８月１３日（金）、東京オリンピック期間中に中断していたプロ野球が再開しました。大好きな巨人軍は、後半戦「ワッショイ、ベースボール」を掲げ、その第１戦を全員野球の劇的な逆転勝ちで勝利しました。その最終回に思わぬドラマが待っていました。巨人の守護神・チアゴ・ビエイラ投手が、日本球界最速となる１６６キロを記録したのです。 長身から投げ込む力強いストレートが持ち味のピッチャーです。本拠地・東京ドームで中日と対戦した巨人は、２点リードの９回、５人目のピッチャーとして、守護神のビエイラ投手をマウンドへ送りました。先頭の高橋周平選手を三振に打ち取ると、続くＡ・マルティネス選手に投じた７球目。ファウルとなったストレートが、１６６キロを記録しました。これまで現ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平投手と、広島のコルニエル投手が今年６月に記録していた１６５キロを超える、日本球界史上最速の１６６キロです。 ビエイラ投手は、この剛速球の後に縦に落ちるスライダーを投げ、Ａ・マルティネス選手を三振に（この落差には対応できる訳がない！）、続く堂上直倫選手をセンターフライに打ち取り、今季１０セーブ目をあげて巨人の勝利に貢献しました。 この大記録にビエイラ投手は、「粘られていたし、勝負のカウントだったので力を入れていたのは事実。まさかそこまで速いとは思わなかったし、最高にうれしいよ」と、喜びのコメントを発しています。

　ビエイラ投手は、ブラジル出身の２８歳とまだ若い投手です。１７歳だった２０１０年にマリナーズと契約。２０１７年オリオールズ戦でデビューし、ブラジル出身５人目のメジャーリーガーになりました。その後、ホワイトソックスを経て、２０２０年に巨人入団。２年目の今季は、シーズン途中から守護神として３５試合に登板し、１０セーブ、防御率２．４５。今年の「オールスター」第１戦で１６３キロをマークしていました。昨年のソフトバンクとの日本シリーズ・第４戦では、自己＆シリーズ最速を更新する１６４キロを記録しています。身長１９３センチで体重１１３キロ、足のサイズは約３４センチ。アメリカ時代には、最速１６７キロを記録したことがある、と話していました。「巨人の巨人」が日本の球史に名を刻みました。今年の春のキャンプでは、「人間ですけど、限界はないと思っている」と、自己記録の更新に意欲をみせていました。 そのために誰よりも熱心に練習に取り組み（試合の始まる５時間前から来てグランドを黙々と走っているそうです。コントロール難で二軍に落とされた時も、原監督の指導を前向きに捉え、黙々と練習に励んだそうですよ）、宮本和知投手チーフコーチも「若手に１番見習って欲しいのはビエイラ」とその姿勢を評価するほどで、｢練習の鬼」として、誰よりも多くハードな練習を行っているそうです。原監督は試合後の勝利監督インタビューで、彼の人間性を褒め称え、「若いピッチャーとしてジャイアンツに来てくれて、何度もファームに行ったりでね。その都度、投手コーチと私とですね『今回はこういう課題だな』ということで明るく受け止めながら。前向きにファームに行っている姿を見て非常に頼もしかったし、そういう意味で成長してくれているなと感じますね」「ワンランク、ツーランクね、自分でも非常に手応えを感じているのではないでしょうか」と目を細めました。勤勉な守護神が、その剛速球と宝刀高速スライダーでチームを引っ張ります。制球力に難のあった彼が、スライダーという変化球でストライクが取れるようになったことで、持ち前の剛速球がさらに生きることになったのです。

　ちなみに大リーグでの最速記録は、「ギネスブック」によると、２０１０年９月２４日に、レッズの抑え左腕アロルディス・チャプマン（現ヤンキース）が、パドレス戦で出した１０５．１マイル（約１６９．１キロ）です。