念願目標だった635冊を突破された国民的作家・西村京太郎先生の最新刊『十津川警部 四国土讃線を旅する女と男』(小学館、2021年3月)を読みました。元々は小学館発行のPR誌『本の窓』(小学館)に「四国まんなか千年ものがたり 四国土讃線を旅する男と女」(2019年8月号~2020年12月号)というタイトルで連載された作品に、加筆修正されて出版されたものです。最後のどんでん返しも面白かった。あらすじは次の通りです。
四国土讃線を走る人気観光列車「四国まんなか千年ものがたり」で起きた謎の死亡事件と国際先端技術開発の闇を十津川警部が追う!技術力で世界に知られた緒方精密電気。その課長補佐である神崎には社長の緒方から受けた密命があった。それは緒方が国際会議でホノルルへ行っている間、才色兼備の秘書・高見沢愛香の四国へのプライベートな旅行に同行することだった。緒方は愛香との結婚も考えており、神崎に慎重で綿密なスケジュールを組ませ、愛香の身の安全を求めた。二人が徳島の祖谷渓を訪ねた日、名所かずら橋から若い女性が転落死する。女性の背格好や服装が愛香に似ていると知った神崎は、愛香と間違えて殺されたのではと疑う。そして「四国まんなか千年ものがたり」の車内で突然の爆発事故が起きる。血まみれの車内で愛香の運命は!?これは緒方精密電気の技術を狙ったテロなのか……。国際的な先端技術開発と複雑な人間関係の裏側に迫る十津川警部が探り出した驚愕の真実とは! (小学館ホームページより)
この本のモチーフとなっているのは、JR四国の新しい観光列車「四国まんなか千年ものがたり」です。本文の中には何度も登場します。
「最近、四国で面白い列車が走っているだろう?確か名前は『四国まんなか千年ものがたり』という今流行の観光列車だ。それも土讃線を走っているはずだから、それに乗せてやったら彼女、喜ぶんじゃないかな。それはスケジュールに入れてないのか?」(p.11)
「ここから、いよいよ、緒方社長推薦の観光列車「四国まんなか千年ものがたり」に乗るのである。たった三両の編成だが、全てグリーン車である。(pp.71-72)
確かに、車内は、広々として、贅を尽くしていた。シートは、さまざまな形が用意されている。ボックスシートもあれば車窓の景色を楽しむために窓向きのシートもある。(p.73)
私は、2017年より運行を開始したこの素敵な観光列車「四国まんなか千年ものがたり」を、昨年末に偶然「JR琴平駅」で見ています。この列車は、日本経済新聞社が行う「日経優秀製品・サービス賞2017」にて「日経MJ賞」を受賞しました。香川県の多度津駅(たどつえき)から徳島県の大歩危駅(おおぼけえき)間を結ぶ観光列車です。「四国まんなか千年ものがたり」は3両編成です。外装は車両ごとに日本の四季をイメージしたカラーリングが施され、車内のインテリアは統一されていて木の温かみを感じることが出来る造りになっています。2017年3月16日、国内最大規模の大型観光キャンペーン「四国デスティネーションキャンペーン」を記念してリニューアルされた「JR琴平駅」に、新観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の乗客専用ラウンジ「TAIJU」が新設されました。駅員さんのご好意で中を見せていただきました。その入口の扉を開くと真正面に見えるのが『こんぴらさん』の巨大社紋。この巨大社紋は、金刀比羅宮のご社紋というだけではなく、門前町琴平、神都琴平のシンボルでもあります。金色に輝くビッグなご社紋が、琴平を訪れる多くの人々を優しくお迎えすることでしょう。こんな風に、私はこの列車に若干の予備知識があるので、余計に思い入れを持ってこの本を読むことができました。
また、この本の中には次のような、松山市内の記述が出てきます。私は2015年に、松山を訪れたときに、駅や街の至る所に、またホテルの中にも「俳句ポスト」や「投句用紙」が置かれているのを目撃しているので、よく理解できるんです。
「この松山は、俳句が有名で、観光客のために、市内に何か所も投句のポストが置かれているんです。一か月に二回、その審査会があるんですが、今日がその日で、審査の模様を見てきました」と、愛香が楽しそうに、報告する。(p.150)
予備知識を持っていると、このようにある種の思い入れを持って本を読むことができます。今年初めての「共通テスト」の問題に出題された「天橋立」や「ワンガリ・マータイ」さん、「人工甘味料」「アメリカンフットボール」なども、訪れたり、本で読んだりして知っていた人には、特別な思いが湧いたはずですね。♥♥♥
★予備知識が思い入れに★