「奥出雲おろち号」

  「木次線」の利用促進を目的として、JR西日本が1998年から運転を行っている観光トロッコ列車が「奥出雲おろち号」(定員64人)です。4月から11月までの金曜日・土曜日・日曜日およびゴールデンウィークと夏休みならびに紅葉シーズンの平日に、宍道駅~備後落合駅間(約81キロ)で1往復運転されています。2010年度からは、日曜日を中心に備後落合行きのみ、出雲市駅始発で延長運転されています(年間約150日)「奥出雲おろち号」出雲市駅までの片道延長は、斐伊川流域の関係市町でつくる「出雲の國・斐伊川サミット(出雲市、雲南市、奥出雲町、飯南町、斐川町)」が、新たな観光ルートの創出や交流人口の拡大策として、JRに提案し、実現したものです。島根県外からの観光客が利用する人気列車として、島根県を代表する観光資源として成長しています。なお、トロッコ列車の運転にあわせて「奥出雲おろち号」の車内や、長時間停車駅では、お弁当やそばなどの沿線の特産品が発売されています。レトロでウッディな車両と、開放的な客席から、山間部ののどかな景色と、季節の移り変わりと景色を肌で直接感じることのできる人気のトロッコ列車です。前から一度乗ってみたいと思っていましたが、なかなかチャンスがなく、今日初めて宍道駅から木次駅まで乗車してきました。

 列車の外観は、島根デザイン専門学校によるデザインで、神秘的な宇宙区間を走る銀河鉄道をイメージして、爽やかなマリンブルーと鮮やかな白のカラーリングを基調に、青と銀のラインと大小の星のマークを添えています。さらには、出雲神話に登場する大蛇「ヤマタノオロチ」をモチーフとしたエンブレムや、ウッディなしつらえの客席など、列車自体が魅力的で興味深いものとなっています。備後落合方のスハフ13 801がトロッコ車両で、窓がなく、木製の座席が並び、風や景色をダイレクトに感じることができます。運転台があるため機関車交換は不要です。前面には前照灯とスカートとスノーブラウが設置されました。客室部分は窓のない開放的なオープン構造で、車内には不燃化木材が使用され、一部の座席は外側向きに設置されています。照明はランプ風のものとなっています。もう一方の2号車スハフ12 801は、控車となっており、青色の簡易リクライニングシートが車内に並び、1号車の指定席番号で2号車の同じ座席を利用することができるんです。雨や寒いときにはこちらに乗り換えることができます。冷暖房とトイレ・洗面台が完備された控車です。

 ディーゼル機関車であるDE15(2558)またはDE10(1161)と、12系客車2両(スハフ12 801、スハフ13 801)が連結された3両編成で、車体塗装は白・青・灰色地に星模様を散らした塗装としている。DE15 2558は運転当初から専用機関車として使用されていますが、冬季は除雪列車にも使用されるためラッセルヘッド取り付け部はそのまま残されています。スハフ13 801はスハフ12 148を改造した車両で、1号車として備後落合寄りの先頭に連結されるトロッコ車両です。従来の車掌室部分の一部に運転室が新設されています。

 全長2,241mもある木次線の路線上で最長のトンネルを通過する際には、車内の天井にあるヤマタノオロチのイリュミネーションが色を変えながら輝きます。さらには、全国でも珍しい「三段式スイッチバック」が有名です。急勾配の山肌を三段階に折り返してコトコト上っていくのです。が、私は残念ながら、途中の木次駅で降りてしまったので、体験することはできませんでした。♥♥♥

◎この観光列車、運行終了に!!

【追記】 この観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」が、2023年度で運行を終了することが、JR西日本より発表になりました。製造から40年以上経つ老朽化した車両の更新と、部品の調達が困難なことが理由です。利用者が低迷する木次線の存続にも大きな影響を及ぼすことが想定され、丸山達也島根県知事「トロッコ列車は観光振興の重要な柱。地元の市町と連携して運行の継続を要望したい」と述べました。木次線は、1日1キロあたりの平均利用客数(輸送密度)は、1987年度の663人をピークに、少子高齢化やマイカー利用増加の影響で、2019年度には190人まで減少しました。2019年度の旅客運輸収入は約6,200万円で、JR西日本管内の51路線中、下から三番目でした。同じ島根県を通っていた三江線が廃止された今、平均通過人員の少ない路線として(私の帰りの電車には3人しか乗客はいませんでした)、この木次線が大きくクローズアップされることになってきます。沿線の危機感には大きいものがあります。そんな中で、大好きな西村京太郎先生は、2019年1月、十津川警部シリーズとして、『出雲伝説と木次線』(ジョイノベルス)を刊行されました。神話の里を走るJR木次線の列車がトレインジャックされるという大胆な物語です。西村先生は、経営改善のために地方で奮闘している、こうした小鉄道へも愛情あふれた優しい視線を注いでおられます。2018年以降でも、『広島電鉄殺人事件』(2018年)、『西から来た死体 錦川鉄道殺人事件』(2018年)、『ストーブ列車殺人事件』(2018年)、『能登花嫁列車殺人事件』(2018年)、『十津川警部 海の見える駅 愛ある伊予灘線』(2018年)、『十津川警部 長崎路面電車と坂本龍馬』(2018年)、『知覧と指宿枕崎線の間』(2019年)、『十津川警部 怒りと悲しみのしなの鉄道』(2019年)、『富山地方鉄道殺人事件』(2019年)、『えちごトキめき鉄道殺人事件』(2019年)、『十津川警部 仙山線<秘境駅>の少女』(2019年)、『西日本鉄道殺人事件』(2020年)、『愛の伊予灘ものがたり 紫電改が飛んだ日』(2020年)、『十津川警部、廃線に立つ』(2021年)、『十津川警部 四国土讃線を旅する女と男』(2021年)、『石北本線殺人の記憶』(2021年)などがあります。作品の中でも、優しい目で地方鉄道を取り上げておられるのです。♥♥♥

▲松江「今井書店」センター店にて

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