保山耕一さん

 大好きな歌手のさだまさしさん(67歳)が、昨年CD『新自分風土記Ⅰ・Ⅱ』を2枚同時に発売しました。そのⅡは「まほろば編」と銘打ち、奈良を舞台とした過去の名曲(「まほろば」「修二会」「生々流転」など)を収めています。このCD初回限定版には、春日大社東大寺で撮影したDVDが付属しているんです。その一部で、がんと闘いながら奈良を撮り続ける映像作家保山耕一(ほざんこういち)さん(55歳)がカメラマンを務めました。両社寺と深い縁を結ぶさださんだからこそ、許された撮影と言っていいでしょうね。保山さんは神仏への深淵な敬意を表すため、深夜にろうそくの明かりの中、たった一人で歌を奉納するさださんの姿を撮りました(下のトレーラー映像の5分24秒あたりをご覧下さい)。完成した作品を一言で表すのならば、「畏(おそろ)しい」という言葉がピッタリです。あえて高画質、高感度のカメラを使わずに挑んだ保山さんの映像は、暗い部分が漆黒の闇(やみ)となります。いにしえより人々は本能的に闇を畏れ、その中に神仏の存在を感じました。きっちりと闇が表現された保山さんの映像も、さださんの歌声とも相まって、見る者に神仏への畏敬の念を抱かせます。暗闇が身近にある奈良は、光にあふれた都会と違い、常に神仏の気配を感じられ、保山さんの美しい映像は、まほろば・奈良の魅力も気付かせてくれました。

 奈良の美しい自然をひたすら撮り続ける、映像作家の保山耕一さん。7年前まで、プロの映像カメラマンとして世界中を飛び回り、さまざまな絶景を撮影していました。しかし突然、病に伏し、末期がんを宣告されます。命を区切られた苦しみの中で「生きる実感を得るために撮りたいものを撮ろう」と決意した保山さんの心をつないだのが、まさに奈良でした。以来、奈良の自然の輝きと、自身の命と向き合いながら、新しい映像の世界を追い求めておられます。⇒保山さんの作品はコチラの公式ホームページで見ることができます  私はこんな美しい写真や映像は見たことがありませんでした。命懸けの映像とはこんなにまで人の心を打つのですね。

     保山さんは、末期がんを抱えながら、毎日、奈良の自然や寺社仏閣を撮影しておられます。その日に撮った映像はすぐさま編集してSNSで発表。奈良の365日の季節のうつろいを写した作品」は「涙が出る」「神さまの気配がする」と、静かな反響を呼んでいます。先日、NHK-Eテレで放送された「こころの時代」では、自らの死と向き合いながら、奈良の風景を写し続ける保山さんが「レンズの先に見つめている世界」についてお話されていました。昨年の秋、奈良国際映画祭で奉納上映された作品「映像詩・春日大社~私の命と春日の神様~」が生まれた背景には、「見えない世界」とつながる心あたたまる交流があったそうです。番組では今回、スペイン在住の音楽家・川上ミネさんがオリジナル曲を演奏。昨年秋、保山さんと同じ時期に 春日大社で奉納演奏をしたことから 、保山さんの映像作品と出会い、この世に紡ぎ出されることとなった音の響き。春日の神さまがとりもつ 不思議なご縁で、こころ とこころ が響き合う交流が広がっています。保山さんの映像に写し出された「光」の輝きと、川上さんのピアノが奏でる「音」。響き合う光と音のコラボレーションでした。保山さんは言います。

「目の前の風景のその奥に思いを馳せることで、被写体の本質を掴み取る。そうすればカメラマンは迷うことなくその正体にレンズを向けられるのだ。まるで被写体と会話するかのように、撮るべきものが明確に見えてくるのである。奈良時代から途切れることなく続いてきた祈りの風景画、この大和にはある」

 1300年の歴史をもつ春日大社」で、長年権宮司を務められた岡本彰夫(おかもとあきお)先生の最新のご著書『日本人よ、かくあれ―大和の森から贈る48の幸せの見つけ方』(ウェッジ、2020年8月発売)では、命懸けで奈良を撮り続けてこられた保山さんの素晴らしい写真が、岡本先生の言葉にぴたりと寄り添うように華を添えています。東海道新幹線グリーン車の車内誌『ひととき』に連載されていた、岡本先生「奈良 その奥から」22編と、新たに書き下ろしの26編のエッセイが、一冊の本になったもので、感動的かつ心を動かす言葉に満ちあふれています。今忘れ去られようとしている、古来日本の美しさを再発見させてもらえた一冊でした。あ、そうそう、さだまさしさんが、この本の書評をしておられましたよ。⇒コチラです ♥♥♥

カテゴリー: 私の好きな芸能人 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中