リニューアルされた「永井隆記念館」をタクシーで訪ねた折に、運転手さんが、永井隆先生が育った家がこの町にはあるんですが、自分がまだ新米運転手だった頃、どこにあるか知らなくてお客さんに叱られた、という思い出話をしてくださいました。せっかくここまで来たんだからと思い、「永井隆博士生い立ちの家」に回ってもらいました。山奥深く、車はどんどん入っていきます。山道の途中で車を降り、小さな坂道を登っていくと、茅葺き屋根の家に着きました。


博士が少年時代を過ごした茅葺き屋根の家「永井隆博士生い立ちの家」は、島根県雲南市三刀屋町多久和に屋敷を構えている古民家です。永井 隆博士は、明治41年(1908)に松江市で生まれ、翌年、父親が現在の雲南市三刀屋町で開業医をするため、両親と共にこの地に移り住み、小学校を卒業するまでの10数年、この家で過ごしました。主屋は木造平屋建て、入母屋、茅葺、平入、外壁は真壁造白漆喰仕上。別棟は木造2階建て、切妻、桟瓦葺、平入、外壁は真壁造白漆喰仕上、腰壁は下見板張り縦押縁押え、2階が診療所、1階が馬屋として利用されていました。現在も内部などは改変されましたが、外観などは当時のままで保存されています。博士は旧制松江中学・旧制松江高校・長崎医科大学と進みますが、休みの度に帰省しては友人・知人たちと交流を深めました。地元の人たちからは、「隆さん、隆さん」と親しまれていました。
家の周りの写真を撮っていると、親切そうな隣人の方が近づいて来られ「どちらから来られましたか?」―「松江からです」―「お時間があれば詳しくご説明をしたいと思いまして」。帰りの電車の時間もあり(木次線は2時間に1本しか走っていないので、1本乗り外すと2時間待たなくてはならないんです)、道の下にタクシーを待たせていたので、丁重にお断りをして坂道を下りました。残念ながらお話しを伺うことはできませんでしたが、貴重な経験でした。♥♥♥