外山滋比古先生ご逝去

 私が尊敬する英文学者・評論家・エッセイスト外山滋比古(とやましげひこ)先生(お茶の水女子大学名誉教授)が、7月30日胆管がんでお亡くなりになりました。96歳でした。今、日本で最も美しい文章を書かれる先生として、私はせっせと先生のエッセイを読ませていただいておりました(百冊くらいは読んだかな)。先生の平明で軽妙な文体、それでいて味わいのあるエッセイは、ちょっと真似ができません。最近は新刊が出ないな~、と思っていたところに、この訃報でした。私が教員に成り立ての頃に、木村治美先生『黄昏のロンドンから』(文藝春秋)という本が出て、いっぺんにその味のある文章の虜になったことがあります。外山先生の教え子さんでした。

 先生は雑誌『英語青年』(研究社)の編集長(12年間)を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学、昭和女子大学の教壇に立たれました。お茶の水女子大学に移られた時のエピソードは有名ですね。専門の英文学の他、日本語論や教育論でもご活躍になりました。お茶の水女子大付属幼稚園の園長も務められて、幼児教育の重要性を提言しておられます。知的生活をテーマとした新書や文庫が多く、出版界から引っ張りだこの人気著者でした。中でも大ヒットしたのは、1983年に刊行した自分で考えることの大切さを説いた『思考の整理学』(ちくま文庫)でした。独自の発想と洞察でアイデアを熟成させる大切さなどを綴り、ロングセラーとなりました。文庫版は、今ではなんと、124刷、253万部に達しています。私も冒頭の「グライダー人間」vs「飛行機人間」の話を講演で使わせていただいていました。「いまの学生は、自力で飛べないグライダーのようなもの。教えられた知識を詰め込む優等生は少なくないが、いざ論文に書きたいことを書けと言われると途方に暮れる」「頭というものを『知識をため込む倉庫』にするのではなく『創造のための工場』にするにはどうすればよいのか」等々。

  この本、最初からバカ売れしていたわけではありません。発売してから約20年たっても累計16万部止まりでした。それが2007年に、盛岡市・さわや書店松本大介さんが「もっと若い時に読んでいれば…」というポップを掲げて、店頭PRしたことがきっかけとなって脚光を浴び、全国に広まっていきました。2008年には東京大学・京都大学の生協の書籍販売ランキングでトップに。「東大・京大で一番読まれた本」ということで、売り上げが急増して、2009年には累計発行部数が100万部を突破しました。その後も勢いが衰えることなく、増刷が続きました。私も教室で生徒たちに、この本を読むように薦めています。

 ことばについての優れた見識をもとに、放送用語の改善にも力を尽くし、平成7年には「NHK放送文化賞」を受賞しておられます。「勲三等旭日中綬章」も受賞しておられます。広く深い視野と知性から、社会の問題を小言風に述べる外山流エッセイ、先生の本では、ずいぶん勉強させていただきました。御冥福をお祈りいたします。♦♦♦

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