私は、全国各地に点在する「鉄道博物館」を全て制覇したい、という願いを持っていましてね、機会があると、旅の途中にわざわざ寄り道してでも、訪れるようにしています。最近で印象深かったのは、埼玉・大宮の「鉄道博物館」と、門司港の「九州鉄道記念館」(⇒コチラ)と、「京都鉄道博物館」(⇒コチラ)でしょうか。 今日ご紹介する、岡山県・津山市にある「津山まなびの鉄道館」(9:00~16:00)は、日本に現存する12カ所の扇形機関車庫の中で、京都の「梅小路蒸気機関車庫」に次ぐ、日本で二番目に大きい「旧津山扇形機関車庫」(1936年)や、収蔵車両を中心とするさまざまな展示と、憩いの施設で構成されています。その希少性ゆえ、現在は経済産業省の「近代化産業遺産」にも選定。地域・鉄道のことを、見て、さわって、楽しく学べる鉄道館です。2016年4月2日にリニューアル・オープンして、常時の公開を始めています。これまでに20万人以上が訪れたとか。幸い、 岡山に講演会の用事があったので、伯備線の特急「やくも」号を新見で途中下車して、姫新線で(私が訪れた2018年11月に豪雨による不通が全面開通していました!)津山に向かいました。小さい頃、途中の「中国勝山」に叔母・叔父が住んでいたので、よくこの鈍行列車に揺られてここまで来たな、と懐かしく思い出して、この駅のホームにふらっと降りたって、昔の想い出にふけっていました。
津山駅に着くと、タクシーを飛ばして行きましたが(運転手が場所も名前も分からない、そんな程度の施設なのか?)、実は、歩いて行ける距離でした。全体的に綺麗に整備してあり、こんな安い入場料(わずか300円!私は「津山城」との共通券で240円ぽっきり)で、施設を維持出来るのか心配になってしまいます。展示スペースや、津山駅周辺の鉄道模型ジオラマ、休憩スペースもあり、大人から子供まで楽しむことができます。扇形車庫の目の前には、1930年に建設された年代物の「転車台」があります。列車の方向転換をするための回転台で、決まった時間には「転車台」を実際に動かしてくれます。せっかくの扇形車庫、その全貌を俯瞰出来る、小さなタワーでもあれば(京都のような)また楽しいだろうな、とそんなことを考えてしまいました。鉄道好きならマスト!な、施設です。帰りは、津山駅へ歩いて10分もかからない場所。線路沿いの駅構内なので、電車の中からも建物がすぐそばに見えました。

「受付」で記念スタンプを押して、まずは入り口の所に、津山城(鶴山公園)や津山駅周辺の街並みを巨大ジオラマで再現した「まちなみルーム」があります。線路上
を走るNゲージの模型もあり、津山を中心とした美作エリアの鉄道に関する歴史も学ぶことが出来る部屋です。敷地の中央に配置された大きな「転車台」をぐるっと囲むように、歴代の13両の列車が「旧津山扇形機関車庫」に収蔵されています。旧国鉄時代のディーゼル機関車やクリーム色にエンジ色を組み合わせた懐かしの「国鉄色」の気動車など、壮観でした。1936年に建てられた蒸気機関車黄金時代を象徴する当時のままの扇形機関車庫の一つで、機関車収容線数17は、国内に現存する扇形機関車庫の中で、「梅小路機関車庫」に次ぐ二番目の規模です。「デゴイチ」(D51形蒸気機関車)や、特急「やくも」の旧車両など懐かしい列車に見とれていました。「DD51」形1187号機は、私もよく利用した、山陰本線・寝台特急「出雲」の
けん引機でした。寝台特急「出雲」は2006年3月まで、東京から東海道・山陰本線経由で出雲市まで結んでいました。山陰本線は城崎温泉~伯耆大山(ほうき・だいせん)間が非電化のため、ディーゼル機関車が必要だったんですね。今も走る寝台特急「サンライズ出雲」は電化された伯備線経由なので「電車」で出雲市まで来ることが出来るわけです。1970年に国内でわずか1両だけ製造された貴重な「DE50形ディーゼル機関車」もありました(伯備線の試運転時に急な下り坂にブレーキが効かずに危うく大事故になるところでした。投入予定だった路線の電化が決まって量産化されなかったのです)。これはDD51形より車体は小さいですが、パワーは同じ2000馬力で、最大の引っ張る力が21トン(DD51形は18.6トン)という国鉄最強のディーゼル機関車でした。ここはディーゼル機関車が多いのが特徴です。


「いこいの広場」の前には、岡山の鉄道の歴史を知る「あゆみルーム」と、鉄道の構造や列車のしくみが理解できる「しくみルーム」が。岡山の鉄道の歴史にスポットを当てながら、日本における鉄道の始まりから今日に至るまでを、当時の出来事とともに紹介する展示です。安全で快適な鉄道。どのようにして正確な運行が行われているのか、技術や工夫について体験設備も交えて紹介していました。ポイントの切り替えを体験したり、鉄道クイズに答えたりしながら、楽しく学ぶことのできる施設です。「タブレット閉塞」の現物展示もありました。これは同じ線路に2つ以上の列車が走って衝突する事を防ぐために、金属製の円盤(タブレット)を持った列車だけが線路を走る仕組みです。つまり「タブレット」とは「通行手形」のようなものと考えると分かりやすいかもしれません。当時の因美線で、実際に使われていた「タブレット閉塞」の機械が「津山まなびの鉄道館」には展示されています。館内ではこうした展示物を、JRのOBの方がボランティアとして丁寧に説明してくれることもあり、鉄道の仕組みと共に、昔のご苦労なども伺うこともできます。ジオラマや、昔の津山駅の切符売り場を再現したもの、昔の懐かしい駅看板などの展示もあって、これで入場料300円ぽっきりは安いと思います。昔懐かしいタイプの厚紙でできた硬~い切符が
「入場券」となっていて、館内に入場する際は、駅員さんが改札して入る時のように、カチャッとハサミを入れてくれるのも、鉄道ファンにはレトロ感いっぱいで嬉しいですね(写真右)。
入場料が300円とかなり手頃なお値段のうえ、「京都鉄道博物館」のような「扇形機関車庫」には、重厚感あふれる動態保存の鉄道車両が数多く見られます。ほんのちょっぴり鉄道遺産を味わいたい場合は、京都よりもこちらの方がさらっと観光できてお勧めかもしれません。土曜日ということもあって遠方からたくさんのお客さんが来ておられました。一緒に写真を撮り合ったりして楽しかったです。入り口には「グッズショップ」も開いていて、数々の鉄道グッズが販売されていました。京都でないと手に入らないものまで、特別にセールをやっていました。私は記念ファイルを買って帰りました。
この機関車庫は今でも現役なんだそうで、中央寄りのスペースは、整備や点検が必要な車両を収めるために普段は空けているとのことです。大切に使われ続け、2009年には国の「近代化産業遺産」、一昨年にはJR西日本の「鉄道記念物」となりました。私の最新訪問は、昨年夏の埼玉・大宮の「鉄道博物館」ですが、そのレポートはまた日を改めて。❤❤❤