相互乗り入れ

 先生方からよく「読解力をつけるためにどんな教材を使ってどのような指導をしておられるんですか?」と聞かれますので、今日は私が「勝田ケ丘志学館」「松江北高補習科」で使っている、『Reading High-level(改訂版) 』(ラーンズ)をご紹介しますね。長年この問題集を愛用していますが、力をつけるのにはもってこいの教材です。読み応えのある英文の難易度が徐々に上がっていくので、手応えを感じながら指導ができるんです。残念ながら、この教材はこの4月に絶版になったために、もう今年が最後の使用になりました。私は今生徒たちに、この教材最後の指導を行っているんです。先日の「オンライン講演」でもお話させていただきましたが、リーディングの授業を通じてリスニングの指導もやる、リスニングの授業でスクリプトを徹底的に読み込むリーディングもやる、という「相互乗り入れ」で力をつけていきます。講演後に先生方から質問もありましたので、もうちょっとこのことを補足しておきたいと思います。

 生徒はこの問題集を予習してくる中で、自分の読めない箇所を明らかにしてきます。まず冒頭に、今日やる1課の音声を聞きながら、自分の読めなかった箇所を確認させます。次に生徒たちに読めなかった箇所を発表してもらい、今日の授業の課題を全員で共有します。さあ、段落ごとに生徒に日本語訳をつけていってもらい、読めなかった箇所を詳しく吟味していきます。単に私が解説するのではなく、読めている生徒の力も借りながら、問題点を明らかにしていきます。知っておくべき表現や文化事項、背景などを語りながら、理解を深めていきます。私は生徒たちがどこでつまづくのかが、手にとるように分かるので、意地悪な質問を混ぜながら、さらに理解を深めていきます(例えば、先週の授業で出てきたのは、Ten or 15 years ago animal rights activists resorted to violence against humans in their efforts to break through the public’s terrible indifference and lack of imagination on this issue.で、なぜ綴り字と数字が混在しているのか?という疑問でした。)。表面的な訳ではなく、英語をきちんと読むとはどういうことなのかに焦点を当てて話しています。右ページの設問にも、その都度解答してもらいます。一通り終わると、復習用にこの1課の全訳と段落構成を書き込んだB4(1枚)のプリントを配布します。さらに、この1課の全文に重要な文法事項、読解のポイント、重要表現等を書き込んだB4(1枚表・裏)を配布して復習に役立ててもらいます。この「プリント」を、事前に喫茶店でコーヒーを飲みながら、手を入れて完成させています。このプリントを見ながら、もう一度音声を聞きます。自分の読めていなかった箇所が理解できたかどうかを再確認するのです。最後に何も見ずに目をつぶって、再度音声を聞きます。こんな風にリーディングの指導の中で、リスニングも行う。ちなみに私が教室にいつも持っていくのは、ソニーウォクーマンミニスピーカーです。教材の音声は全部この中に入れてあります。⇒この機器のご紹介はコチラです

 この後の読解演習の総仕上げには、毎年数研出版『Make Progress in English Reading』という長文問題集を使っています。これはもともと東大寺学園で作られ、洛南高校で編纂された上級編の読解問題集です。英文読解に必要なスキルは全てこの問題集の問題を解くことで身につけさせることができるので気に入っているんです。かなり歯ごたえのある長文が取り上げられていますので、これをきちんと精読させ、英語を読むというのはどういうことなのかを身を以て生徒たちに示しています。筆者の思いの理解にまで踏み込むために、「つなぎ語」「句読法」(引用符やコロン、セミコロンなどの意味)まで指導しておきます。授業では、まず最初に音声を聞かせ、予習段階で自分が分からなかった英文を意識させながら聞きます。生徒がつまづいた部分に注意しながら、解説を加え、読み終えると、この読んだ英文を100字の日本語で要約をさせます。「要約」というのは最高の読解問題だというのが私の持論です。そして最後に出てきた重要単語・熟語を整理したプリントを配布して、生徒たちに確認をさせます。ここで終わりません。もう一度音声を聞かせ、自分が読めなかった箇所の英語が理解できたかを確認させます。意味の分からない英文をいくら聞いてもリスニングの力はつきませんが、いったん意味の分かったものを聞くと頭に入ってくるんです。内容のポイントをQuestion & Answerで再確認することもあります。ネイティブの音声をアイシャードーイング、オーバーラッピングやシャドーイングすることも効果的です。そして最後に、英文に穴のあいたデクテーション用紙を配布して、聞き取りながら穴を埋めていきます。全部終わった後で、実際の入試問題の原典をやってみてもよいでしょう。私は長年この問題集を使っていますので、これらの活動に必要なワークシートを全て手作りして準備してありますので、毎年少々アレンジして使い回しています。教材は作るときには大変ですが、いったん作っておけば、次年度から簡単に使い回すことができますから楽チンですよ。

 与えられた情報を統合して答えを導き出すというプロセスは、リーディング、リスニング共に共通して求められている力ですから、リーディングの演習がリスニング対策に繋がる部分も大いにあると思います。読解読解リスニングリスニング、という授業ではなく、こんな形で、相互に乗り入れる形態の授業が力がつくようです。私の43年間の経験に基づく観察です。♥♥♥

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