『広島電鉄殺人事件』

 西村京太郎先生『広島電鉄殺人事件』(新潮社、2018)が、最近文庫化され、発売されました(新潮文庫)。西村先生は、ここ数年、地方鉄道を積極的に作品に取り上げることで、苦戦する地方鉄道を応援しておられます。今、広島では一番売れているようですよ。新潮社からは、『神戸電鉄殺人事件』『琴電殺人事件』に続いて執筆されたのが本書『広島電鉄殺人事件』です。舞台になった鉄道会社は、事件で取り上げられて名前が売れて喜ぶのと、殺人事件でイメージが悪くなると思うのと、どっちが強いのでしょうね?

 最初の章に、広島市と広電の歴史が書かれているのが良いですね。1910年(明治43)に広島電機軌道として開業し、路面電車網を広島市内に広げていきました。昭和二十年、原爆投下によって十万人近い人々の命が奪われ、都市機能がストップして焼け野原になった広島市内を、原爆投下後のわずか三日後に路面電車が走っています。その姿に生き残った広島市民はどれほど勇気づけられたか分かりません。さらには、昭和三十年代後半から四十年代のモータリゼーションによる路面電車排斥の危機を乗り越えて、「軌道敷地内自動車乗り入れ禁止」という規則を作り路面電車を守ります。そして今では日本最大の路面電車を擁しています。その車両たるや、LRVから各地からの中古車まで、まさに路面電車の博物館といった様相です。広電は、日本で一番成功している路面電車と言えるかもしれません。会社も黒字経営だし、車やJRとの差別化もできているんだとか。人口が100万人を超える日本の大都市で、路面電車が市内交通の中心となっているのは広島だけです。「原爆ドーム」「厳島神社」という2つの世界遺産を結んで、観光の足の役割も果たしています。 

 広島電鉄の特集を予定している「月刊鉄道新時代」の編集長・宮本彰は若い女性カメラマンの籾山里奈を連れて広島の路面電車の取材に出かけた。籾山里奈の高校時代の友人・高橋雄介が広島電鉄で運転士として働いている。ところが、会社ではそういう社員はいないというのだ。調べていくと、市内を走る路面電車のスピードを制限速度以上に上げて走り、現在停職中だとわかった。なんとか接触をとったが、なぜスピードを上げたかは話さない。しかし、宮本たちが東京に帰る日、高橋は別れの挨拶に駅を訪れた。その後、高橋雄介は何者かに襲われて負傷する事件が発生した。その数日後、三鷹でも籾山里奈が空き巣に襲われた。殺人未遂事件として十津川警部たち捜査一課が乗り出したが、簡単な事件だと考えていた本件が、7年前に高橋雄介が捲き込まれた事件が絡んでいるように思えてきた。過去に何があったのか?政治家を巻き込んで事件は複雑な展開を見せる。はたして真実は?

広島電鉄の若い運転士が暴漢に襲われた。ライトレイルの制限速度を大きく超過する不祥事で、停職中の身だった。彼はなぜ突然速度を上げたのか? 暴行事件との関係は? やがて浮上する長野県渋温泉で発生した七年前の未解決事件。十津川警部が追う連続殺人の現場は、長野、東京から広電宮島線へ! 長編トラベルミステリー最新作。(新潮社ホームページ)

 上は、新潮社新書版のこの本のカバーの写真ですが、広島市中区・土橋町で電車が曲がる地点から撮られた写真のようです①道路に敷設した軌道(鉄道線含)の路線総延長日本一、②車輌総数日本一(298両)、③一日平均利用者数、この3点でダントツの日本一という輝かしい実績を誇ります。広島電鉄は日本最大の軌道事業者なんです。もっとも、純粋に路面電車なのは19.0kmで、広電西広島~広電宮島口の宮島線を加えて、35.1kmです。この宮島線は元々路面電車ではなく、普通の鉄道車両を使っていましたが、利便性を高めるために路面電車を市内から直通させて、鉄道車両を追いだしてしまいます。現在でもその名残は、路面電車用途鉄道用という高さの違うホームが併設されています。私がよく利用する「紙屋町町西」の電停は、一度に多くの電車が停車することからホームが非常に長いのが特徴です。「広島そごう」前の交差点では、T字形の路線配置が見られますが、これは広島港から来た電車が、宮島口へも広島駅にも行けるように配置されたものです。

 広島駅前の電停から、次々と発車していく電車はバラエティーに富んでいます。廃止になった京都市電1900形・元大坂市電2601形・元神戸市電570形・被爆からの復興のシンボル被爆電車650形もまだまだ元気です。そして近年は、ドイツからの輸入車「グリーンムーバー」(5000形 ドイツ・シーメンス社製)、そして日本の風土に合わせた国産初の超低床車両「グリーンムーバーマックス」(5100形 純国産)を走らせています。両グリーンムーバーは超低床で、老人でも乗りやすく、乗り心地も快適。これらの電車を撮影しようと、全国からカメラ小僧が集まっています。市内を路面電車の路線が網羅しています。軌道敷内は自動車乗入禁止。電車優先だからスピードは出せるのですが、時速40㎞と抑えて悠然と走ります。まさに路面電車が主役なんです。これからも路面電車文化のリーダーとして頑張って欲しいものです。♥♥♥

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