観光特急「花嫁のれん」

 和倉温泉に行くために、金沢から観光特急列車「花嫁のれん」(キハ48形から改造、最高運転速度95km/h)に乗ってきました。私の壮大な目標に全国の特急列車を制覇するというものがありましてね、旅する度にせっせと乗っているんです。今回の旅の大きな目的の一つが、この「花嫁のれん」号に乗ることでした。「花嫁のれん」というのは、大切に育てた娘の幸せを願って、婚礼の日に色鮮やかな暖簾(のれん)を贈るという旧・加賀藩の加賀・能登・越中に古くから伝わる伝統文化に由来しており、乗車する人にも幸せになって欲しいとの思いを込めた列車愛称ですね。

 北陸新幹線金沢開業に関連して、北陸地区への観光誘致を目指して、2015年10月、金沢から能登半島の和倉温泉までの、のどかな田園風景のなかを、真っ赤な車体に金箔風の模様を施した艶(あで)やかな列車が走り始めました。運行開始以来、すぐに予約がいっぱいになってしまう(全席指定)人気のこの列車は、「花嫁のれん号と言います。臨時特急として金沢~和倉温泉間を1日2往復しており、金・土・日曜日を中心に、繁忙期には運転日が追加されます。金沢駅の4番のりばに急ぎます。入って来ました。エントランスも和のデザインです。

 

 車内外のコンセプトは「和と美のおもてなし」で、外観は赤・黒を基調とした伝統工芸の「輪島塗」「加賀友禅」をイメージしてデザインされました。改造にあたっては、前面貫通扉や行き先表示器が撤去されました。列車は2両編成で、1両ごとに内装が異なっています。1号車(定員24名)は、個性的な8つの半個室(2人用3部屋、3人用2部屋、4人用3部屋)と物販スペースからなり、ゆったりとくつろぎの旅を楽しめる空間となっています。通路には、日本庭園の「飛び石」をイメージしたじゅうたんを敷き詰め、それぞれのセミコンパートメントには、加賀友禅」のオールドコレクションがあしらわれています。

 私の乗った2号車(オープンタイプ、定員28名)は、イベントスペースを中央に配置、窓に面した1人席のほか、2人席、4人席などが備えられています。座席は虹色の生地と、背面の木の格子が特徴的な回転椅子を採用しています。木製のテーブルもあります。通路は「流氷」のイメージです。照明も通路に合わせた形状です。内装は、伝統的な「輪島塗」の図柄を用いて、車両全体で北陸の和と美を感じさせるつくりで満喫できます。車内を見てまわるだけでも楽しい時間になりますね。

 2往復運転される列車内では、“食のおもてなし”があり、乗車4日前までに「花嫁のれん食事券」の購入が必要となります。便により内容は異なりますが、和倉温泉の老舗旅館「加賀屋」総料理長監修による懐石風の「和軽食セット」(2,500円)、「ほろよいセット」(2,000円)、世界的パティシエの辻口博啓さんのオリジナルセレクトによる「スイーツセット」(2,000円)を、乗務する和装アテンダントのおもてなしと共に、楽しむことができます。車内販売や軽食提供、記念写真撮影などのサービスを実施しておられました。私はこの日「加賀屋」に泊まる予定だったので、「スイーツセット」を予約していました。列車が出発すると、和服姿のアテンダント(3名乗車)の方が食事券の回収に回られ、まもなくすると「加賀棒茶」「ヘーゼルナッツ・ケーキ」が届けられました。食べ終わると、さらに素敵な箱に入った焼き菓子のセット(世界的パティシエ辻口博啓さんのプロデュース)がやって来ました。持ち帰り用の袋もついていますので、これはお土産用としましょう。

 1号車の車端寄りに備えた「物販スペース」では、沿線にゆかりのあるソフトドリンク、アルコール飲料、お菓子、珍味、伝統工芸品、オリジナルグッズなども販売されています。私は「金箔のしおり」「オリジナル・キーホルダー」を購入しました。その真正面には、「伝統工芸品展示スペース」もありました。展示棚の背面には、金沢金箔の装飾が施されています。

