藤井聡太論

 9月13日、藤井聡太二冠(王位、棋聖)豊島将之叡王(31歳)を下し、叡王を初奪取しました。この結果、19歳1ヶ月の藤井は三冠となり、羽生善治九段(50歳)の持つ22歳3ヶ月の最年少三冠記録(1993年=棋王、王座、竜王)を3年以上も更新しました。「まだ実感はないのですが……(三冠は)偉大な棋士ばかりで光栄に思います。ただ自分自身の今後が問われる。今まで以上に(将棋に)取り組んでいく必要があると思います。」 今までに三冠を達成したのは次の十人だけです。

《三冠達成者一覧》
①藤井聡太  棋聖・王位・叡王  2021年9月13日  19歳1ヶ月
②羽生善治  棋王・王座・竜王  1993年1月6日   22歳3ヶ月
③中原 誠  十段・棋聖・名人  1972年6月8日   24歳9ヶ月
④谷川浩司  王位・棋王・名人  1988年6月14日  26歳2ヶ月
⑤渡辺 明  竜王・王将・棋王  2013年3月24日  28歳11ヶ月
⑥豊島将之  棋聖・王位・名人  2019年5月17日  29歳0ヶ月
⑦森内俊之  竜王・王将・名人  2004年6月11日  33歳8ヶ月
⑧大山康晴  王将・九段・名人  1959年6月12日  36歳2ヶ月
⑨升田幸三  王将・九段・名人  1957年7月11日  39歳3ヶ月
⑩米長邦雄  棋王・王将・棋聖  1984年1月23日  40歳7ヶ月

 今こんな本がベストセラーになっています。谷川浩司『藤井聡太論 将棋の未来』(講談社α新書、2021年)です。今井書店チェーンにはどこのお店にも在庫がありませんでした。これはもうアマゾンに頼むしかない、と思って取り寄せたところ、ベッドの上に同じ本が置いてあった!先日、東京の丸善で買ってきていたのでした〔笑〕。1冊は、勝田ケ丘志学館の「共通テスト」模擬試験で最高点を取った生徒にプレゼントしておきました。最近、ボケてきたらしく、同じ本を2冊買ったことが二度ほどありました(もう一冊はOALD第10版)。「認知症」はもうそこまでやってきていますね〔笑〕。

 中学生でプロデビューした棋士は、藤井を含めて歴代5人しかいません。全員が将棋界に名を残す超一流の棋士ばかりですね。

加藤一二三  1954年  14歳7ヶ月
谷川浩司   1976年  14歳8ヶ月
羽生善治   1985年  15氏2ヶ月
渡辺 明   2000年  15歳11ヶ月
藤井聡太   2016年  14歳2ヶ月

 「天才は天才を知る」。これまた天才と言われた谷川浩司(たにがわこうじ)九段(史上最年少21歳2ヶ月で名人就位)が、レジェンドの巨大な才能の秘密に迫ります。谷川さんは、私の大好きな加藤一二三(かとうひふみ)九段から名人を奪取した若き天才でした。AIの登場以降、大きく変貌する将棋界。そこに突如現れた若き天才・藤井聡太。14歳2ヵ月・史上最年少のプロデビュー後(デビュー初戦、加藤一二三九段に勝って連勝街道は始まりました)、衝撃の29連勝から始まり、史上最年少でのタイトル獲得など、次々と記録を塗り替えていく彼のすごさとはいったい何だ?人間はどこまで強くなるのか?その謎を、史上最年少名人位獲得の記録を持つレジェンドが、自らの経験を交えながら、さまざまな角度から掘り下げて解き明かすとともに、多士済々の頭脳集団が切磋琢磨し、進化し続ける将棋の魅力を伝えている本です。私は、北高の将棋部顧問をやっていた時に、伊勢志摩賢島で行われた「全国総文祭将棋部門」で、谷川九段にお会いしました。

 彼の将棋には華があります。ファンだけでなくプロも驚くような、意表を突く派手な手を指したり、びっくりするような捨て駒をしたり。直観力を駆使した魅せる将棋をします。メディアは当初、藤井の強さの秘密を将棋ソフト(AI)と関連付けました。しかし谷川さんは、それに異議を挟みます。「AIを使うから強いは語弊がある。いまやAIは若手だけでなくベテランも活用するからだ。彼が強くなったのは、結論が出ない局面を考え続けた探求心の積み重ね。将棋が好きで強くなりたい、将棋の真理を見極めたい。純粋な気持ちがその源泉にある」と語ります。著者が語る藤井聡太論や将棋論には、読者の実生活や仕事に役立つ真理が数多く含まれており、将棋ファンならずともきっと参考になるはずです。

 「本を手がけ始めたのは、去年の7月ごろ。ちょうど藤井さんが棋聖、王位のタイトルを取った時期だった。一番注目していたのは、『あと1勝でタイトル』という状況で勝ちが見えた時に、『本人の気持ちに揺れが生じるか、それが指し手に表れるか』というところ。昨年の棋聖戦第4局は、見事な指し回しを見せて優勢を築いた。最後、(1分未満で指さなければならない)1分将棋になって安全勝ちを目指すのかと思ったが、最短距離の勝ち方を見せた。タイトルがかかった一番ということを感じさせない勝ちっぷりだった。技術だけでなく、精神面でも大きな成長があったんだな感じた」谷川先生

