末試験ではなんとか挽回しましたが…。

 当時の鶴岡中学には、粗末な先生が多かったと渡部先生は回想しておられます。戦後に、校長先生が「この中学の進学率が悪いのは、必ずしも君たちが悪いわけではない」と生徒の前で明言して、教員の質の悪いことを認められたことを、先生ははっきり覚えておられます。思い起こしてみても、よくあれで務まったなという先生がかなりいたのは事実のようです。❤❤❤

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