鞁島弘明先生の講演(1)

 島根県立松江北高等学校の元校長で東出雲町長を務められた鞁嶋弘明(かわしまひろあき)先生がお亡くなりになってもう10年になろうとしています。先生の思い出はコチラにまとめています。私が新規採用教員としてスタートを切ったのも、鞁嶋先生のクラスの副担任(2年6組)としてでした。私が島根県の西の端・島根県立津和野高等学校に勤めているときも、何度も教員研修、生徒講演にお呼びして、助けていただきました。私を松江北高に戻って来い、と呼んでくださったのも鞁嶋先生です。鞁嶋先生が校長時代の三年間、松江北高は全国の公立高等学校で国公立大学の合格者数が、373人→355人→362人と、3年連続日本一!」を記録しておられます(3年目御勇退の年に21世紀枠で甲子園出場)。今の北高からすると、とうてい考えられないようなすごい数字ですが、偶然実現できた数字ではありません。ちゃんとやるべきことを積み上げて、精緻な計算と綿密な指導の基に可能となった記録です。そのエッセンスを、北高の「進路だより」に、鞁嶋先生ご自身がまとめておられますので、若い先生方はぜひご覧ください。⇒コチラから読むことができます  当時の北高の進路部長・柴田 博先生(島根県立益田高等学校長)鞁嶋先生の対談志がかけがえのない出会いを生み 時を濃密にした」ベネッセ『VIEW21』(高校版)2008年6月号に掲載され、全国の注目を集めました。⇒コチラで読むことができます

 そんな先生のお知恵をお借りしたいと思い、私が当時勤務していた津和野高校へ、2003年10月8日(水)に「進路講演会」(2年生対象)にお越しいただいて、お話しを伺いました。その時の講演をまとめた記録です。当時は東出雲町長になられる前で、東出雲町教育長を務めておられました。若い先生方にはご参考になると思い、昔の文書をOCRソフト「読取革命16」(ソースネクスト)を使って復元したものが次の文章です。当時の「松江北高の進路指導」の真髄が全部詰まっています。♥♥♥


  前松江北高校校長・現東出雲町教育長  鞁嶋弘明
①成せば成る!

 自分の目標を持って頑張ろうとしているあなたたちには、「成せば成る」という言葉を贈りましょう。それはこういうことです。あなたが本気になったとき、あなた一人がどんなに頑張ってもその力は小さなものですが、そのあなたの姿をみてまわりの人が助けてくれるようになります。まず自分の進路目標を実現しようと頑張っているあなたの本気の姿にご両親が気づかれます。その次にあなたの担任が気づきます。クラスのひとりひとりがそのような気持ちで学校生活を送っていると、そのクラスに勢いが出てきます。その勢いによってひとりひとりの教科担任がさらに本気になってきます。自分の目的を一つにして、自分を磨くことによって「集団の力」が生まれます。この力が不可能を可能にするものなのです。

②受験は長い長い距離の徒競走です!

 今ここでみんな校庭に出て、100mの競争をするとしましょう。結果は分かっています。足の速い人が勝つに決まっています。でも今から走っでもいい、歩いてもいい、自分の足だけで誰が早く広島まで着くかという競争をするとしましょう。この競争は足の速い人が勝つとは限りません。この競争は、コツコツと頑張った人が勝つのです。受験もこれといっしょです。今、足が速<なくても(今、成績が良くなくても)、誰にでもがんばれば勝つチャンスがあるのです。ただし、この競争は見た目に派手でもないし、かっこよくもないし、毎日コツコツ頑張ることはそんなに楽しいことでもありません。注意しましょう。今日した努力はすぐには結果に結びつきません。もし今日頑張ったことが、明日すぐ結果になって現れるのであればみんなもっと努力しているはずです。そうならないところが受験のおもしろくないところであり、受験のおもしろいところなのです。今日がんばり、明日がんばり、がんばり続けたことが結果になってあらわれるのは半年後です。

③頭と体が一致するには一週間かかる!