 和倉温泉~金沢間を1日2往復しており、基本的に金・土・日の運転です。この日も満席でした。加賀能登の和と伝統美が満載のきらびやかな七尾線の観光列車でした。さて、次の目標となる特急列車は?♥♥♥

   大好きな西村京太郎先生の2018年の作品に、『能登花嫁列車殺人事件』(カッパ・ノベルス)というものがあります。能登路をはしる『花嫁のれん』の車内に、加賀友禅の花嫁が突然、現れ、消えた!?という展開で始まる推理小説ですが、その中で、この観光列車が詳しく取り上げられていますので、ちょっと紹介してみましょう。私がこの観光列車にぜひ乗ってみたいと思ったのは、この作品を読んだからでもあります。念願が叶いました。

 

 黒木は、銀座にある大手の旅行代理店に行き、「花嫁のれん」という観光列車
のパンフレットをもらった。
 そこに書かれた説明によれば、「花嫁のれん」というのは、北陸の石川県を中
心とした旧加賀藩一帯に昔から伝わる嫁入り道具の一つらしい。婚礼の日、花嫁
は、嫁ぎ先に掲げられた、加賀友禅で作られた通称「花嫁のれん」をくぐって嫁
入りする。それを観光列車に応用したというのである。
 二両編成の外観は、ピンク色の華やかなもので、和と美のおもてなしと書かれ
ている。外観は輪島塗や加賀友禅をイメージしたものらしい。
 この列車が運行されているのは、主に金土日と祝日ということで、とにかく、
乗ってみなければ、優雅さや楽しさが分からない。(p.10)

 二人は、ホームに停まっている「花嫁のれん一号」に乗り込んだ。
 座席は全席指定で、二人の乗った一号車は二人用、三人用、四人用と分かれて
いて、それぞれに桜梅の間とか撫子の間といった名前が付いていた。
 二人が乗ったのは、二人用の個室、菊の間である。ただ、個室とはいっても、
独立した、個別の部屋があるわけではなくて、S字型に曲がった廊下を歩き木の
格子で囲まれた半分個室の部屋に入るだけなのだ。それよりも、黒木は通路の方
に感心した。
 列車の通路は、普通は一直線なのに、この列車は微妙に曲がり、その上飛び石
模様になっていて、まるで京都の何とか小路のような感じになっているのは、一
つの知恵だなと、黒木は思った。(pp.12-13)
 
 カウンターが、一号車にも二号車にもあって、そこにいるアテンダントは、全
員が和服姿である。とにかく、列車全体で和の美しさを強調しているのだ。
(p.13)

 「この10時15分発の『花嫁のれん一号』で出るのは、スイーツセットです
けど、時間によっては、ほろよいセットというのがあって、和倉温泉の加賀屋が
選んだお酒と肴が出るんです。黒木先輩は、そのほろよいセットが出る列車に乗
りたくて、本当は、この10時15分発の『花嫁のれん一号』には、乗りたくな
かったんじゃないですか?どうですか、違います?」
 と、綾乃が突っ込んでくる。
 「残念ながら、下りの列車では、ほろよいセットは出ないんだ。帰りの、上り
の『花嫁のれん四󠄁号』で出るんだ。その取材もしたいから、その『花嫁のれん四󠄁
号』にも、乗るぞ」と黒木は、笑いを殺して、いった。
 若い綾乃は、北陸のスイーツが出て、ご機嫌である。
 仕方がないので、黒木は、自分の小さなデジカメを持って、車内を歩いてみた。
 一番の見ものは、あらためて、通路だと思った。通路にはグリーンのじゅうた
んが敷かれた、その上の石のような模様は、やはり、京都の石塀小路にあるよう
な飛び石をマネているのだろう。
 その他、半個室の背中には、美しい加賀友禅の、いわゆる「花嫁のれん」が下
がっていた。
 黒木と綾乃は、途中で、食事を取ることになった。列車に乗る前に、あらかじ
め食事券を買っておいたので、それを示すと、お弁当が、渡された。
 たぶん、このお弁当も、加賀屋の料理長が厳選したものなのだろう。北陸のお
弁当らしく、合鴨料理やシイタケ、ニンジンなどが豊富に入っている。
 それに、添えられているのは、おそらく加賀屋で作ったと思われる加賀ドリン
ク、加賀棒茶である。(pp.14-15)
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