 「私は38年前に名人になった。最終局で勝ちが見えた時は気持ちを落ち着かせるのに苦労した。それでも、打った銀がゆがんだ。私の先輩も後輩も、ほとんどの棋士は初タイトルの時は平常心でいられなくなる。そこで勝ち急いだり、手が伸びなくなったりする。勝つにしても紆余曲折の末、ということがほとんど。藤井さんの例は本当に珍しい」と。

 子ども時代の藤井は、負けると将棋盤にしがみついて激しく泣きました。「デビューして1、2年の頃は、ミスをしてひざをたたくということもあったが、今はそういうことはない。他の棋士に比べたら、気持ちの揺れは少ない。あったとしても、すぐに気持ちを切り替えて現在の局面の最善手を追い求めていける」

 彼の姿勢を見ていると、『将棋が好きだ』『強くなりたい』『真理を究めたい』ということが、本人にとっては全てに近いのだと感じられます。相手というより、将棋と真剣に対峙しています。記録とかタイトルよりも、『今日の対局で将棋の真理に少し近づけるか?』ということを目指しているのです。そういうことを考えているから、初タイトル獲得の時も揺れが生じなかったのだと納得できるでしょう。彼にとっては、公式戦はタイトルがかかった対局も予選も全て同じ対局。研究会の対局も同じ。全てが同じ『将棋』なんです。

 大事な場面で、リスクを負いながら堂々と指せる理由について、谷川九段はこう語っています。「将棋が好きで、最善手や将棋の真理を求める気持ちが強いのでしょう。結果や記録にはそこまで重きを置いていないから、極端に言えばタイトル戦も研究将棋も同じ姿勢で臨める。そのように解釈しないと彼の戦い方に説明がつかない」要するに、対戦相手と戦っているのではなく、将棋盤と対峙しているのです

 渡辺明三冠(名人・王将・棋王)との棋聖戦を4連勝で防衛し、史上最年少の九段を達成しました。豊島将之二冠(竜王、叡王)との王位戦も4勝1敗で王位も防衛しました。圧巻のダブル防衛でした。それでも藤井からは、おごりや慢心などは一切感じられません。藤井は、「渡辺名人、豊島竜王という、本当にトップのお二人に番勝負で対戦するという機会を得ることができて。その中で自分に足りないところが新たに見つかったという部分もあるので、それをまた生かせていければな、というふうに思っています」  すでにこれだけ強いのに、まだまだ強くなるつもりなのです。つい最近の豊島二冠との叡王戦も2勝2敗で最終局を迎え勝利し、叡王を奪取して三冠に輝きました。史上最年少の記録付きです。竜王戦の挑戦者決定戦でも、永瀬拓矢王座を下して豊島竜王への挑戦権を獲得しました。強い相手と将棋ができることが純粋に嬉しいのでしょう。将棋の真理を追求することを実現するためには、相手が強ければ強いほどいい。

 谷川さんは、「藤井さんの強さは、最善手を求める探究心と集中力、詰め将棋で培った終盤力とひらめき、局面の急所を捉える力、何事にも動じない平常心と勝負術など、極めてアナログ的なもの。将棋ソフトを使い始めたのはデビューする直前であり、彼の本質的な強さはAIとは関係がないと言っていい」と断言します。♥♥♥

 藤井聡太さんが、初の対談本で自らの19年間を語る本『考えて、考えて、考える』(講談社)が今話題です。同社へ届く本の反響が男女比5:5だそうで、将棋本としては異例です。「死ぬまで努力」の稀代の名経営者・丹羽宇一郎(にわうちろう)さんとの対話(二人は同郷つながりの年の離れた友人です)から見えてきた異次元の天才の頭の中身。勝つ楽しさ、負ける悔しさを知って強くなった少年時代。悔しさを乗り越え、負けをとことん分析することで、さらに強くなっていった奨励会時代。将棋に出会った幼少期から、学校に行くことの意味を考えながら通った高校時代、趣味の話、コロナ禍での日常生活、将棋AIの使い方、ふだんの研究方法、対局時の心構え、棋士になって変わったこと、これからの目標・・・・・。14歳2ヵ月で最年少棋士となって以来、次々と最年少記録を塗り替え、驚異的な勝率で勝ち続ける19歳の強さの根源とは?より強くなるための学び方、心の整え方、そして探究を続けることの楽しさ。とことんやってみることで見える風景があるのです。藤井さんは、この本の中ではっきりと述べていました。


 一つ上のフェーズに進むと、今までとは違った読み筋が展開できるようになるんです。すると同じ局面でも、そこから先の盤上は全く違うものになります。そういう、これまでとは違う新しい景色を見るために強くなりたいと思っているんです。(pp.201-202)

 次第に勝ち負けにこだわらず「いい勝負をしたい」と、気持ちが変化していきました。これはAIだけがきっかけというわけでもないんですけど、結果、精神的にいい影響があったかなと思います。今の自分だととくに、結果を求めるよりも、さらに実力をつける段階だと思っています。タイトルを目指すよりは、実力をつけたい。実力がつけば、タイトルという結果は後からついてくると思うからです。こういうふうに思えるようになったのは、本当にここ数年のことなんですが……。(p.180)


 今春、卒業を目の前にして寸前で高校中退を決断し、棋士に専念しています。2016年、歴代単独トップの29連勝で注目を浴びてはや5年。史上最年少で三冠に輝き、年度内に最大五冠の可能性を秘めた前途洋々の19歳。どこまで強くなるのか、藤井聡太?!楽しみです。♥♥♥

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