鬼束ちひろ逮捕

 「月光」を歌っていた頃の鬼束ちひろさんは、本当に輝いていましたね。2000年2月に「シャイン」でデビューした鬼束さんは、仲間由紀恵&阿部 寛出演のTVドラマ『TRICK』の主題歌に、「月光」が起用されたことによって、その名前が知られるようになりました。「月光」を歌っていた頃の鬼束さんからは、彼女の魂で歌い上げるようなパフォーマンスに鳥肌を立てる人も多かったものです。歌い方や歌声にも特徴があったことから(裸足だった!)インパクトがあり、歌を聞いたり、見る人を釘付けにするようなシンガー・ソングライターでしたね。初アルバム『インソムニア』は約150万枚の大ヒットとなりました。私も大好きで応援したものでした。昔はいい歌を歌っていたんです。それが…。

 2002年、『This Armor』というアルバムをリリースして、二度目の全国ツアーを行っているときのことだった。いつもの緊張、いつもの不安。その日も緊張のあまりどうにかなりそうな状態で、ステージに向かった。オープニングの音楽が鳴る。緊張感は最高潮に達する。ゆっくりと幕が開いて、深呼吸をしながら顔を上げたそのとき、目の前に広がる光景に思わず息を飲んだ。うわっ、悪魔だ!あろうことか、会場を埋め尽くしたお客さん全員の顔が、悪魔に見えてしまったのだ。わざわざ私の歌を聴きに来てくれた人たちには、本当に申し訳ないと思うんだけど。何々?いったい何が起こったの?まるでホラー映画の中に放り込まれたような気分だ。右も左も、手前もずっと後ろの方も悪魔の顔、顔、顔…。私は悪魔に囲まれて、ぽつんとステージの中央に立っていた。歌なんか歌っている場合じゃない。今すぐここから逃げ出さないと!だけど金縛りにかかったように、その場を動くことができない。私んおなかの何かが、逃げ出したい気持ちを必死に抑え込もうとしていた。じいっとコチラを見つめている大勢の悪魔を前に、生け贄にされた少女のようにおっかなびっくり歌を歌う。足がすくんで、マイクを持つ手がガタガタと小刻みに震えている。襲われる…、早く逃げなければ。だけど、こんなバカなことがあるはずない。きっと悪い夢に決まっている。そう言い聞かせて、声を絞り出す。でもやっぱり本当に襲われるかも…。思考は振り出しに戻ってしまう。歌に集中することなんて、とてもじゃないけどできやしない。早く終われと念じながら、義務的に歌い続けるしかなかった。

 結局悪魔は襲いかかってこなかった。ライブが終わって、生け贄は無事解放されたのだ。奇跡の生還!不思議なことに、周りの人たちは「良かったね」とか「おつかれさま」とか、いつも通りのことしか言わなかった。悪魔の「あ」の字も出てこない。あれはやっぱり、幻だったのだろうか。起きながら、悪魔を見てしまったってこと?普段と変わらない周りの人たちの様子を見ていると、疲弊し切っていた私は何も言い出すことができなかった。こんなことは、もう二度と起こりませんように。そう思って、自分の胸にそっとしまっておいた。   ―鬼束ちひろ『月の破片』(幻冬舎、2011年)より引用

 お客さんの顔が突如として悪魔に見え、マイクを持つ手が震え出すというような状況を何度も味わった鬼束さんは、医師から「パニック障害」と診断されました。状況は改善するどころか、周りのスタッフや友達さえも怖く感じるようになってどんどん悪化していきました。移動中の飛行機の中でパニックを起こし「今すぐ降ろして!」と泣き叫んだこともありました。2003年には声帯結節を患い活動を休止。その後、事務所をいくつか移籍しながら、2007年に活動再開しますが、休業を挟みつつ活動を続けていました。ところが、2010年8月18日、鬼束さんは自宅マンションで同棲していた男性に全治1ヶ月の暴行被害を受けます。芸能人がDV被害によって警察沙汰になったことはこれまでになかったことでした。被害状況は、流血状態にあったと言われているほどです。そのことをきっかけに自傷行為に走っていたという噂も。彼氏からのDVがきっかけで、心を病み始めたのでしょう。暴行事件の影響から精神が再び不安定な状況に陥り、体調不良での音楽活動休止や復活を繰り返していたようです。以前にも大量の薬を服用して自殺未遂をした経験がある、ということが著書にも書いてあります。その後も、「和田アキ子殺してえ」「伸介殺してえ」とネットでつぶやくなど、奇行で大騒ぎに発展したこともありましたね。