 私が担任をしていた頃、私の受け持ったクラスは他のクラスよりいつも定期テストの成績が良かったものでした。それにはわけがあります。私はクラスの生徒に二週間前から勉強する気持ちにさせていました。普通、試験の一週間前になると部活動もなくなり、さあ勉強しようかなという気持ちになります。しかし一週間前では遅いのです。頭(勉強しようとする気持ち)と体(実際に勉強する行動)が一致するには一週間かかります。やっと調子がでて来た頃には試験がおわってしまっているのです。また一度良い成績をとると、もう一度良い成績をとりたくなります。成績を悪くしたくないと誰でも思います。クラス全体をこの気持ちにさせることが大切です。

④人がやらないときにやる!

 私が校長をしていた頃、学校全体の成績を良くするために、ここで勉強をきちんとさせようとしていた時期があります。それは期末テストから長期休暇までの間の時期です。例えば、1学期の期末テストが終わりました。生徒は「夏休みになったら頑張ろう。」と思います。「でも夏休みまで時間があるので‥・」と考えて気を緩めてしまいます。これが問題なのです。実際に夏休みに頑張れるのは、夏休みまでに頑張ってきた人なのです。だから、期末テストから長期休暇までの間の時期が大切なのです。人がやらないときに頑張ることが大切です。3年生になると目標も定まって、誰も勉強に勢いがついてきます。誰もが頑張る中、相対的な値である偏差値を上げるのはとても難しいことです。自分の点数が上がっても、他の人の点数も上がれば偏差値は上がらないわけですから。だから2年の今から頑張ることが大切です。部活動も一緒です。勝とうと思ったら、試合のない冬に頑張ることが大切です。試験も試験の日で合否が決まるわけではありません。部活動も試合の日で勝ち負けが決まるわけではありません。そこまでにどんな努力をしてきたかで決まるのです、試験の日。試合の日の前に結果はもう決まっているのです。

⑤どんな予習をしていますか?考える予習をしましょう!

 まずは普段の授業を大切にしましょう。授業のための予習がきちんとしてできているか、どのような予習をするかが問題になります。私が以前、成績がずば抜けて良かった生徒の何人かにどんな勉強方法をしているかを聞いたことがあります。その方法を紹介しましょう。例えば英語です。まず英文を辞書を使わずに、分からない単語があっても考えながら訳します。次に辞書を引いてわからなかったところ、間違ったところを直します。分からない単語を辞書で引いて、教科書に書き込んだだけでは考える予習をしたことにはなりません。時間は1時間30分くらい予習に使いましょう。次に数学です。授業が黒板の人の答えを写すだけで終わっていませんか。それでもかまいません。ただし、授業で写したノートを家に帰って必ず見てください。そしてもう一度自分で問題を解いてみましょう。ただ作業するだけでなく、自分で考える学習をしましょう。

⑥一番の進路指導は生活指導です!

 挨拶・服裝・掃除・時間を守ることなど、普段の生活で「当たり前のことを当たり前のようにできること。」ができた高校は、進学の実績もすぱらしいものになります。それはなぜでしょうか。私はまず、遅刻の数を減らすことから取り組みました。遅刻にはいろいろな理由があるでしょうが、しかし、その大半は怠け心からくるものです。人との約束(集団のなかでのルール)が守れない人が、自分との約束(例えば今日は12時まで勉強しよう)を守ることができるでしょうか。自分の中のあきらめない精神、粘り強く頑張る精神は自分との約束を守ることから養われます。次に服装です。私は制服はスポーツのユニフォーム、学校は道場だと考えます。スポーツの強いチームに、ユニフォームをだらしなく着ているチームがあるでしょうか。ユニフォームは「集団の力」を生み出すものです。しかし一人の乱れた服装が「集団の力」を弱めてしまいます。良い雰囲気を台無しにしてしまいます。「私の服装で誰にも迷惑をかけていない。」などと思っていたら大間違いです。「あなた一人がみんなを崩しているのです。」また、「あの先生は…だから。」と教員の批判をする人がいます。しかしそれは、自分が努力をしていないため、その言い訳のための逃げ場を作っているに過ぎません。自分の行動によって得をするのも、損をするのも、実は生徒自分自身なのですけれど。「当たり前のことを当たり前のようにできること」は自分の逃げ道を作らず、目標に向かってひたむきに努力することにつながります。そして試験においても、部活動での大会でも「本番での勝負強さ」につながるのです。


 明日は、鞁嶋先生の講演記録・第2弾をお送りしますのでお楽しみに。♥♥♥

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