仕事柄、全国を旅することが多いんです。そんな中で、全国を走っている特急列車を制覇しようと目論んでいます。雑誌『鉄道ファン』の先月号(10月号・前編)と今月号(11月号・後編)が、国鉄系を含め現在全国で営業運転をしている全特急列車(JR+私鉄)の特集を組んでいます。私には最高の贈り物です。1ページ1ページなめるように読みました。「あ、これは乗った乗った!」「これ、絶対に乗りたいな!」と思いながら眺めておりました。
私の大好きな推理小説家・西村京太郎先生は、全国各地を走る特急列車を題材に取り上げて多数の作品を書いておられますが、そんな先生が最も好きな特急列車が「雷鳥9号」でした。西村京太郎先生を湯河原にお訪ねした際に、「先生の今までに乗られた列車の中で一番印象深いお好きな列車はどれですか?」とお尋ねしました。すると先生は、
間髪を入れずに、「やはり「雷鳥」ですね。あれ好きなんだよ。今は全部「サンダーバード」になっているでしょ。あれはちょっとね。残念だね。」と答えられました。以前の先生のファンクラブ会報(年二回発行)には、「『雷鳥九号』というタイトルが好きなんです。何号でもいいわけじゃない。なんとなく語呂がよくありませんか?」 「私は雷鳥という名前が好きだが、それを直訳したようなサンダーバードという名前は、どうしても好きになれなかった。もう少し細かくいうと、雷鳥の中でも、雷鳥九号という名前が好きだった。九という数字に、別に縁起をかついでいるわけではなくて、雷鳥九号という音が好きなのである。それが今は、なぜか雷鳥という名前が消えてしまって、サンダーバードだけになってしまった。残念で仕方がない。何とかならないものか」というインタビューが載っていました。私は最近、その特急「サンダーバード」に三回続けて乗りましたが、結構気に入ったんですけどね〔笑〕。⇒コチラです
私の推す全国の「特急列車ベスト3」を挙げておきますね。
第1位 特急「ゆふいんの森」(博多~由布院~別府)
特急「ゆふいんの森」号は、何度乗っても飽きない素敵な観光列車(全席指定)です。私の中ではダントツの列車です。あの鉄道デザイナー・水戸岡鋭治(みとおかえいじ)さんがデザインし、グッドデザイン賞をいただいた観光列車の草分けともいうべき傑作車両で、水戸岡さんの作品らしくいたるところに木が使われています。床も板張りです。ゴージャスな気分と美しい景色を楽しめる「高原のリゾートエクスプレス」といった感じですね。ヨーロピアン調のハイデッカー車ですから、一段高いところから絶景を眺めることが可能です。連結部でもフロアレベルが変わらない「谷間のない構造」の画期的な連結ブリッ
ジです。車両間のスペースも壁が木目になっているので高級感が漂います。ゴミかごが木で編んであったり、木をふんだんに使ったナチュラルなインテリアの車内は森の別荘にでもいるかのような自然あふれる空間を演出しています。木の温もりあふれるモダンなインテリアで、列車に乗った瞬間からリゾート気分を満喫できる観光特急といってよいでしょう。各名所では詳しい観光案内もあります。私の詳しい紹介記事はコチラをご覧ください。
第2位 特急「ソニック」 (博多~大分)
九州の東海岸をイメージしたまばゆいばかりのメタリックブルーに統一された車両は「青いソニック」と呼ばれています。列車に 乗り込むと、アルミの床に、グリーンとブルーのメタリックカラーの壁、その向こうに客室を仕切る曇りガラスが見えます。向こう側にある座席が微かにに見えるガラスの仕切りとアルミの壁が構成する空間は、まるで
宇宙船といった感じです。横になれるマルチスペースや、立っていても楽しいコモンスペースまであります。キャビンに一歩入ると、どこか知らない不思議の国の広場に紛れ込んだような世界に引き込まれていきます。先頭車両1号車のグリーン車には、運転室のすぐ後ろに、展望スペースの「パノラマキャビン」が設置されています。鉄道好きには堪らないスペースですね。パイロット気分を疑似体験できるこの場所は、コックピットの中できびきびと動くかっこいい運転士と、前方の景色を独り占めすることができます。デザインにも大きなこだわりがあり、弧を描く木製のベンチシートに腰掛ければ、さらなる不思議の国への扉が開かれます。シートとそ
の上部のヘッドレストは全て本革製で、まるで小グマの耳をイメージしたかのようなそのデザインはミッキーマウスの耳を彷彿させます。色や形だけでなくエルゴニミクス(人間工学)に基づいた設計によって、長旅でも疲れにくいこだわりの椅子だそうです。確かに頭がホールドされて快適に座れる座席です。座席にはコンセントもついていてビジネスマン
にはありがたい環境です。シートもスイッチ一つの電動リクライニングで座り心地は抜群でした。車内にはいたるところに木の香り漂う装備が見られます。床にはにぎやかなモザイク模様のカーペットが敷かれています。荷物を置く座席の上の棚も、飛行機のようなハットラック式を採用しています。このように、水戸岡先生のデザインしたJR九州の特急列車はすべてが(例:「かもめ」「ハウステンボス」「ゆふいんの森」「つばめ」など)特徴のある顔をしています。山陰を走る特急列車とはえらい違いです。
第3位 特急「丹後の海」 <京都丹後鉄道> (京都~豊岡)
海の京都をイメージした藍色のメタリックカラーは、海原のように日差しを受けてキラキラと光る調色になっています。外観についてデザイナーの水戸岡先生は、「元々の車両は、大きなおでこ、丸い形で不細工に見えた。逆にそのおでこを活かすデザインをし、藍色のメタリックカラーにすることで空が映り込み、なかなか高級感
を出せた」と、デザインのポイントを語りました。車内は、外観のクールなイメージとはうってかわり、床、天井、窓枠、座席の背面、テーブル、肘掛けなど、ありとあらゆる部分に素材として木を採用した温かみのある空間となっています。木に囲まれ、森の中にいる感じを演出していますね。これは、リビングルームや書斎、レストランをイメージしたものだとのことです。天井に採用したのは、自然の木
目や木肌を活かし、特殊塗装仕上げを施した特殊積層シートで、アルミ材に0.2mmの薄い木(ツキ板)を貼った不燃材。天井表面のドット柄は、パターンや色を数種類使うことで、広い面積の中に変化を付けていました。また、各窓の周りも木枠でまるで額縁のようになっていました。照明も温かみのある電球色で落ち着いた空間を演出しています。運転室後ろには「のれん」を発見しました。のれんをくぐると、そこはフリースペースになっています。運転室横は隣の車両へ通り抜けられるようになっていました。フリースペースにはソファが並び、列車の
中であることを忘れてしまいそうです。座席は車両・場所によってオリジナルのモケット(パイル織物)は色を変えています。芸が細かいですね。⇒詳しくはコチラです 生地も厚く高級感が漂っていました。窓枠と窓枠の間にはちょっとした飾り絵も。ここら辺が水戸岡先生のこだわりなんでしょう。木製のセンター肘掛けは、形とサイズが違う2種類が存在します。これは、当初大きめの肘掛けを作ったが、体の大きな人が使いにくいということで、小さいサイズも作ったとのこと。2種類の肘掛けがあるため、自分の体型から席を選んで座って欲しいとのことです。隣の車両へ移動します。出入口デッキ周りはシックなデザインです。