名門高校?

 最近、宝島社から『全国名門高校 人脈と歴史がよくわかる事典』(宝島新書、2020年3月、1200円(税別))という本が出版されました。日本中の「名門高校」(250校)の概要と、著名な卒業生たち(2,000人)を網羅したハンドブックです。連綿と続く「人脈とネットワークがわかる」とのうたい文句です。

 私は、『ライトハウス英和辞典』(研究社)をめぐるいわゆる「宝島事件」で、この会社の杜撰さ、いい加減さには辟易したという自身の経験を持っています。信用がなりません。⇒この「宝島事件」の顛末をご存じないという方はコチラをぜひご覧下さい  他県のことは分からないので、私の住んでいる島根県に関する記述を見て見ることにしましょう(pp.141-144)。取り上げられた「名門高校」は三校です。次の記述の下線部分は誤っています。

・松江北高校(松江市)  公立トップは松江北高校。1876年に教員伝習校内変則中学科として開設され、戦後の1949年に松江高等学校となった。さらに1961年、南北に分離され現在の校名になっている。松江南高校は「兄弟校」のはずだが、いま進学実績で優位にあるのは圧倒的に「北高」だ。

・松江南高校(松江市)  歴史的に見て、松江北の純粋なライバルである松江南高校。だが、両者の実力が拮抗していたのは1980年代ぐらいまでで、90年代以降は「南高」の凋落がはっきりしている。

・出雲高校(出雲市)  島根県3番手としてあげられるのは出雲高校ここ10年では県内2番手の進学実績を誇る。松江の2校と比べ、校風はやや保守的と言われる。

 上で述べられた、島根県の進学実績の内容には、大きな誤りがあります。私は松江南高校に13年(写真上は当時の八幡 ⇒松江南高時代の八幡についてはコチラ)、松江北高に15年間勤めていますので、ここら辺の事情はよく分かっているつもりです。私が北高に赴任した当時はここに書いてある通りだったでしょう。でも時は過ぎて、もう完全に島根県の「進学地図」は大きく変わってしまいました。まず、島根県の「公立トップは松江北高」は、「出雲高校」と訂正しなければなりません。現在はダントツで出雲高校が抜きん出ています。かつては、ダントツで松江北高がトップを走っていました。なにせ公立高校で「国公立大学合格者数日本一」を三年連続で記録した学校です。しかし、そのようなすごい学校が、どんどん落ちていき(私に言わせればちゃんと理由があります)、今では信じられないような低落ぶりです。上の記述にもあるように、私が松江南校に在籍していた頃は、「北高に追いつけ、追い越せ!」が標語で、みんなで切磋琢磨して、実際に追い越してトップに立ったのでした。しかし、ある事件をきっかけとして、その特徴がどんどん失われていき、今ではもう当時の勢いはありません。その点では、上の「凋落」という記述は正しいと思います。この間に、どんどん力をつけてきたのが、出雲高校(通称は「山高」)です。この地域の優秀な生徒は全員この学校にやって来るのですから、普通にやれば当然トップになります(松江の場合には、学区制で3校に分かれるために優秀な生徒は分割されてしまいます)。私が知っていた出雲高校は、入学時は優秀だけれども、鍛えることをしないので、卒業時には松江北高に抜かれてしまう、というのが実態でした。最近の出雲高校は、当時の北高の先生方が移り、生徒をしっかりと鍛えるようになりました。また文部科学省より「SSH・スーパー サイエンス ハイスクール」、および、「SGH・スーパー グローバル ハイスクール」の指定を受けるなど、さまざまな先進的な取り組みに真摯に向き合ってきました。今では、進学実績も圧倒的に出雲高校が上です。

■今年度難関大学合格者数(前期発表時点)
         出雲高校     松江北高校     松江南高校
東京大学       3         2         1
京都大学       8         1
北海道大学      3                   2
東北大学       2 
名古屋大学                2         2 
大阪大学       4         5         2
九州大学       7         2         2 
神戸大学       8         2         1 
                  ―『サンデー毎日』3月29日号による

 地域の事情に詳しい専門家にチェックしてもらえば、このような基本的な誤りは避けることができたはずです。「宝島事件」の時にも感じたことですが、「きちんと裏を取る」ことを怠ったために起こる誤りです。「宝島事件」のあの時もひどかった!♠♠♠

【昨日の宿題の解答】

duckの複数形として、duck/ ducksの両方が認められる理由は?

不変化複数にも変化複数にも用いられる。特に狩猟者は不変化複数を用い、一般の人は変化複数を用いるとされる(Web.3:p.26a)が、それは、動物を獲物または食料として量的に(つまり物質名詞的に)見るか、カモに1個の生物として個性を認めるかという、話し手の動物観の差に起因するものと考えられる。 ―安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社、2005年)

 この本を一冊手元に置いておけば、英語の疑問はたいてい氷解します。みなさんにオススメしておきますね。一ページ一ページ読み返してみるたびに、安藤貞雄先生の偉大さを痛感している八幡です。伝統文法から構造言語学生成文法に至るまで、ありとあらゆる理論に精通しておられる先生でした。授業が懐かしく思い出されます。♥♥♥

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