アール・スタンリー・ガードナー

 推理小説好きの人ならアール・スタンリー・ガードナー(Erle Stanley Gardner、1889~1970)の名前をご存じでしょう。アメリカ合衆国マサチューセッツ州モールデン (Malden) 生まれの推理作家、弁護士で、法廷弁護士「ペリー・メイスン」シリーズの作者として知られます。弁護士業務のかたわら執筆活動を開始。自身の知識や経験を生かした法廷ミステリーを得意としました。ペリー・メイソン」シリーズの長編82冊の他に、小説以外のものも含め、彼の作品は約900編にも及びます。私は、大学生の頃に、休みの日になると、高校時代の英語の恩師・三島房雄先生(みしまふさお)のご自宅にお邪魔しては、本をお借りすることが多かったんですが、ガードナーも先生から紹介していただき、ペーパーバックをのぼせて読んだものです。大好きなエド・マクベイン(Ed McBain)も先生から教えてもらいました(最近は学生が先生のお家にお邪魔するということがほとんどありませんね。これについては、後日話題にします)。 

 ペリー・メイスンは、刑事事件専門の弁護士で、依頼人である被告人が無罪という確信がなければ、事件の弁護を一切引き受けないことを信条としていました。毎回引き受けた事件を克明に調査しては、依頼人の無実を実証するのが、このシリーズのお決まりとなっています。女性秘書のデラ・ストリートと探偵のポール・ドレイクの協力で、法廷で検察官と対峙していく過程がこの物語の山場となりました。小説は1933年に初登場した『ビロードの爪』から、作者死後の1976年まで、全部で82編が出版されています。名優・レイモンド・バーの主演によるテレビシリーズ『新・弁護士ペリー・メイスン』が、日本でもNHKで放送されましたから見た方も多いと思います。

 この「ペリー・メイソン」シリーズの第1作にあたる『ビロードの爪』を書き上げたガードナーは、これと思う出版社に「これを出版しませんか」と送りつけます。返答は「ノー」でした。断られたガードナーは、また別の出版社に送っては、「ノー」。「ノー」が連続した挙げ句、ついに10社目の小さな出版社から「イエス」という返事が来ました。この名も無い出版社は、後の世界的超ベストセラー・ロングセラー作家を掘り当てたわけですね。大変な売れ行きで爆発的なヒット作となりました。アメリカでは最初の本が売れると、第2作目は印税率を新たに上乗せするという慣行がありました。その出版社の社長は、第2作の『幸運の脚』の原稿が届いたときに、ガードナーに白紙の契約書を示して、「ガードナーさん、あなたが欲しい印税率を書いて下さい」と申し出ました。ガードナーは黙ってその契約書に、「10%」と書き込みました。「どこでも断られた本を出版してくれたあなたのために、私はこのシリーズを最後まで同じ印税率にしようと思います」と、誠意を示したのです。「恩義を忘れない」ということで、私の心に残っている逸話です。今ではちょっと考えられないことです。いい話でしょ?♥♥♥

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