Nick Trost大好き!

▲故・ニック・トロストさん

 私がマジック・クリエーターのニック・トロスト(Nick Trost, 1935~2008)さんを初めて知ったのは、東京・渋谷のマジック・ショップ「ウィザード・イン」で買った「インクレダブル・デック」(Incredible Deck)というカード・マジック作品でした。当時の私にとっては、これがまたとんでもない衝撃的な作品だったんです。

 デックの上半分の赤裏を、相手に渡してよくシャッフルしてもらいます。演者も下半分の青裏の部分を、よくシャッフルします。相手に持っている赤裏のカードの中から、表を見ないでカードを1枚選んで、演者の持つ青裏のカードの上に乗せてもらいます。よくカットして、今度は演者も1枚青裏のカードを相手の赤裏のカードに乗せます。カットしてもらいます。お互い持っているカードを、それぞれテーブル上にリボンスプレッドしてもらいます。演者の青裏デックの真ん中辺には1枚相手の選んだ赤裏カードが、相手の赤裏カードの中には演者の選んだ青裏カードが1枚ずつ入っています。それぞれのカードを取り出してみるとどちらも「ハートのQ」で完全に一致しています。とても不思議です。「ひょっとしたら全部が同じカードだと思っているんじゃないですか?」「実は…その通り!全部同じカードだったんです!」と言って、すべてのカードをスプレッドすると、さっきとは全く違う別の同一カード「スペードのA」なのです。えーーっ?!そんなバカな(仰天!!)

 当時、あまりにも意表を突く見事なフィニッシュに魅せられてしまった私は、以来、せっせとニックさんの作品を集め始めることになります。今でこそ、商品をインターネットで直接簡単に海外から取り寄せることが可能になりましたが、当時はそのような環境にはなかったので、日本中のお店で偶然発見したものや、海外のマジック・ショップのカタログで見つけては、ポツリポツリと一点ずつ収集していったのです(海外への送金も大変な時代でした)。非常に多作なクリエーターなので、ものすごい数のカード作品が残されていますが、今ではかなり集まりました。2008年10月23日にお亡くなりになったのですが、最近では、彼の考案した作品を収録した個人全集が第8巻まで出ています(写真下)。リバイバル作品もポツポツと。お亡くなりになった鬼才・アルド・コロンビニ(Aldo Columbini)さんも、彼を崇拝していたらしく、DVDによるニックさんの作品解説集を、シリーズで発表し続けていました。これらも、私は直接コロンビニさんより買っています。

 オハイオ州に生まれたニックさんは、7・8歳の頃からマジックに魅せられます。オハイオ州で行われたIBMの大会のマジック・ショーを見たことがきっかけです。そしてカード・マジックの世界に引き込まれていきます。兵役を経て、彼は、The New Topsという雑誌にカード・マジックのコラムを書き続けました(1961年5月~1994年12月)。数々の賞を受賞し、とんでもない量の作品を残して、2008年10月23日に脳腫瘍でお亡くなりになりました(享年73歳)。お亡くなりになってからも、作品が発売されたり、作品集が刊行され続けています。私はそれをせっせと集め続けているのです。

 ニックさんの作品の全貌を知るために、最も良いものが、The Card Magic of Nick Trost (1997)と、その後に続いて出ている作品集Nick Trost’s Subtle Card Creations, Vol.1(2008)~Vol.8(2020)でしょう。それぞれが200ページを超えるハードカバーの堂々たる書籍です。ページは第1巻から通し番号で打たれているので、本のページが1589ページから始まっていたり、章が72章から始まったりしています。通巻のナンバリングになっているのです。やっぱりハードカバーだと迫力が違い、書架に並べても見栄えのよい大作ですね。それぞれ収録作品数も100トリック以上です。タイトルにも Subtle という単語が入っていますが、まさにニック・トロストさんこそが、最近のジョン・バノン(John Bannon)さんらに先駆けて、 Subtlety(サトルティ)に重きを置いた「頭脳派の元祖」的な存在なのではないかと思っています。難しいテクニックや技法よりも、巧妙なムーブや基本原理によるカード・マジックの完成形を追い求めた根っからのカーディシャンでした。優れたクリエーター・バリエーターとして、雑誌の連載や、単独販売の冊子・商品などを含む膨大な量の作品を残し、お亡くなりになったその後も、こうして作品集が出続けていること、まさにこれこそ自体がマジックですね。このシリーズは、ニック・トロストさんの個人作品集であり、全作品をまとめた百科事典とも言えるものです。

 ニックさんをこよなく尊敬し愛する私は、この全集を第1巻から第8巻まで全部アメリカから取り寄せて揃えています(海外でも第1巻に関しては絶版のようですね)。おそらくまだ続巻が刊行されるだろうと期待しています。ここに収められた莫大な作品をじっくりと読み込んで、練習して演じてみたいと思っていますが、今は残念ながら時間的にその余裕がありません。♠♣♥♦

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