 鬼束さんは、2011年4月20日に自伝エッセイ『月の破片』(幻冬舎)を発売しています(彼女が発表したのはこの1冊だけで、在庫薄でプレミアがついています)。これを読むと、清楚なイメージの「鬼束ちひろ」を裏切るような強烈なエピソードばかりが出てきます。鬼束さん自身、清楚なイメージが大嫌いだったようです。本当は派手好きで気が狂ったかと思われるようなコーディネートが好きなのだということです。どんどん派手なメイクに変わっていったのも、これが本来の姿だったんですね。世間の認識する鬼束ちひろと、本来の自分で苦悩した鬼束ちひろが辿り着いた過程がしっかりと書き込まれていました。「自他共に認める暴れん坊」「自分のことを暴れん坊冬将軍って呼んでいる」「私に嫌な思いをさせた相手のパソコンを思い切り蹴ったら、バラバラに壊れていた」「彼氏とケンカした時はラーメンをぶっかけた」「父とケンカして傍らにあった「フマキラーを、父に向かって無言でシューッと吹きかけた」 彼女の本当の姿を理解するには、絶対の1冊です。私もここら辺から、どんどん距離を置くようになりました。

 その鬼束ちひろ(41歳)さんが、先日、東京 渋谷区の路上で救急車を蹴ったなどとして器物損壊の疑いで逮捕されました。 警視庁によりますと、11月28日午後4時半ごろ、東京 渋谷区恵比寿西の路上で救急車を蹴ってドアを破損させたとして、器物損壊の疑いが持たれています。救急隊から通報を受けた警察官が駆けつけて事情を聴いたところ、蹴ったことを認めたため、その場で逮捕しました。調べに対して「パチンコ店にいたところ、友人の体調が悪くなりけいれんを起こし倒れたため救急車を呼んだが、通行人に嫌みを言われてパニックになった」などと供述しました。救急車を蹴ったとして器物損壊の疑いで警視庁に現行犯逮捕され、その後、処分保留で釈放され、公式サイトなどで事件後初めてとなるコメントを発表しました。鬼束さんは自筆で「この度は、私の不適切な行動により、多くの皆様にご迷惑をおかけしました事を、心よりおわび申し上げます。深く反省しております 鬼束ちひろ」とコメントしました。また、事務所コメントとして、「既に報道されております通り、弊社所属の鬼束ちひろは、2021年11月28日に救急車を蹴り、器物損壊により逮捕され、その後、同月30日に釈放されました。まずは救急車を蹴るという行為によって業務への支障と多大なるご迷惑をおかけいたしました救急隊員の皆様、東京消防庁の皆様に対しまして、深くお詫び申し上げます。また、本件によって、多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしました関係者の皆様、そして、日頃より鬼束ちひろを応援していただいております皆様に対しましても、深くお詫び申し上げます」と謝罪。「鬼束ちひろの今回の行為につきましては、弁明の余地もない行為であり、本人自身も深く反省しているところでございます。今後二度とこのようなことが起きないように、鬼束ちひろ自身、今回の件に関し、更なる反省と自覚を持つよう、弊社といたしましてもそのための対応をしていく所存です」としました。

 「昔から何かしゃくに障ると、その辺にあるものをやたらめったら蹴っていました。蹴る対象のものは何でもよくて、それこそ“けり癖”とでも言っていいようなもの。だから、今回の報道を聞いたときには、キレたときに、たまたま近くにあったのが救急車だったのだろうなと思いました」という「鬼束キック」の関係者の証言もあります。♥♥♥

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