『隈研吾の魅力』

 最近完成した「国立競技場」の設計にあたった建築家の隈 研吾(くま けんご)さん(東京大学教授)。私と同い年なんですね。木材を使うなど「和」をイメージしたデザインが特徴的で、「和の大家」とも称されます。安藤忠雄(あんどうただお)さんのコンクリート建築も大好きですが、さんの木の魅力を最大限生かした建築も大好きです。最近、そんなさんの建築の魅力の秘密を明かした本が出て、面白く読みました。田實 碧『旅する建築家 隈研吾の魅力』(双葉社、2019年11月)です。世界20カ国以上のプロジェクトを手がけ、伝統文化を継承し、自然環境に調和する「負ける建築」を提唱する、さんの魅力に迫る好著でした。「負ける建築」というのは、その地の環境や文化に溶け込む、優しくて柔らかなデザインが特徴で、自然や環境と一体化した建築を志向するもので、その場所が発する声やクライアントの言葉に耳を傾け、その地で採れた木や石などを使いながら、その地に合った建築をつくるという思想です。

 私が、さんのデザインで強烈な印象に残っているのは、「大宰府天満宮」に至る参道に沿って建つ、「スターバックス大宰府天満宮参道店」でした(⇒私の探訪記はコチラ)。間口7.5m奥行き約40mの長細い敷地を考慮して、木をななめに組み、光と風が流れるような有機的な空間を作っています。内部空間を覆い尽くすX形の木組みは、60角の1.3m~4mの杉材を約2,000本も使用して、材の全長は4kmに及びます。木組みは筋交いとして、建物を支えていて、全体を組んだ後、ジョイントをダボで縫うことにより、木組みをより硬いものとしました。太宰府という歴史ある土地と、現代的な木造技術の遭遇が、他のスターバックスとは異なるユニークな空間を生み出しています。初めて訪れた時に、この建物に衝撃を受けたのを覚えています。店舗の入口から店内にかけて、伝統的な木組み構造を用いた特徴あるデザインに圧倒されますね。店頭から木材に覆われている作りに驚かされますが、店舗内に入るともっとスゴい。なんと店舗のいたるところに木材が組まれているではないですか。入口から店内へ、木組み構造の天井と壁が続きます。店内まで続く木材の網。よく見ると少しずつ組み方が違うのが分かりますか?自然素材による伝統と現代の融合がコンセプトなのだとか。なんだか別世界に飛んでしまったかのような気持ちになりますよね。歴史ある太宰府の街並みと見事に調和しており、連日、多くの観光客が店の前で足をとめ、記念撮影を行っています。

 店舗の奥庭には、太宰府天満宮」のシンボルでもある梅の木が植えられていますね。店内もコンクリートの壁、天井に木組みが張り巡らされ、圧巻の景色です。無機質なコンクリートに木が合わさるだけでこれほどの温もりを感じられるから不思議。圧迫感がなく広々とした印象を受けます。木のぬくもりが迎えてくれている雰囲気、そしてカフェの心地いい香りがリラックスさせてくれる作りとなっていますね。2000本ものスギの木材を使用しているのですが、一切釘を打っていないそうです。というのも「太宰府天満宮」の歴史ある雰囲気を壊さないためだとのこと。木材ひとつひとつが丁寧に組まれており、美しいインテリアを表現。伝統と歴史を融合した作りには感動を覚えてしまいます。ちなみに、日本各地に現在19店舗存在する、スターバックスコーヒー「コンセプトストア」の一つです(これも全部制覇したいと狙っていますが……)。それぞれ、通常のストアとは異なるコンセプトが存在し、こだわった外観や内装がとてもオシャレです。スタバによれば、『いつものお店とは違った側面からスターバックス エクスペリエンスを提供するお店』とされており、それぞれのお店が、特徴あるデザイン、テーマを持っています。

 2年前に「さだまさし展」を見に行った時の(⇒私のレポートはコチラ)、長崎県長崎市「長崎県美術館」も素敵な隈建築でした。長崎水辺の森公園」に隣接するように位置していて、運河によって分断された2つの敷地を、美術館によって一つにつなごうとしています。敷地内中央に運河が流れ、左右に「ギャラリー棟(市民にも開放)と「美術館棟(展示室)を配置し、それらを「空中回廊」で繋いだ建物です。ふたつの建物が役割を分担していることで生まれる人の動きや、回遊性が魅力の一つとなっています。展示空間は運河に向けて開かれ、水と運河、自然とアートとを一つに融合しようとしていますね。屋上は緑に覆われ、もう一つの「緑のミュージアム」となっていました。さんの特徴でもある、縦の線が強調された外観の「ルーバー」は木製ではなく、花崗岩で作られています。印象的ながらも軽やかで、周囲の環境にうまく溶け込んでいますね。天然石独特の美しい風合いも見所の一つでしょう。ここは、さんの代表作の一つで、「グッドデザイン賞」「建築業協会賞」「日本建築家協会賞」「日本建築学会作品選奨」、イタリアの「マーブルアーキテクチュラル・アワード」など様々な賞を受賞しています。「展示空間は運河にむけて開かれ、水と運河、自然とアートをひとつに融合しようと考えた」(隈研吾建築都市設計事務所HPより)という言葉通り、建築として際立つのではなく、美術館とその周辺の自然や地形の面白みを最大限に引き出そうと計算された建物、つまりさんの言う「負ける建築」であることがわかります。❤❤❤

 

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