「指差喚呼」

 週に三度、米子駅から境線「鬼太郎列車」(キハ47系&40系)に乗って、米子東高校のある「博労町」駅に向かいます。乗っているのはわずか3分だけで、先頭車両からしか降りることはできないので、先頭車両の一番前の優先座席に座っているんです。すると運転手さんが運転台で、出発や到着の際に、指をまっすぐ差しながら「○○よし!」「出発進行!」と声を発しながら、きびきびと確認作業を行っておられるのが見えます。鉄道の世界では、これは「指差喚呼」(しさかんこ)と呼ばれています。私は電車の中で、毎回この姿を見ながら通勤しているんです。

 これは、JRの前身「国鉄」時代、蒸気機関車の時代に始まったものと言われています。もともとは、蒸気機関車の機関士と機関助士が、信号や標識、踏切などを通じて、進路の安全を確認し、めいめい喚呼応答する動作でした。その安全に対する効果が次第に認められるようになって、他の現場へと広まったとされています。安全確認の基本原則の1つですね。例えば車掌さんは、「反応灯ヨォーシ!」、「乗降ヨォーシ!」などと、運転士さんは運転席でも「出発進行!」などと指で差し示し、発声しながら安全を確認します。そのうえで次の行動や動作に移ります。念には念を入れて安全を確かめることを、駅務、乗務、または鉄道施設の保守・管理を担当する者に徹底的に訓練し、身につけさせているんですね。

1.目で見て

2.腕を伸ばし指で指して

3.口を開き声に出して「○○○、ヨシ!」

4.耳で自分の声を聞く

という一連の確認動作を、注意を払うべき対象に対して行うことにより、ミスや労働災害の発生確率を、格段に下げることができることが証明されています。「指差喚呼によってヒューマンエラーの発生率が下がる」と、JRは胸を張って言います。鉄道総合技術研究所は、1994年に行った実験で、「指差喚呼」を行った場合は、何もしない場合と比べ、作業の誤りの発生率が約6分の1に減少するという結果を得ています。安全を最優先に徹底しようとする現場の覚悟を示す動作です。

 「指差喚呼」は、英語では「Pointing and Calling」と訳されます。ニューヨークの地下鉄は、日本に倣って1996年に「指差喚呼」を取り入れたそうです。しかし、目で見て確認しているものをわざわざ指を差したり口に出す必要はない、と海外の鉄道業界では考えられているようです。あるいは、リスク削減は作業手順の改良ではなく、機器やシステムの改良で行うべきと考えているのかもしれません。「指差喚呼」が、世界中の鉄道会社に広がると考えるのは、まだ早計でしょうね。

 危険と隣り合わせの現場において、先回りして安全を確認し、列車の運行と、乗客の安全、ひいては自身の身を守る行動、それが「指差喚呼」と言っていいでしょう。これに感化された私は、家を出るときには、ガスの元栓やストーブやエアコンをきちんと切ってあるか、「よし!よし!」指差し確認をして出ています〔笑〕。♥♥♥

【追記】 最近話題になっている、関 大地『乗務員室からみたJR 英語車掌の本当にあった鉄道打ち明け話』(ユサブル、2020年)を面白く読みました。やはりここで取り上げた「指差喚呼」も出てきましたよ(「お決まりのセリフ「出発進行!!」の本当の意味」)。中でも特に、数編の「JRこぼれ話」に惹きつけられました。自らの経験をもとに、鉄道の裏側を明かす著者の話はどれも興味深いものばかりです。本書を読めば、いつものように使う駅や電車の景色も、また違った色に見えてくるはずです。

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