私の大好きな巨人軍が9月11日、ヤクルト14回戦(東京ドーム)に2-1で勝ち、原 辰徳監督(62歳)が、球団単独最多となる監督通算1067勝目を挙げました。巨人歴代1位の通算1067勝を達成した試合後にはお祝いのセレモニーが行われ、オーロラビジョンには、長嶋茂雄終身名誉監督(84歳)、王貞治ソフトバンク球団会長(80歳)、そしてジョー・トーリ元ヤンキース監督(80歳)からのビデオ・メッセージが流され祝福を受けました。監督としての通算勝利数を1067勝(798敗62分け)とし、川上哲治元監督の1066勝を上回る球団最多勝利を達成しました。プロ野球全体では11位。原監督は試合後のインタビューで「先輩として燦然と輝く神様・川上監督を超えられたのは信じられない。心の中の宝物にして、さらに精進、そして挑戦していきたい」と語りました。本当におめでとうございました!!
川上監督時代は、「ONがいれば誰が監督をやっても勝てる」などと、嫉妬交じりの皮肉を言われましたが、決して油断・慢心することなく補強を続けていました。「人間教育」を第1に掲げた川上監督でなければ、V9なんて達成できなかったでしょう。⇒コチラに「川上哲治監督の偉大さ」と題して詳しく偉業を書きました 原監督も、第2次政権では、阿部慎之助という不動の捕手がいるにもかかわらず、實松一成や鶴岡一成という他球団の2番手捕手をトレードで獲得しました。これは、阿部にアクシデントがあった場合のバックアップ要員でしたが、昨年は小林誠司や大城卓三、宇佐見真吾という伸び盛りの選手がいる中で、炭谷銀治郎を獲得。批判の声もありましたが、若手投手の成長にもつながり、戸郷翔征など、若い投手陣の潜在能力を引き出す役割も果たしました。まるで川上監督を彷彿とさせる補強が功を奏しています。1シーズンあたりの平均勝利数を出してみると、実は、原監督が第1位なんですよ(78勝)。
・原 辰徳/1シーズンあたり平均78勝/1063勝798敗61分(14シーズン目途中)
・鶴岡一人/1シーズンあたり平均77勝/1773勝1140敗81分(23シーズン)
・川上哲治/1シーズンあたり平均76勝/1066勝739敗61分(14シーズン)
・水原 茂/1シーズンあたり平均75勝/1586勝1123敗73分(21シーズン)
・西本幸雄/1シーズンあたり平均69勝/1384勝1163敗118分(20シーズン)
・王 貞治/1シーズンあたり平均69勝/1315勝1118敗74分(19シーズン)
・星野仙一/1シーズンあたり平均69勝/1181勝1043敗53分(17シーズン)
・長嶋茂雄/1シーズンあたり平均68勝/1034勝889敗59分(15シーズン)
・上田利治/1シーズンあたり平均66勝/1322勝1136敗116分(20シーズン)
・野村克也/1シーズンあたり平均65勝/1565勝1563敗76分(24シーズン)
・三原 脩/1シーズンあたり平均64勝/1687勝1453敗108分(26シーズン)
・別当 薫/1シーズンあたり平均61勝/1237勝1156敗104分(20シーズン)
・藤本定義/1シーズンあたり平均53勝/1657勝1450敗93分(31シーズン)
今年のジャイアンツは、今日現在で貯金25、2位に11.5ゲーム差をつけてマジック35まで点灯し、ぶっちぎりの独走状態です。原監督の操縦は見事という他ありません。私は仕事をしながら、毎晩のナイター観戦が楽しくてしょうがないのですが、八幡なりに、今シーズン好調の要因を考えてみたいと思います。
①サカ・マル・オカの復調
やはり今の巨人軍を支えているのは坂本、丸、岡本、この3人です。一時不調な時期もありましたが、この3人の誰かが打線を支え続けました。下位打線の中島、大城、吉川尚の好調も機能しています。
②盤石の投手陣
先発の菅野(11連勝中)、戸郷が好調なのに加えて、残りの投手陣もチーム内での競争に勝ちながら、9月の防護率はリーグ1位の2.23です。リリーフ陣も、新戦力の高梨、大江、鍵谷や、配置転換で活躍を始めた大竹、万全のストッパー中川にデラロサと、チームの勝利を支えています。
③鉄壁の守備陣
