「奥出雲おろち号」廃止!

  2018年に出版された西村京太郎『十津川警部 出雲伝説と木次線』(ジョイ・ノベルス)が、文庫本化されて、10月に実業之日本社から発売になりました。私は大好きな作家の作品は、単行本・新書で一度読んだものも、文庫化される度に、再び購入して読み直しています。最初に読んだ時には気づかなかった発見があるからです。それと、西村京太郎先生の場合には、評論家の山前 譲(やままえゆずる)さんが、巻末解説を書いておられることが多く、この人の文章が勉強になるので文庫本も全部買います。今回の『十津川警部 出雲伝説と木次線』は山陰が舞台で、出雲伝説についてのウンチクが満載で、出雲人としては面白く読んだ記憶があります。そこには木次線を走るヤマタノオロチ伝説に因んだ観光列車「奥出雲おろち号」が登場します。

 もう一つの取材対象である「奥出雲おろち号」は、すでにホームに入っていた。特急列車ではなくて、観光列車である。何となく、劇画か漫画に登場するような列車である。客席が二両、それを牽引するのはディーゼル機関車である。面白いのは、その機関車のヘッドマークだった。大きなヘッドマークに、「おろち」の絵が描かれている。そのおろちも、怖いおろちではなくて、漫画チックだから子どもが喜ぶだろう、と高木が思った通り、客車には家族連れが多かった。(p.10)

 5月14日からはそれにプラスして、出雲大社の例祭があり、観光客が増えることが予想された。木次線の観光の主力は、トロッコ列車で有名な「奥出雲おろち号」だが、この「奥出雲おろち号」はディーゼル機関車に二両の客車が連結されて走るもので、その一両はトロッコ列車である。人気があるのだが座席が少なく、その上、全席指定で観光シーズンには切符を買うのが大変である。(p.94-95)

 残念なことに、JR西日本が、6月3日、木次(きすき)線(備後落合~宍道)を走るこの観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」の2023年度での運行終了を発表しました。20年超の歴史をもつ「奥出雲おろち号」は、広島と島根を結ぶ木次線の目玉で、同線を経営的にも支えてきた存在でした。地元に愛されながら、地域の活性化に一定の役割を果たして来ました。

   「奥出雲おろち号」木次線沿線自治体からの要請を受け、1998年4月に運行を開始しました。トロッコ車両と窓付きの一般車両の計2両(トロッコ車両+雨天時の控え車両)をディーゼル機関車が引っ張り、木製のベンチスタイルの座席を窓方向に配置し、開放感のある車内からは、奥出雲の車窓風景を風を受けながら堪能できることはもちろん、トンネル内では天井のおろちのイルミネーションを楽しむことができます。山間の三段スイッチバックも目玉の一つです。土日祝や行楽シーズンを中心に運行され、利用人数は2008年のピーク時には約2万人、年間約1万4,000人、コロナ禍の昨年は約6,000人にとどまっています。このように木次線の看板列車として活躍してきたが、車両の老朽化が廃止の主因です。車両は1998年4がつの運行開始から使用してきており、1970~78年の製造で老朽化が進み、部品の製造中止で調達に苦慮しています。6年ごとの全般検査(車検)を受けて成美を続けても、安全性を保つことは困難と判断して、2023年で節目となるトロッコ列車の車検更新をせずに、運行の終了を決断しました。

   「奥出雲おろち号」が走る木次線は、JR西日本屈指のローカル線として知られています。2019年度の平均通過人員(1日1キロあたりの利用者数)はわずかに190人。旅客運賃収入はJR西日本管内の51路線のうち2番目に少ないんです。

 10月13日には、運行継続の可能性などを探る沿線自治体やJR西日本米子支社による3回目の検討会が松江市で開かれました。今春廃止となった「SL北びわこ号」の車両の転用については、車両の老朽化から困難との回答がありました。川崎重工が開発したディーゼル機関車の導入も、ホームや地上設備などで様々な問題があるとの見解でした。経営的な問題や技術的な課題で木次線への導入は難しいようです。

   時刻表からも木次線の苦しい現状がわかります。「奥出雲おろち号」を除くと、全線走破の定期列車は1日上下各2本しかありません。かつては中国地方と山陰地方を結ぶ陰陽連絡線の役割を担っていましたが、周辺道路の整備により、現在ではローカル輸送に徹しています。またJR西日本自体がコロナ禍で苦しい経営を強いられています。2021年5月19日に発表された「ご利用にあわせた列車ダイヤの見直し」では、木次線は対象線区から外れたものの、予断は許しません。現在のところ木次線の存廃問題は表に出てはいません。しかし「奥出雲おろち号」の代替は検討されていないことから、木次線は観光の目玉を失うことになります。今後、最低限の地域輸送に徹するか、それとも違う形で観光客に注目される路線になるのか。どちらにせよ、難しい道のりが続くことに変わりはないでしょう。私は今年5月に、このトロッコ列車に乗ってきました。その時の乗車レポートはコチラです。♥♥♥

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