エクスパンディングファイル

 辞典の編集の仕事というのは、本当に本当に手間のかかる大変な作業でしてね。英米で新しく発行された複数の辞典を細かく読み比べるだけでなく(その副産物が、岩崎研究会の綿密な『LEXICON』誌の辞書批評です)、日頃、英字新聞や英米の小説・雑誌や英語学研究書などを読む際に気づいたことを、特製の用紙に長年書き留めてファイルしておくんです。膨大な時間のかかる、ものすごく細かくて骨の折れる仕事です。その資料を収納・整理するために、私が東京・銀座の「伊東屋」で見つけて、もう何十年も愛用してきたのが、アメリカ製の自立式「エクスパンディングファイル」でした。書き留めた資料を、ABC順に配列されたポケットにポイと放り込んでおきます。マチがビローンと広がってくれて、数百枚の資料を収納することができるんです。こうして溜まった資料の1枚1枚が、その後の辞典の記述に生かされていきます。そのお気に入りのファイルが、長年の酷使で寿命が来たのでしょう、裂けてボロボロに壊れてしまいました。あー、処分するのは忍びないなあ。でも、代わりの品を探さないといけません。できれば同じものがよいのですが、もう今は売れていないようです。日本でも安くてカラフルなものが出ているには出ているんですが、長年使い込んで、愛着のあるこの「エクスパンディングファイル」がいい。

▲裂けて破れて壊れたファイル 名残惜しい!

 ネットを長時間検索していて、とうとう見つけました!!アメリカの輸入品です。1週間ほどかかって今日届きました。AからZまで印刷された21のポケットがあり、収容量に合わせてアコーディオン式にマチ幅が広がります。しっかりと自立します。古いファイルから資料のお引っ越しをしました。めでたし、めでたし!

 辞典の編纂のもう一つの武器が、「用例カード」です。私は大学生の頃から、英米の新聞・雑誌・小説を読む際に、気になった用法をカードに書き留めて、ファイルキャビネットに整理しています。カードは八幡特注のもので、地元の印刷屋さんに印刷してもらっていました。今なら「コーパス」を使えば、こんな手間をかけることもなく、必要な用例は簡単に手に入るのですが、まさにアナログな時代でした。でもこうして書き溜めた用例カードが、辞典の記述にどれほど役に立ったことでしょう。♥♥♥

▲この用例カードが辞書編集に威力を発揮!

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