「事実」と「意見」区別の難しさ

 これは今年の「大学入学共通テスト」(第一日程)第2問 問4「事実」を選ぶ問題ですが、この新傾向の問題を指導する際に、目安として、「事実」は文章の中心が「名詞」・「動詞」・「数値」で表され、意見」「形容詞」「副詞」(主観的な意見を表す)や「助動詞」(話者の意見や考えを表す)を使って表現されることが多いことは知っておいて良いでしょう。さらには、「事実」「意見」を導く際によく使われる頻出表現を知っておくことも役に立つでしょう。

【事実を述べる時の表現】 demonstrate/ according to/ confirm/ discover

【意見を述べる時の表現】 claim/ argue/ view/ suspect

 例えば、上に挙げた問題では、「重要である」とか「節電しなければいけない」「保護が必要だ」といった点に注目することで、消去法」で簡単に正解を見つけることができます。ただここでちょっと注意しておきたいのは、事実」「意見」の境界線が非常に微妙である場合があることです。本文には、The report showed that our city has become less safe due to a 5% increase in serious crimes.(警察の報告書によれば、重大犯罪数が5%増加したので町が以前より安全でなくなった)と出ています。したがって②「町の安全性が減少している」を選ぶことになるのですが、重大犯罪数が5%増加したのは間違いなく「事実」です。ただそれをもって安全性が低下した、とすぐに結びつくのか?という素朴な疑問が生じてきます。なぜなら考えようによってはこれは、警察側の解釈・意見とも言えるわけです。

 「事実」「意見」の峻別には、こうした難しい側面をはらんでいるということを指摘しておきたいと思います。実は第1日程の問題の他の部分でも、そして2週間後に行われた第2日程の問題の中にも、若干疑義を抱かせるような選択肢がありました。先生方は、この2つの試験問題を丁寧に解いてみられることをオススメします。きっと気づきがあると思います。

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 私は去る6月19日(土)の「オンライン講演」(ラーンズ主催)で、このような問題を指摘して、二つの実例を挙げて、両者の区別の難しさを考察しました。この講演は現在ラーンズ研究会情報」でオンライン録画で視聴することができます。当日配布した資料もダウンロードしていただくことができます。「共通テスト」対策にお役に立てていただけるものと思います。ご希望の方は、こちらからお申し込みください。⇒コチラです♥♥♥

 「試行テスト」にもあったように、「事実」と「意見」を識別させる問題が出題されました。新しい傾向の問題です。苦手としている生徒も多いようです。なぜこのような「事実」と「意見」を区別するという問題が出題されるのでしょうか。その真意は一体何でしょう?現在、インターネット上では記事と読者が書き込んだコメントが混在しています。そこには真実もあれば、フェイクニュースもたくさん存在しています。このように「事実」と「意見」が混在するネット情報を、自分の力で正しく読み解いて欲しい、という出題者の意図が見え隠れしています。
 情報を取得する際には、「何が事実で何が事実ではないか」ということが大切です。ここを捉えた問題ということですね。ある情報が「主観的」か、「客観的」かを判断するためには、自分が読む英文がどのような情報を伝達しているかを意識する「思考力・判断力」が求められています。この問題を指導する際に、「意見」は「形容詞」や「助動詞」を使って表現されることが多いことは知っておいて良いでしょう。

▲かやちゃん

 さて、私はフジテレビの「めざましテレビ」のお天気キャスターのかやちゃんが大好きで、写真集まで買って応援をしています〔笑〕。朝6時26分頃の「キャンキャンのスタイリストさんが選んでくれたコーディネイトがこちらです……」を毎日見てから、北高に向かいます。さてここで、「めざましテレビのかやちゃんは可愛い」は明らかに主観的な「意見」です。ネット上には、「ぶりっ子だ、可愛い子ぶっている」などとひどいこともたくさん書かれています。これに対して「かやちゃんは早稲田大学出身だ」は「事実」です。「かやちゃんはお天気キャスターお姉さんの中で一番人気がある」は「意見」ですが、ではそれを裏付ける週刊誌の調査結果が添えられたらどうなるでしょう?ちょっと事実っぽくなってきませんか?それともあくまでも週刊誌の意見でしょうか?
 もう一つ例を挙げてみたいと思います。私の住んでいる松江市のJR駅南口に、新しいケーキ屋さん「Ciistand」があります。開店は11時なんですが、その頃に行くと長い行列ができています。私が米子から帰る午後4時前に立ち寄ると、「完売の

▲「Ciistand」

ため閉店しました」と閉まっていてケーキを買うことができません。さあ、ここで「Ciistandのケーキはどれも美味しい」、これは明らかに「意見」ですね。個人差がありますからね。「ケーキの売り上げは天気に左右される」―これはどうでしょうか?「意見」ですか?これは、先日私が店長さんから聞いた言葉なんですが、もしそんなお店のデータが示されたらどうなるでしょうか?事実っぽくなってきたでしょ。いや全体的・客観的な調査でないなら、それは「意見」に過ぎない?他の要因も考えられないか?このように「事実」と「意見」両者の区別は微妙な問題をはらむこともあり、深く考えれば考えるほど悩んでしまいます。
 なんでこんな話を長々としたかというと、実際、今年の「共通テスト」第1日程、第2日程の両方において、若干疑義のある選択肢が見られました。先生方もじっくり問題と向き合ってみてください。生徒たちには、あまり深入りせずに、割り切って答えるように言っておいてやるのが得策かもしれません。

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