今年のジャイアンツは失策が本当に少ない。岡本、坂本、吉川尚の内野陣を始め、今季71試合で総失策数がリーグ最小の16です。この三人の守備は安心して見ていられます。投手も含めて、守りがしっかりしていることを見逃すわけにはいきません。さらに、ジャイアンツは、12球団で唯一キャッチャーのパスボールがないんです。安心感というところでは、ピッチャー心理としては大きいですよね。こんなところにも巨人軍の強さが見られるんです。
▼ 9月12日終了時点の12球団の捕逸数
【セ・リーグ】
0 巨人
2 阪神
3 ヤクルト
4 広島
6 DeNA
6 中日
【パ・リーグ】
2 ソフトバンク
2 ロッテ
2 オリックス
5 楽天
6 西武
7 日本ハム
④選手のマネジメント
今年のジャイアンツのブルペンは無理をさせません。今季は特殊な日程で連戦も多く、コンディションを維持するのは大変なことです。目先の勝利にとらわれず、3連投をさせることはありません。先発投手もまだ余力がある段階で代えて、必要以上に選手に無理をさせない方針で一貫しています。体調の悪い主力選手も早め早めに代えて休ませています。ナイターから翌日のデーゲームでは、連戦の疲労を考えて試合前の全体練習を行わないなどして、過密日程を乗り切りました(13連戦を10勝1敗1分け1試合中止)。
9月15日(火)の『読売新聞』には、原監督×島耕作の対談が掲載され、そこで原監督は、監督としてのマネジメントに関して、次のように述べておられました。なるほど!
監督として、選手の起用に関しては実力至上主義を貫いています。力のある選手を選び、スターティングメンバー、1軍メンバーに起用する。私情は一切はさまず、物差しは「実力」だけだと、選手に伝えています。この原則がないとチームの輪というものは守れません。
組織が同じ目標に向かう中で、監督、コーチはチームを勝たせる、プレーヤーはいい成績を残す。裏方やフロントの人たちにも、それぞれの役割があります。その役割に対して汗をかこうという人が集まらないと、いいチーム、強いチームにはなりません。ジャイアンツという組織は、全員でも200人程度のメンバーですが、やっていることは大きいという自負はあります。
『日刊スポーツ』の9月18日付けには、原巨人の強さを深掘りした特集記事が組まれました。そこにはこんな言葉が載っています。まさに名言です。
原監督は言う。「チームの“和”を保つには絶対的な実力至上主義が必要」。能力はもちろん、練習態度やチームへの献身を重視し起用する。当たり前のようだが、この見極めが難しい。チームの細部まで見極め、決断する。「責任はすべて監督にある」という言葉は、どのチームの監督も使うが「本当にそう思っているの?」と勘ぐりたくなる監督は多い。実績がなければ言葉の重みも違ってくる。20年の巨人は、だから強い。
◎指揮官は選手の「負けざま」を見ている!
これだけの実績を残しながら、その手腕については、「名将」と讃えられた先人に比べ、なぜかイマイチ評価が低いのが気になります。「各チームの主力をFAで引き抜ける、金満球団だから勝てているだけだ」と、必ず枕詞がついて語られます。果たしてそうでしょうか?そうした世間の評価に対して真っ向から異を唱えるのが、2020年7月に、『監督 原辰徳研究』(徳間書店)を上梓した、野球解説者の江本孟紀(73歳)さんです。実に面白く読みました。その中で、江本さんの「若い選手を一軍で起用するうえで、最も大切していることは?」と聴かれた原監督は、こんなことを言っておられました。ここら辺の「愛情」と「厳しさ」が、原監督の快進撃を支えています。♥♥♥
「目」ですね。ギラギラしている「目」をしているかどうか。ここは常にチェックしています。投手であれ、野手であれ、うまくいくときもあれば、失敗するときもある。投手であれば打たれてノックアウトを食らうこともあるでしょうし、野手ならばエラーをしたり、三振をしてしまうことだってあるでしょう。ある意味、それは仕方のない部分もあるので、そのことだけで私は選手をとがめるようなことはしません。問題はその後、ベンチに戻ってきたときの表情です。「今にみていろ」とリベンジに燃える目をしているかどうか。ここがあるのかどうかが大切です。失敗したときの、「選手の負けざま」というのは常に目を光らせて見ています。もし失敗したときに、魚の死んだような目をしているようであれば、「もう一度、ファームで鍛え直してこい」と言います。その点は、「容赦ないな」と言われても、仕方のないことかもしれませんが、私はそのことを徹底しています。