民間試験・記述試験断念

 大学入試の在り方を議論してきた文部科学省有識者会議は、2025年の「大学入学共通テスト」における、「英語民間試験の活用」「記述式問題の導入」について「実現は困難」とする提言案を示しました。これを受けて文部科学省は、この夏にも導入の断念を正式に決定する方針です。今年から始まった「大学入学共通テスト」では当初、入試改革の柱として、英語の民間試験の活用と、国語と数学の記述式問題が導入される予定でしたが、地域格差や経済格差の懸念など制度の不備への指摘が相次ぎ、おととし、いずれも導入が見送られました。その後、文部科学省は、新たな学習指導要領で学ぶ、今の中学3年生が受験する2025年以降の大学入試の在り方について有識者会議を設け、先の2つの柱について、改めて「共通テスト」への導入の可否を検討してきた結論がこれです。私は当初から、「公平・公正さを担保できない」というただ一点から疑義を表明していました。

▼英語の「読む」「書く」「聞く」「話す」の総合的な力の評価に英語民間試験」を活用することについては、試験ごとに会場数や受検料、障害のある受験生への配慮が異なる中、地理的、経済的事情などによる格差への対応が不十分な点や、コロナ禍で中止も相次いだ外部の試験に依存することへの課題が指摘されました。都市部に比べ、地方では試験や会場数が限られ、受験機会の面や移動に伴う経済負担の面で地域格差が課題となったほか、受験料が高額で、経済的に厳しい家庭の受験生への減額措置が試験団体に委ねられる中、経済格差が生じる、障害のある受験者への配慮が不十分、目的や難易度の異なる複数の民間試験を同一基準で公平・公正に評価することは困難、試験実施団体が試験対策の参考書を発行する利益相反、など様々な指摘が相次ぎました。こうした中、2019年10月には萩生田文科大臣「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえば」という無神経な発言もあり、高校生や学校現場から導入への批判の声が上がる中、文部科学省はこの年の11月、2020年度からの導入を見送ると発表したのでした。

 ただし、「英語の外部試験を断念」といっても、外部試験の結果を入試に組み入れていることは以前からあり、これからも続きますから注意して下さい。受験資格に、英語の得点に加算、試験の得点に換算など、様々な利用の仕組みが存在しています。

記述式問題も、50万人以上が受験する中で公正な採点体制の確保などの課題を克服できないとして、いずれも「実現は困難と言わざるをえない」と盛り込まれました。50万人以上の答案を短期間で採点する中で、質の高い採点者を確保できるのか、民間の採点事業者が業務で知り得た情報を漏えいしたり、受託自体を宣伝に利用したりしないかなど、公正、公平な採点における課題が指摘されました。そして、英語の民間試験導入の見送りの発表から1か月後、文部科学省は記述式問題についても「安心して受験できる体制を整えることは現時点では困難」として、導入の見送りを発表。初の「大学入学共通テスト」を、およそ1年後に控えた受験生や教育現場は混乱を余儀なくされました。

 この「大学入学共通テスト」での英語民間試験活用記述式問題導入の見送りに伴い、「大学入試センター」が試験実施団体などに対し、損害賠償などとして計5億8900万円を支払いました。大学入試センターは、英語民間試験の実施団体から受験生の成績を通知してもらい、各大学に提供するシステムを2020年度から導入する予定で、ベネッセコーポレーション日本英語検定協会など6団体と協定を結んでいました。しかし、2019年11月に文部科学省が延期を決定したのに伴い、システム改修費用などの損失分を今年3月に補償しています。記述式問題では、センターは23年度までの採点業務として、ベネッセホールディングス子会社の学力評価研究機構と約61億円の契約を締結。2019年12月に見送りが決まったため、2020年1月に契約を解除し、同機構に準備費用を損害賠償をしました。センターは約10億円の積立金から賠償金を支払ったとのことです。文科省は「契約主体である入試センターが補償した」と説明。センターは賠償金の内訳や支払先を明らかにしてはいません。取材に対し、ベネッセは入試センターから賠償を受けたことを明らかにした上で、「金額は控える」と回答しました。

 さて、「大学入試センター」は来年度以降、年間約5億円の赤字を試算しています。2024年度には約13億円の赤字が出るとも試算されています。18歳人口の減少による受験者減が理由です。50万人以上が受験し、約9割の大学が利用する共通試験の運営基盤が揺らぐ事態になれば、将来的な検定料の値上げにつながりかねません。センターの収入(国の補助金を除く)は、志願者の検定料(3教科以上は1万8千円、1教科以下は1万2千円―平成17年度以降据え置き)が全体の約9割、利用大学が払う成績提供手数料が1割近くを占めています(来年度は一応据え置きが発表されています)。国昨年度の経常収益は、大学入試改革のための国の補助金を含めると約130億円で、作問や印刷などの経常費用を引いた総利益は約4億5千万円。志願者数は、2018年1月実施の約58万人を境に減少し続け、1月の共通テストの志願者数は約54万人と前年比約2万人減。関係者によると、これに伴い志願者から支払われた検定料は、昨年より4億円近く減ったといいます。民主党政権時代の「事業仕分け」により、2011年度から国からの運営費交付金(2010年度は8,000万円)は廃止され、自己収入が大半です。「大幅赤字が予想され、共通テストを安定的・継続的に実施するため」に、今年度の「共通テスト」の大学への成績提供手数料を、1件あたり180円値上げして750円にしたことなどから、何とか赤字は免れる見込みです。利用した866大学に延べ約155万件の成績提供が行われました。だが来年度以降はさらなる志願者数の減少が予想されており、センターが独法化した2001年度以降、施設整備費などで一時的に収支がマイナスとなったことはあるが、初めて恒常的な赤字が見込まれています。来年1月の第2回共通テストでは、成績提供料を1200円に引き上げ、第3回以降は1500円にします。継続的・安定的な運営に向けては、①収入確保、②経費削減、に努める必要があるでしょう。このままでは実施自体が困難なことになってきます。

 そもそも大学自体も、私立大学の3分の1は定員割れ、全体の4割が営業赤字、短大にいたっては、約4割が定員割れ、約6割が営業赤字となっています。選ぶ方も、選ばれる方も、大学入試は厳しい時代を迎えているということです。♥♥♥

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