戸田奈津子さん新著

 かつて、映画字幕翻訳家の戸田奈津子(とだなつこ)さんが、研究社からアメリカの人気マンガ『ガーフィールド』の翻訳をされたことがあり、私はその推薦文を書かせていただいたご縁があります(写真下)。今となっては懐かしい思い出です(私も若い!)。以来、戸田さんの熱狂的ファンになりました。⇒コチラをご覧ください 先日見てきた最新ジェームズ・ボンド映画『007ノータイムトゥダイ』も、戸田さんの字幕スーパーでしたね。

 その戸田さんの最新刊が『枯れてこそ美しく』(集英社、2021年11月)です。戸田さんが対談相手に選んだのは、米国在住の村瀬実恵子(むらせみえこ)さん。85歳の戸田さんより一回り上の御年97歳。コロンビア大名誉教授や、世界的収集家のメアリー・バーク夫人のアドバイザー、メトロポリタン美術館の特別顧問などを務め、日本美術の素晴らしさを世界に広めた方です。しかし、日本ではほとんど知られていませんでした。オンラインでの2人の対談では、海外暮らしが長い村瀬さんが語る“言葉”の美しさに驚いたと言います。「しぐさやものの考え方も、日本人としてのアイデンティティーを失っておらず、感銘を受けました。おしゃれで、いつもすてきな靴を履いている」と。

 戸田さんは海外の映画の魅力を日本に、村瀬さんは日本の美術の魅力を海外で伝える仕事に長年携わってきました。「人の心を打つ、人が感動する仕事に携わってきたことは共通していて、私も村瀬先生も仕事一筋。一人で生きてきた女性として、とても共感したんです」。また、「お互い運がよかった」とも感じました。「村瀬先生は日本の美術がそれほど評価されていない時期に活動された。私も字幕翻訳者になるまで20年かかったけれど、好きなことに生きて、一生続いた。長く続く好きなものに出会えたことはお互い幸せだった」他にも対談では「美」や「おしゃれ」「キャリア」「人との付き合い」「楽しみ」など多彩なテーマで語り合い、当然、「終活」も。「80、90歳なんてとんでもないおばあさんと思うかもしれないけど、自然体で全然飾ってませんから、年齢も意識しない。こういう生き方もあるって、思っていただけたらうれしい」。先駆者たちの流儀は、かっこいいものでした。その二人がニューヨークで初めて出会い、戸田さんが村瀬さんに「深い感銘を受けた」ことによって生まれたのが、このたび刊行されたこの対談集『枯れてこそ美しく』です。好きなことを貫いてきたお二人の軽やかで深いスペシャルトークには、人生を最後まで楽しく、美しく生きるヒントがびっしりと詰まっています。

 戸田さんのアドバイスです。

 でも仕事に限らず、家庭生活を全うするのだって、生涯現役と言えるんじゃないでしょうか。だから何だっていいと思うんだけれど、自分のやりたいことを見つけて、途中はあちこち目移りしてもいいと思うんですよ、でもどこかで「これ」と決めたら諦めずにそれをやってみるのがいいでしょうね。そうすれば自分なりに納得のいく、満足のいく人生になるのではないでしょうか。そうやって好きを貫いて生きてきた私たちの話を、読者の方に楽しんでいただけたら嬉しいです。

 若い人たちには、次のような言葉が印象に残りました。戸田さんならではの金言です。♥♥♥

 夢が叶うか、叶わないか?いわゆる確率的には五分五分だから、大きなリスクですよ。それをわかってて、やっぱり覚悟していたのですから我ながら思い込みが強かったと思います。つまり字幕翻訳者になれないこともあると最初からわかっていて、どんな結果も受け入れる心構えがありました。覚悟を決めて、絶対にブレなかったから、情熱が長続きしたんだと思います。私は若い子たちから人生で重要なことは何かと聞かれたときには「自分がやりたいことをきっちり見極めて、自分で選択しなさい」ということをいつも言います。人の意見を聞いてもいいけど、選択するのは自分自身。最後の決断は自分で下すべきだと。人の言うなりになったり、右へ倣えしては絶対にダメよときつく言っています。

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