浦上伸介

 スカパーファミリー劇場「事件記者 浦上伸介シリーズ」を放送しています。今日はその「5 毒殺連鎖 伊勢志摩殺人事件」をやっていました。浦上伸介(うらがみしんすけ)というのは、推理作家の津村秀介(つむらしゅうすけ)さんが作った事件記者キャラクターです。私は教員になりたての頃から、津村さんの書く時刻表のアリバイ・トリック物推理小説の虜になり、ずっと追いかけてきました。残念ながら、その津村秀介さんは、2000年にお亡くなりになり、もう新作を読むことはできません。時々無性に、津村さんの時刻表の「アリバイ崩し」を読みたくなることがあって、古い作品を書庫から引っ張り出してきては読んでいます。今どきこんなコテコテのアリバイ崩し、それも鉄道列車の時刻表のアリバイ・トリックばかりを描く作家は皆無ですものね。本のページの中に時刻表が出てくると、もうそれだけで、ウキウキ、俄然ファイトが湧いて、目がそちらに釘付けになる八幡です。

 1986年から2005年にかけての間、眞野あずさ主演で非常に人気のあった日本テレビ系の火曜サスペンス劇場「弁護士・高林鮎子」シリーズの原作も、津村秀介さんです。草鹿法律事務所に勤める美人弁護士・高林鮎子が、長年にわたり司法試験に落ち続けている竹森慎平とともに、被疑者の無実を証明するために弁護を受け、最終的に真実を明らかにして事件を解決するまでを描く作品です。ほぼ毎回、真犯人が鉄道を利用しての鉄壁のアリバイを主張し、それを崩すことで真実が明らかになり、事件解決へとつながっていくというパターンがあります。キャラクターはテレビドラマ・オリジナルのものですが、初回作品を除いて(宮脇俊三作品)、第2作から第34作までの「時刻表トリック」は、津村秀介作品を原作とするものであり、テレビ画面上のクレジットでは「原作 津村秀介」と表示されていました。ここで素朴な疑問が湧いてきます。津村さんの原作では浦上伸介を主人公にしているのに、このテレビでは、小説にまったく顔も見せない高林鮎子弁護士がヒロインとは…?? 事情をご存じない人は、非常に奇異に思われることでしょう。教員になってから、津村作品をことごとく読んでいる私も、どうしても不思議さ・違和感がぬぐえませんでした。なぜこのようなキャラクターの改変がなされたのでしょうか?

 当時の番組テレビ・プロデューサーが、こう回想しておられます。「原作者の分身ともいえるシリーズキャラクター(=浦上伸介)を、私たちの設定した人物(=高林鮎子)に移すことを了解してもらえるだろうか。…しかし私たちの心配は杞憂に終わった。津村さんは快諾してくれたのだ。」

 津村さんは、自分の作ったシリーズ・キャラクターの浦上伸介(将棋がめっぽう強い)が、縁もゆかりもない高林鮎子なる人物に置き換えられることに、抵抗はなかったのでしょうか?ミステリー評論家の新保博久氏の推測によれば、津村さんが心を動かされたのは、ヒロインのキャラクターの鮎子という名前が、彼の尊敬する推理作家鮎川哲也(あゆかわてつや)氏を想起させたからではないか、とのことです。傑作『黒いトランク』で有名な鮎川哲也さんが(やはり彼もアリバイ崩しの名手でした)、自分の後継者と指名したのが他ならぬ津村さんだったのです。自分が敬愛する鮎川哲也氏の子供を思わせる鮎子というファースト・ネームに、親近感を抱いたのではないか、というわけですね。なるほど。それならわかる!!

 さて今日放送の「毒殺連鎖 伊勢志摩殺人事件」は、次のような展開でした。

三重県出身の琴奏者・手塚久生(国分佐智子)が主催するグルメツアー中に、銀行員の笠原 貢(伊藤正之)が毒殺された。被害者は和歌が書かれた「貝合わせ」で使用する、合わせ貝を握っていた・・・。貝が意味するものとは!?週刊誌の取材で鳥羽を訪れていたルポライター・浦上伸介(高嶋政伸)が、元編集長・細波(故・蟹江敬三)と共に事件の真相に迫る。

 国分佐智子さんが演じた手塚久生は、美人琴奏者です。当然、真骨頂は琴を演奏するシーン。実際に放送されたこの場面は、宴会のシーンの中に組み込まれていました。華麗に美しく見事な演奏を披露する手塚久生。ちなみに、手だけのシーンは、お師匠さんによる吹き替えでした。しかし、手塚久生を囲むツアーなのに、真剣に聞き入っているのは、事件記者の浦上伸介だけ。そこにはサスペンスの重要な伏線である「虚飾」が暗示されています。お待ちかねの時刻表のトリックも、津村さんワールド」です。殺人を犯すにはどうしても「こだま」に乗らねばならない。でも時間に間に合わない。意外な所にヒントが転がっており、その時間が埋まり、犯人のアリバイが崩れる。ここら辺の試行錯誤がファンには堪らないところです。細波編集長役の蟹江さんは、もう亡くなりましたが、いつもながらいい味を出していますね。このドラマに出てくる、「おかげ横丁」「伊勢神宮」「鳥羽」「近鉄特急」などは、私もインターハイで来て、よく知っているので、余計にドラマに親しみが持てました。❤❤❤

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