英語の諺

 今年の京都大学の前期試験の英作文問題に「転ばぬ先の杖」という諺が出題されました。

 2017年には、「生兵法は大怪我のもと」が出題されています。

  生兵法は大怪我のもとというが、現代のように個人が簡単に発信できる時代には、とくに注意しなければならない。聞きかじった知識を、さも自分で考えたかのように披露すると、後で必ず痛い目にあう。専門家とて油断は禁物、専門外では素人であることを忘れがちだ。さまざまな情報がすぐに手に入る世の中だからこそ、確かな知識を身に付けることの重要性を見直すことが大切である。     (2017年 京都大学)

 もちろんこのような英語の諺(Look before you leap./A little learning is a dangerous thing.)を知らなくても、その意味するところを分かりやすく英語に直せばOKなんです。「転ばぬ先の杖」なら、 You should make every effort to prevent any trouble before you start something new. /You should take precautions to avoid a mistake./ You should do as much as you can in order not to fail./ You should think carefully before doing  something./ You should think about the possible results or dangers of something before doing it.などと表現することができますね。また「生兵法は大怪我のもと」なら、A little bit of knowledge can be dangerous./ Not knowing enough about something can lead you into dangerous situations.といった具合です。 

 私は大学入試(国公立大・私大・短大)に出題される英語の諺を調べて、「英語の諺30」というプリントを毎年配布して、難関大学を受験する生徒たちには覚えてもらっていました。もちろん、ここに出てきた「転ばぬ先の杖」「生兵法は大怪我のもと」も収録されていますよ。だいたいこの30個を覚えておけば大丈夫!というリストになっています。教室で演習にも使えるようにワークシート形式になっています。「ダウンロードサイト」に登録されていますので、教室で使ってみてください。

・八幡成人(編)「英語の諺30」 ⇒コチラで利用できます

 『ライトハウス英和辞典』(研究社)の編集作業をやっていた頃、当時の英和辞典の中には、現在もう使われなくなった古い諺が山のように残っていました。アメリカ人やイギリス人の中で、よく使われるものだけを収録しようという編集方針で、英米の学者・ネイティブの方々に協力してもらって、現代英語の諺の実態を調査したことがあります。それを基にして、古くなった諺は全部削除していきました。昨年末に、奥田隆一先生(関西大学)が、新聞記事のデータベースを用いて、英語の諺の使用の現状と特徴をまとめた画期的な本が出版されました。奥田隆一『英語のことわざ使用の実態』(関西大学出版部、2020年、1900円+税)がそれです。英語学の分析方法や知見を基礎に、諺の表現形式に注目しながら、現代英語で実際に使用されている具体例を検討し、英語の諺の使用の現状とその特徴を明らかにしておられます。諺表現の英米差にまで踏み込んで考察しておられます。

 「英語の諺の使用実態」という、他の学者があまり取り上げなかった分野を開拓されたパイオニア的研究として注目されます。これによって英語の諺の使用実態がかなり明らかになりました。巻末には「使用頻度リスト」まで収録されています。どのような諺が現代英語で頻繁に使われていて、どのような諺がほとんど使われなくなってきているのかが分かるようになっています。御一読をオススメしておきます。♥♥♥

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