竹岡先生の「共通テストセミナー」

 数研出版主催の教員向け「共通テスト」オンラインセミナー(500円)を拝見しました(~3月31日まで公開、申し込みは終了)。講師は尊敬する竹岡広信(たけおかひろのぶ)先生です。共通テスト終了後すぐに、学研プライムゼミ」竹岡先生の速報全問解説も見ていました(これは今でも見ることができます)。非常に勉強になりました。予備校等で「共通テスト」の数多くの動画解説が公開されていますが、単なる問題の解説に終始していました。竹岡先生の解説はレベルが違います。もう一歩踏み込んだ分析となっていました。今回の私の感想をまとめてみました。

(1)この問題がなぜ難しいのか?まで踏み込んだ分かりやすい解説

モニターの正答率に基づいての客観的な難易度を提示して、なぜそこで生徒がつまずくのか?その原因にまで踏み込んだ分析が見られます。CEFR表示にも触れながらの客観的な分析となっています。ダウンロードできる一級品の資料を熟読するだけでも、先生方の参考になりますよ。リスニングではリエゾンの難しさが指摘されました。

(2)センター試験時代と何が変わってきたのか?

長さ、問題の狙い、問題作成部会の配慮、など興味深い指摘がたくさんありました。「授業映え」のするテクニック的なものはどんどん削られている、というのは最近の実感です。そんな中「消去法」だけは以前として有効であることが強調されました。

(3)最近の生徒たちの傾向を分析

人の話を聞かない、自由英作文を書かせるとopinionだらけの英文に、注意欠損、常識の不足、私も日頃の指導で痛感していることばかりで、「そう、そう」とうなずきながら聞いていました。

(4)問題自体への切り込み

「問題作成部会」が苦労して作っておられるその一端を垣間見る指摘が随所に見られました。じっくり問題と向き合ってみて初めてできる発言です。私も「共通テスト」は非常によくできた問題だと感じることが多いのですが、「問題作成方針」も読まずに安直な批判をされる現場・予備校の先生が多くおられるのは残念なことです。公表されている「大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書」では、(1)「高等学校教科担当教員の意見・評価」(2)「教育研究団体の意見・評価」 (3)「問題作成部会の見解」の三つの立場から、「共通テスト」の問題について、分析・評価を与えておられます。これを読むと問題作成の難しさや苦労の内幕を感じることができます。今年のリスニング問題のイラストは思わず吹き出してしまうようなものでしたが、昨年のGreen Forest, Silent Hill, Mountain Pearなど、センター時代から脈々と続いている「遊び」「ユーモア」の部分にも言及がありました。

(5)英語そのものへの切り込み

Japanese traditional musicの語順、「飼う」の意味のkeepとhave、「本を借り出す」のcheck books outという表現等。日頃の鋭い語感での指摘でした。問題中に見られる単語に関して、その語源に触れておられましたが、「語源は音である」という言葉は重要だと感じました。

(6)今後の指導への提言

読んでいる量が力になるのが「共通テスト」で、精読・多読・多聴を心がけると伸びる。国語力と英語力は比例しているから、新聞や読書に力を入れるべきで、いくら英語の運用力が高くても、「内容」がなければ意味が無い。雑な読みでは点は取れない。全体を捉える訓練の必要性。といった指摘が見られました。セミナーの中でも触れておられましたが、先生の「チャートネットワーク」の論考「「センター英語」から「英語」へ」を読むと、今日の提言の意味がさらによく分かります。

 英語そのものの理解が半端でないことは、先生の作られた痛快単語集『LEAP』『LEAP Basic』(数研出版)を一読すればすぐ分かります。竹岡先生「面倒くさい単語集」と言われますが、私に言わせれば「生徒のための学問的な単語集」です。松江北高では、今年度の1年生からベーシック版を使っていますが、生徒達にちらちらと聞いてみると、「読んでいて面白い」「あそこに書いてあることに笑った」という声が聞こえてきました。ちゃんと伝わっています。私は竹岡先生の教材を読ませていただく度に、「半端でない学問的裏付け」「生徒に対する底知れない愛情」の二つをいつも感じています。今回の「オンラインセミナー」でも私が感じたのは、その二つでした。♥♥♥

○竹岡広信「「センター英語」から「英語」へ」 『チャートネットワーク』70号(2013年、数研出版)  ⇒コチラで読むことができます  

★ここに書かれていることと、最近のセンター試験、共通テストの問題を照らし合わせてみると、なるほどと思われることでしょう。

 

【追記】 収録日の関係で無理だったのかもしれませんが、1月29日に行われた「追試」でも、本試験と同様の指摘をすることができました。私は2月26日(土)に、「2023大学入学共通テストに求められるチカラとは(英語)~2022大学入学共通テストの問題分析と指導事例~」(オンライン研究会、ラーンズ主催)を、ZOOMによるオンライン配信(無料、申し込み中)で実施します。

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